任意整理の具体的な流れとは?手続の具体的な順序を解説

任意整理とは、債権者との間で債務の減額や利息のカット、分割和解の協議を行う債務整理手続きの一種です。

債権者との間の協議というと難しく聞こえるかもしれませんが、任意整理は弁護士や司法書士に依頼して代理人となって交渉してもらうのが一般的ですので、インターネットなどで探した弁護士や司法書士事務所に相談し手数料(着手金)を支払えば特段わずらわしいこともなく手続きが終了してしまうのが通常です。

とはいっても、一回の人生で何回も任意整理をしてしまう人はあまりいないはずですので、任意整理を検討しているほとんどの人は任意整理の手続きが具体的にどのような手順で進め荒れていくのか、不安な面もあるのではないかと思います。

そこでこのページでは、任意整理の手続きが具体的にどのような手順で進められていくのか、その手順を順を追って説明していくことにいたしましょう。

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任意整理の手続きの流れ

(1)弁護士や司法書士事務所での相談

任意整理で借金を整理したい場合は、まず最初に弁護士事務所か司法書士事務所に相談に行かなければなりません。

弁護士や司法書士事務所では担当の弁護士または司法書士と担当の事務員から、「全ての借入先の債権者名」「それぞれの債権者からの借入額(請求額)」「訴訟や支払い督促がなされていないか」「任意整理から除外したい債権者はあるか(またその理由)」「保証人が付いている借金の有無」「闇金からの借り入れの有無」「毎月の収入」「毎月の家計全体の収入」「毎月の家計支出」などを聞かれるのが通常です。

もちろん、弁護士や司法書士から聞かれることには全て正直に答えなければなりません。仮ここでうそを言ってしまうと後で債権者との交渉がうまくいかなかったり、無理な返済計画を組むことになって後で自分が困ることになるので注意しましょう。

なお、弁護士や司法書士が依頼を受ける場合には本人確認が義務付けられていますので身分証の提示は必ず求められることになります。

(2)債権者に受任通知が発送

弁護士事務所や司法書士事務所での契約が終わったら、弁護士・司法書士事務所から任意整理を依頼した各債権者に宛てて「受任通知」が発送されます。

「受任通知」とは、任意整理の依頼を受けた(受任した)弁護士または司法書士が、示談交渉の相手方となる各債権者に対して「〇〇さんがお宅の金融機関から借りているお金を払えなくなったので私が代理人となってこれから任意整理(債務整理)の手続きを行いますよ」と、代理人に就任して任意整理の手続きを行うことを連絡するための通知書のことを言います。

この受任通知が各債権者に到着すると、消費者金融などの貸金業者やクレジット会社はそれ以降一切債務者本人に請求することができなくなりますので、この受任通知の到着をもって本人への請求や督促は一旦停止されることになります。

もっとも、弁護士や司法書士事務所は多数の依頼を並行して受任しているのが通常ですし、債権者の方でも相当多くの債務者について弁護士や司法書士事務所から受任通知が届いているでしょうから、弁護士や司法書士事務所に任意整理を依頼して受任通知が債権者に到着するまでは早くても2~3日から1週間程度のタイムラグが生じてしまいますので、その間に入れ違いで債権者から請求が来ることは仕方がありません。

その場合には、債権者に弁護士や司法書士事務所に既に任意整理を依頼済みであることを伝えるか、請求や督促の電話を無視するかして、任意整理を依頼した弁護士や司法書士に連絡し債権者に一本電話を入れてもらうように頼むなどすれば問題ないでしょう。

(3)取引履歴の開示

受任通知が債権者に送付されると、債権者側で債務者の取引の照会が行われます。

受任通知には依頼人である債務者の「氏名」と「住所」と「生年月日」が記載されていますので、債権者の側ではその3つの情報を元に債権者に保存されている取引から照会を掛けて、該当する契約の取引を探し出す作業が行われます。

※なお、債権者との契約当初から引っ越しをしたりして住所に変更があった場合には債権者の方から「同姓同名で生年月日が同じ人がいるのですが住所だけが異なっているので引越等していませんか?」という連絡が弁護士・司法書士事務所に行くことになりますので、その場合には過去の住所を債権者に申告する必要があります。

そのため、仮に債権者と最初に契約した際と住所が異なっている場合には、弁護士・司法書士事務所で任意整理を依頼する際に以前の住所についても申告しておく方が良いでしょう。

債権者側で照会を行い該当の契約が見つかったら、債権者に保管されているその債務者に関する取引がすべて「取引履歴」に印字されて出力され、その取引履歴が弁護士・司法書士事務所に送付されることになります。

この作業を「取引履歴の開示」といいますが、債権者とその債務者との間の「貸付額」と「借入額」と「返済額」「その年月日」が一覧にして表示された「取引履歴」が開示されることで後述する引き直し計算が可能となります。

なお、この取引履歴が開示されるまで期間は債権者によって異なりますが、大手の金融機関では2週間から2か月程度で発行されるのが一般的ですが、小規模の金融機関や人件費にあまりお金を掛けられない金融機関では取引履歴が開示されるまで半年以上かかる場合も有ります。

(4)引き直し計算(利息の再計算)

取引履歴が開示されたら、その開示された取引履歴をもとに、弁護士や司法書士事務所において利息の再計算(引き直し計算)が行われます。

「引き直し計算」とは債権者が開示した取引履歴をもとに利息を再計算する作業で、昔はほとんどの消費者金融等が法律に違反して本来取るべきではない違法な利息を取っていた時期があって社会問題化したことがあるため、弁護士や司法書士事務所において全ての取引(借入と返済)をチャックして正確な利息で計算されているか再計算をする必要があるのです。

