闇金からお金を借りてはいけない本当の理由

闇金(ヤミ金)からお金を借りてはいけないことはメディアでも広くアナウンスされていると思いますので、ほとんどの人は闇金(ヤミ金)からお金を借りることはないと思いますが、今なお闇金からお金を借りてしまう人は少なからずいるようです。

闇金は通常、数百から数千パーセントの利率でお金を貸し付けるため、常識的に考えればいったん借りたが最後、絶対に返すことができません。

仮に完済できるほど返済を繰り返したとしても、相手によっては言葉巧みに、場合によっては脅し文句も加えて取引を継続させ完済させないのが犯罪者集団である闇金というものです。

ですから、絶対に闇金からお金を借りてはいけないのですが、闇金と取引してしまう人の多くは「なぜ闇金からお金を借りてはいけないのか」という点をあまり理解していないようです。

そこでここでは、今一度「なぜ闇金からお金を借りてはいけないのか」という点について考えてみることにいたしましょう。

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闇金には利息だけでなく元本も返す必要はない

闇金は法外な利息を取ることによって利益を上げることを目的としており、その契約上の利率は利息制限法の利率(15~20%)を大きく超過しているのが明らかですから、仮に闇金から借り入れを行ったとしてもそのお金を借りたという契約(金銭消費貸借契約)自体は無効と判断されます。

そして、契約自体が無効と判断されれば当然、その契約上の利息も支払う必要はありませんから、たとえ闇金からお金を借りたとしてもその利息や遅延損害金を支払わなければならない法的な義務は発生しません。

また、闇金が顧客に対してお金を貸す目的は単に不当に高額な利息を収受することにあるのは明白ですから、そのような不当な目的をもって交付した金銭について闇金の側が顧客に弁済(返還)を求めるべき法律上の権利は存在しないといえるでしょう。

したがって、仮に闇金からお金を借りたとしても利息や遅延損害金を支払わなければならない義務はありませんし、その受け取った借金の元本でさえ返済する必要性はありませんから、結果的に闇金からお金を借りても一円も返済しなくてよい、ということになるのが法律的な考え方となります。

最高裁の判例はヤミ金には通じない

上記のような「闇金には利息だけでなく借入した元本も返さなくてよい」という考え方は過去の最高裁判所の判例(最高裁平成20年6月10日)でも明確に示されていますので(最高裁平成20年6月10日)ここでは詳述いたしません(※この判例については金融庁で概要も公開されています)。

しかし、このような理屈はあくまでも「法律的にはそうなる」というだけの話であって、この理屈が闇金側に通じるかというと必ずしもそうではありません。

闇金は「闇金の貸付が違法であること」を認識したうえで貸付を行っているのですから、違法と分かっている相手に対して「最高裁の判例ではこうなってるんだから一円も返さないぞ」と言ったところで闇金側が「ハイ分かりました」と納得するはずがないでしょう。

銀行強盗に「銀行強盗は犯罪だから止めたまえ」と注意したところで何も取らずに帰るわけがないのと一緒です。

「悪いこと」を「悪いこと」と認識して悪いことをしている相手に対して「悪いことをするな」と言っても効果がないのは当然でしょう。

弁護士や司法書士が介入すれば全体の6割ほどの闇金はあっさり手を引く

上記で「法律上の理屈は闇金には必ずしも通じない」と書きましたが、「必ずしも」という但書が付きますので、弁護士や司法書士といった法律の専門家に依頼すればあっさり手を引く闇金がいるのも事実です。

闇金の処理を手掛けている弁護士や司法書士の人ならわかると思いますが、弁護士や司法書士が介入した事案では全体の60%程度の闇金は弁護士や司法書士から電話が入るとあっさり引き下がり、その後一切顧客に連絡を取らなくなるのが一般的です。

たとえば、闇金10社からお金を借りている人が弁護士や司法書士に処理を依頼したとすると、弁護士や司法書士が電話を入れた後も執拗に督促を止めないのは4社ぐらいで、残りの6社の闇金はあっさり手を引くのが通常です。

闇金からの借金については前述した最高裁の判例のとおり一切返済する必要がないのですから、法律の専門家である弁護士や司法書士が介入すれば、最高裁の出した考え方のとおり一円も支払われるわけがありません。

