闇金への返済ができなくなった際に、闇金からの要求にこたえる形で自分名義の銀行口座の預金通帳やキャッシュカードを闇金に譲り渡してしまう人がいます。
返済の代わりに預金口座を譲渡することで、返済の免除を受けたり返済期日の猶予を得たりするのでしょうが、このような預金口座の譲渡は絶対にしてはいけません。
なぜなら、預金口座を闇金に譲渡してしまうことは、知らない間に犯罪行為に加担してしまうことに繋がりますし、場合によっては振り込め詐欺などの犯罪被害者から被害金額の莫大な返還請求を起こされる危険性すらあるからです。
闇金に預金口座を譲渡することで起こり得る3つの問題
闇金に対して、自分名義の銀行や信用金庫、信用組合等の預金口座に関する通帳やキャッシュカードを譲渡した場合には具体的に次の3つの事実上及び法律上の問題が発生することになります。
(1)詐欺罪として処罰される
闇金に預金口座を譲渡した場合は、その行為自体が「詐欺罪」に問われる可能性があります。
なぜなら、銀行に口座を開設する場合はその口座を自分自身で使用することを確約して申込みを行うことになりますが、それにもかかわらずその口座を他人に譲渡してしまうと、「自分で使う」と嘘をついて銀行から預金口座の通帳やキャッシュカードの交付を受けたことになってしまい、銀行を騙して銀行から「財物の交付を受けた」ということになってしまうからです。
ちなみに、詐欺罪の法定刑は「10年以下の懲役」となっていますので、相当な重罪といえます。
【刑法第246条】
第1項 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
第2項 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
(2)貸金業法違反や振り込め詐欺の共犯として処罰される
また、闇金に預金口座を譲渡した場合は、闇金や振り込め詐欺の共犯として逮捕される可能性があることも問題となります。
たとえば、闇金に預金口座を譲り渡した場合には、その通帳やキャッシュカードを受け取った闇金が他の顧客からの返済を受け取る口座として利用することになるのが通常です。
そうすると、その預金口座の名義である自分自身も闇金の違法な貸し付けを手助けしていることになりますから、闇金の違法行為を幇助したということで貸金業法違反で逮捕されてしまう可能性も生じてしまいます。
また、たとえばその譲渡された預金通帳やキャッシュカードを闇金が振り込め詐欺犯に転売したり、闇金業者が振り込め詐欺に鞍替えしたような場合には、その譲渡した預金口座が振り込め詐欺の被害者からの送金先として利用されることになりますが、その場合には「その預金口座の名義人」が振り込め詐欺の片棒を担ぐことになりますので、詐欺罪の共犯として立件される可能性もあるでしょう。
以上のように、闇金に預金口座を譲渡した場合には、貸金業法違反や詐欺罪の共犯として逮捕される可能性も否定できないということになるのです。
(3)闇金や振り込め詐欺の被害者から被害金額の返還請求訴訟で訴えられる
さらに、闇金に預金口座を譲渡した場合には、闇金や振り込め詐欺の被害者から被害金額の返還請求訴訟を起こされてしまうリスクがある点も注意が必要です。
なぜ、預金口座を譲渡しただけで1円もお金を受け取っていないにもかかわらず、闇金や振り込め詐欺の被害者から被害金額の返還請求を起こされるかという点については「闇金に銀行口座を譲り渡すと振り込め詐欺被害者から訴えられる?」のページで詳細に記載していますが、闇金や振り込め詐欺の被害者は「預金口座の名義人」の預金口座に送金している以上、「その預金口座の名義人」は被害者から「法律上理由のないお金を取得した」ものとして不当利得の返還請求義務を負うというのが法律的な考え方となります。
したがって、闇金に自分の預金口座を譲渡した場合において、その譲り渡した預金口座が闇金や振り込め詐欺などの犯罪行為に利用された場合には、自分自身はその犯罪行為によって実際に利益を得ていない場合であっても、その犯罪被害者から被害額の返還請求訴訟を提起されてしまうリスクがあるということになるのです。
最後に
以上のように、闇金に自分の預金口座を譲り渡すことは、犯罪行為に加担するばかりか、自分自身でも犯罪を犯していることになってしまいますし、場合によっては犯罪被害者から莫大な被害金額の返還請求訴訟を提起されてしまう可能性すらある大変危険な行為といえます。
ですから、闇金から借り入れをしてしまった場合であっても絶対に自分名義の預金口座を譲渡してはなりませんし、無理をして返済をするのではなく、早急に弁護士や司法書士に相談し適切な対応を取ることが重要になるといえるでしょう。