この引き直し計算の作業自体は契約1個あたり1時間もかからずに終わってしまうのが通常ですが、弁護士や司法書士事務所では同時に複数の任意整理を処理しているため取引履歴の到着順に計算が行われることになり、1週間程度の時間を要するのが一般的です。

(5)打ち合わせ

全ての債権者からの取引履歴が開示され、全ての債権者の引き直し計算が終了したら、正確な債務額が割り出されます

こうして任意整理の対象となる債権者の全ての債務額が算出されたら、その全ての債権者に対する債務額を3年間の36回払いの分割で支払っていくことができるかを検討する作業に入ります。

具体的には、依頼人である債務者の過去3か月分程度の家計を調査し、毎月の収入から毎月の生活費を差し引いた毎月の余剰金をまず計算し、そこから余裕をもって返済できる返済原資(毎月の余剰金の3分の1から半分程度)を確定させて、その返済原資で全ての債権者に対する債務を36回の分割払いで完済できるか、という点を弁護士・司法書士と依頼人(債務者)の間で検討することになります。

この打ち合わせ作業は、任意整理を依頼している弁護士や司法書士事務所で行われるのが通常ですが、事務所に出向くのが難しい場合(例えば仕事や遠方に居住しているなど)には、電話やメールで済まされることもあります。

※この打ち合わせ自体は1~2時間で終わるのが一般的ですが、毎月の家計簿や家計表を正確に作成していなかったり、家計の無駄を省くなど家計の見直しを十分にやっていなかった場合には弁護士や司法書士の方でも正確な返済原資を確定することができません。

そのような場合には、いったん自宅に帰って領収書や預金通帳の引き落とし履歴などをチェックし直して、家計簿や家計表を作成し直したりして家計の正確な状況を把握しなければなりませんから、場合によっては何回も打ち合わせを繰り返したり、打ち合わせ自体を1か月程度先にずらして家計の見直しをやり直すなどが必要な場合も有ります。

なお、もともと家計の状況が厳しい場合には、弁護士や司法書士の事務所で最初に相談する際に家計簿や家計表を作成するよう指示されたり、無駄な家計出費を抑えるよう指導を受けると思いますので、そのような家計のリストラ作業は取引履歴が開示され引き直し計算が終わるまでの3か月ないし半年程度の期間にきちんと終わらせておく必要があります。

なお、この返済原資確定作業についてはこちらのページでも詳しく解説しています。

▶ 任意整理後の月々の返済額はどのように決められるのか?

(6)債権者との交渉、分割和解案の提示

弁護士や司法書士と依頼人(債務者)の間で返済原資と分割弁済額を決める打ち合わせが終わったら、その打ち合わせで検討された毎月の返済額を元に、債権者との和解交渉に入ります。

この債権者との和解協議では、弁護士や司法書士から債務の減額と利息のカットも申入れられるのが通常ですが、債権者側は利息や遅延損害金のカットには応じるものの、債務の元金のカットには応じないのが一般的ですので、任意整理では債務額自体の圧縮はあまり期待しない方が良いでしょう。

▶ 任意整理すると経過利息や将来利息はどうなる?

なお、前述しましたが、任意整理の和解では3年間の36回払いの分割で全ての債務を完済させる弁済計画が結ばれるのが通常ですので、家計の見直しを行っても36回で余裕をもって返済できる返済原資が確保できないようであれば、任意整理をいったん取りやめて自己破産などの手続きを検討する方向で弁護士や司法書士と調整することになるでしょう。

(7)分割和解契約の締結と和解書の作成

債権者との間で残債務額を原則36回で弁済する分割和解が合意されれば、あとは合意書(和解書)に双方が記名押印して合意書(和解書)を取り交わし手続き終了となります。

和解書(合意書・示談書)への記名押印は代理人である弁護士や司法書士と債権者の2者だけが行う場合もありますが、債権者によっては依頼人(債務者)本人の押印を求めることもありますので、弁護士や事務所に出向いて和解書に押印したり、郵送で和解書(示談書)を自宅に送ってもらって押印したりすることが必要な場合も有ります。

(8)和解書原本の本人への引渡と処理内容の説明

和解書(合意書・示談書)の取り交わしが債権者との間で完了したら、最後に弁護士または司法書士事務所に出向いて業務完了報告を受けます。

弁護士や司法書士から和解書の原本や取引履歴などの資料を渡されたら、一応その時点で任意整理の手続きは終了となります。

あとは、和解書に記載された返済計画に従って毎月債権者に指定された金額を送金することになります。

なお、弁護士や司法書士費用の分割払いをしてもらっている場合には、債権者への弁済とは別に弁護士や司法書士にも支払いを続けなければならないことになるでしょう。

まとめ

以上の手続きの流れをまとめると以下のようになります。

  1. ……弁護士・司法書士事務所で契約(1日)
  2. ……受任通知の発送(2日~1週間)
  3. ……取引履歴の開示(2週間~2、3か月※遅い業者では半年程度かかる場合も)
  4. ……引き直し計算(1週間程度)
  5. ……依頼人(債務者)との打ち合わせ(1週間~2週間)
  6. ……債権者と交渉、分割和解の提示(1週間~)
  7. ……分割和解の契約の締結と和解書の作成(1週間~2週間)
  8. ……和解書原本の依頼人への引渡し、和解内容の説明(1週間程度)
  9. ……事件終了
  10. ……債権者への分割弁済開始(事件終了から原則3年間以内)