弁護士や司法書士が介入した後はいくら恫喝しようが喚こうが一円も弁済されないのは明らかですから、弁護士や司法書士が介入した時点で以後の督促は無意味・時間の無駄ということがわかります。

ですから、利口な闇金であれば弁護士や司法書士から電話が入った時点で「わかりました。以後の請求はやめます。」とあっさり手を引く場合が多いのです。

闇金があっさり手を引くのは「損をしていない場合」だけ

もっとも、誤解してはならないのは、闇金があっさり手を引くのは何も弁護士や司法書士を恐れて手を引くわけではないということです。

もちろん、弁護士や司法書士が介入してきた場合には、法律上の手続きを行使して警察と連携し、逮捕まで持っていかれる危険性は大きくなります。

しかし、闇金はもともと闇金が法律に違反する犯罪行為であることを認識し、逮捕されるリスクも承知の上で法外な利率でお金を貸す行為を繰り返しているわけですから、警察が介入して逮捕されるリスクがあるのはあらかじめ織り込み済み、想定の範囲内のことに過ぎません。

ではなぜ弁護士や司法書士が介入した際にあっさり手を引く闇金がいるかというと、それは既に顧客から十分に利息を受け取っていて、あっさり手を引いても損をしないからです。

たとえば期間1週間で5万円を貸し付け、1週間後に1万円を支払えば返済期日が1週間延びるというような契約で貸し付けている顧客が10回返済したところで弁護士や司法書士に相談したとすると、この顧客は1万円を10回返済していることになりますから、闇金側は5万円を渡した代わりに10万円を受け取っていることになります。

そのため、闇金側は弁護士や司法書士が介入した時点で既に5万円の利益を出していることになりますから、たとえ弁護士や司法書士が最高裁の判例を盾に貸付元本の5万円の返済を拒否したとしても闇金側は痛くも痒くもないことになります。

このような事案では、弁護士や司法書士にいくら大声で恫喝しても一円も支払われるわけがなく、それ以上弁護士や司法書士と無駄な交渉を続けるよりも電話をさっさと切って他の顧客を脅してお金を巻き上げる方が効率的です。

ですから、利口な闇金であれば顧客に渡した貸付金の元本額を上回る利息を既に受け取っている案件については弁護士や司法書士が介入した時点であっさり手を引くことになります。

弁護士や司法書士が介入しても闇金が手を引かないケース

前述したように、闇金側が顧客に貸し付けた元金以上に利息を受け取っているようなケースでは、弁護士や司法書士が介入した時点であっさり手を引くのが一般的な闇金です。

しかし、このようにあっさり手を引くのは全体の6割程度で残りの4割の闇金は弁護士や司法書士が介入した後であっても執拗に本人に督促を継続したり、様々な嫌がらせを行う場合があります。

弁護士や司法書士が介入した後でも執拗に督促を継続する闇金としては以下のようなケースが代表的な例として挙げられます。

(1)単に闇金がバカなだけのケース

前述したように、弁護士や司法書士が介入した時点で既に貸付元本を上回る利息を受け取っている場合には闇金側は利益を確保していることになります。

そのため、それ以降の弁護士や司法書士との交渉は無意味で時間の無駄であり警察に逮捕されるリスクが増大するだけで全くメリットはありませんから、利口な闇金であればすぐに手を引いてくれます。

しかし、闇金も様々で中には費用対効果の考えに頭が及ばず、損得勘定がまったくできない馬鹿な闇金もいるのが現実です。

仮に自分がお金を借りた闇金がそのような馬鹿な闇金であった場合には、弁護士や司法書士が介入した時点で十分に利益が確保できている場合であっても、「脅せば取れる」と執拗に督促や嫌がらせを続けることが多いため、弁護士や司法書士が介入してもすぐには解決しないケースも多いです。

このような馬鹿な闇金は、いくら弁護士や司法書士が「最高裁の判例上一切返す必要はない」「これ以上電話すると警察に被害届出すぞ」「お前の使っている銀行口座を凍結するぞ」「携帯電話を強制解約されてもいいのか」などと告知しても、なかなか本人への督促や嫌がらせを止めません。

そもそもこのような馬鹿な闇金は知能が著しく劣り損得勘定ができませんので、いくら弁護士や司法書士が「これ以上請求しても時間の無駄ですよ」と説明しても理解できないのです。

