任意整理とは、債権者との間で債務の減額や利息のカット、利息の再計算によっても残ってしまう債務の分割返済を協議する債務整理手続きの一種をいいます。
自己破産や個人再生、特定調停など他の債務整理手続きと異なり、裁判所に申立する必要がないことから、簡易迅速で柔軟な解決が望めることから、債務整理の中で最も多くの多重債務者が利用している手続として知られています。
ところで、貸金業者やクレジット会社が顧客に融資を行う場合には、契約によってその貸付の条件として保証人を付けることを求めてくる場合があります。
保証人が付けられる契約では、融資を受ける債務者が返済を延滞した場合であっても保証人に返済する義務が生じるため、債権者である貸金業者やクレジット会社は債務者の代わりに保証人に対して返済金を請求することができるからです。
この点、債務者が任意整理を行う場合には、弁護士や司法書士が代理人となって債権者と交渉するのが一般的ですが、弁護士や司法書士が債権者に対して任意整理の交渉を求めることは、すなわち、契約通りの返済を一旦停止して当初の契約を反故にし、任意整理の手続きで新たな合意(和解)の形成を要請することに他なりません。
そのため、債権者の側にしてみれば、債務者が当初の契約に違反して借金の返済を延滞していると判断せざるを得ませんから、仮に債権者が債務者の求めに同意して任意整理の交渉に応じる場合であっても、「債務者本人が返済を停止した」ということを理由として、保証人に対して残存債務の一括請求を行うことになります。
このように、保証人が付いている債務について任意整理を行う場合には、その保証人に対して一括請求がなされるなど保証人に迷惑をかけることは避けられないのが現実です。
では、借金のうち保証人が付いている債務を負担している債務者が任意整理をする場合において、どのような点に注意をすれば保証人に対して迷惑を掛けず、または保証人に対する迷惑を最小限に抑えることができるのでしょうか?
多重債務に悩む債務者は、仮にその債務の一部に保証人が付いている債務があり、その保証人に迷惑が掛かるとしても、任意整理をしなければ生活再建が図れない場合もあると考えられるため問題となります。
任意整理で保証人に迷惑を掛けないようにするには?
前述したように、任意整理の手続きを行う場合において、その債務の中に保証人が付いている債務が含まれている場合には、任意整理の開始によって債権者からその債務の保証人に対して残債務の一括請求がなされることになるのが原則的な取り扱いです。
そのため、保証人になってくれた人に迷惑をかけないようにし、またはかけてしまう迷惑を最小限に抑えるための何らかの手当が必要となりますが、この場合に考えられる手段としては次の2つの方法が考えられます。
(1)任意整理の対象から保証人が付いている債務を除外する
任意整理の手続きで保証人に迷惑を掛けたくない場合には、その保証人が付いている債務を任意整理の対象から外すのが一番安全で確実です。
なぜなら、任意整理の手続きは、自己破産や個人再生などの手続きと異なり、債権者の一部を対象として、または債権者の一部を除外して手続きをすることも可能ですから、債務者が負担している借金のうち、保証人が付いている借金だけを任意整理の対象から除外して、他の借金だけを任意整理で処理することも全く問題ないからです。
保証人が付いている債務を任意整理の手続きから除外し、任意整理の手続き中もその保証人が付いている債務だけは契約通りの返済を継続しておけば、保証人に一括請求がなされることもないため、保証人には一切迷惑は掛かりません。
ですから、任意整理の手続きを行う際にどうしても債務者に迷惑を掛けたくない場合には、その保証人が付いている債務を任意整理の手続きから除外するのが一番手っ取り早いですし、それ以外に方法はありません。
(2)保証人にあらかじめ事情を話し理解を求めておく
前述したように、任意整理の手続きを行う際に保証人に迷惑を掛けたくない場合には、その保証人が付いている債務を任意整理の手続きから除外して、他の債務だけを任意整理の交渉のテーブルに乗せて交渉を行うしかありませんが、保証人が付いている債務が他の債務に比較して債務額が大きかったり、借金のほとんどに保証人が付いているような場合には、どうしても保証人が付いている債務を任意整理で処理しなければならない場面もあるかもしれません。
そのような場合には、保証人になってくれている人にあらかじめ「これから任意整理の手続きを行うこと」や「任意整理の手続きが開始されれば保証人に対して債権者から残債務の全額が一括請求されてしまうこと」などを説明し、事前に十分な理解を求めておくしかないでしょう。
もちろん、保証人にしてみれば、親切心で保証人になってあげたにもかかわらず、債務者が無理な借金を重ねた結果、迷惑をこうむってしまうわけですから、事前に任意整理の説明をしたとしても納得は得られないかもしれません。
しかし、このようにしておかないと、任意整理の開始によって、ある日突然保証人に対して一括請求がなされてしまい、場合によっては突然の請求で資金の手当てができない保証人が自己破産に追い込まれてしまう可能性も否定できませんから、事前に連絡して保証人サイドでも返済資金を準備し債権者からの請求に対応できるよう配慮しておくことは必要です。
ですから、どうしても保証人が付いている債務を任意整理の手続きで処理する必要な場合には、保証人からブチ切れされることを覚悟の上で保証人に事情を説明し、理解してもらう努力は必要になるといえるでしょう。