食卓テーブルに集うゴキブリに対して「もうテーブルのケーキは冷蔵庫にしまいましたから食べ物はありませんよ。もう十分食べたでしょう?これ以上そこにいると殺虫剤をかけますよ。だから早く外に出て行きなさい。」と言ったところでゴキブリが家の外に出ないのと同じです。

馬鹿な闇金は知能が劣るわけですから、いくら正論を話したところで理解できません。

そのような馬鹿な闇金が相手の場合には、たとえ受け取った借入元本以上の返済をして闇金側が十分な利益を確保できている場合であっても、弁護士や司法書士が介入したところでなかなか手を引いてくれないのです。

(2)闇金側が元本割れしているケース

闇金側が元本割れしている場合にも、手を引かない場合が多くあります。

闇金側が元本割れしている場合とは、闇金側が顧客に貸し付ける際に交付した金額を下回る金額しか利息を回収できていない場合です。

たとえば、前述した期間1週間で5万円を貸し付けて1週間後に1万円を支払えば返済期日が1週間延びるというような契約で貸し付けている場合を例にとると、この場合に顧客が3回返済したところで弁護士や司法書士に相談した場合、この顧客は1万円を3回しか返済していないことになりますから、闇金側は5万円を渡しているにもかかわらず、まだ3万円しか回収できていないことになります。

このような場合、闇金は2万円損していることになりますから、最低でもその損をしている2万円が回収できるまで執拗に督促や嫌がらせを継続することが多いのです。

前述したように、闇金側で利益が十分確保できている場合には利口な闇金であればあっさり手を引くことが多いですが、このように貸付元本に満たない利息しか回収できていないような元本割れしているケースでは、闇金側も死活問題となります。

そのため、このような場合にはバカな闇金だけでなく利口なヤミ金であってもなかなか請求を止めないことが多いのです。

(3)借り入れ後、一円も返済していないケース

闇金から借り入れをした後一円も返済していないケースも、たとえ弁護士や司法書士が介入したとしても闇金は執拗に督促や嫌がらせを継続してきます。

最近は前述した最高裁の「闇金からお金を借りても元本利息を含め一切返す必要はない」という理屈を逆手にとって、闇金からお金を巻き上げてやろうと090金融などの闇金から多数借り入れを行う人がいるようです。

弁護士や司法書士事務所にも、闇金から借り入れをして一切返済しないまま相談に来る依頼者が稀にいるようですが、このようなケースでは前述したように闇金側は損をしていることになりますから、まず100%手を引きません。

前述の(2)の元本割れしているケースではしばらく嫌がらせをしたのちヒートダウンしてあきらめるところもごくまれにありますが、借り入れ後一切返済していないケースではまず100%闇金側は手を引きません。

特に、借り入れ後すぐに弁護士や司法書士の事務所に駆け込んでくるようなケースでは、闇金側も怒り心頭に達して、勤務先や学校、親戚、近所など把握している連絡先全てに嫌がらせの電話を入れたりするのが通常です。

このようなケースでは、弁護士や司法書士が介入したところで闇金も手を引きませんから、正直言って弁護士や司法書士も手を焼くことになります。

相談者の中には「闇金には一円も返す必要ないんでしょ?だから先生どうにかしてくださいよ」と開き直る人もまれにいるようですが、このように一切返済していないケースでは闇金側も執拗に督促や嫌がらせを続けてくるということは認識しておくべきでしょう。

闇金が手を引かない場合の弁護士・司法書士の対処

前述したように、闇金側が元本割れしていたり、闇金から借り入れをして一切返済していないような場合には、闇金も簡単には手を引いてくれません。

このような場合、依頼を受けた弁護士や司法書士は、闇金が利用する銀行口座の凍結や携帯電話の強制解約、警察への被害届の提出などといった手段で対抗することになるのが一般的ですが、それだけでは闇金の嫌がらせは収まらないことが多いです。

その場合には、依頼者本人が肝が据わっていて、闇金側の請求や嫌がらせに耐えられるというのであれば、そのような嫌がらせに弁護士や司法書士と共に対抗していくこともできるでしょう。

しかし、依頼人がそのような嫌がらせに我慢できない場合には、闇金側が借入元本分は損をしない範囲でお金を支払って「手打ち」にすることもあります。

もちろん、前述したように闇金は貸金業者ではなく「振り込め詐欺」などと同じ単なる犯罪者集団に過ぎませんから、本来であれば前述した最高裁の判例のとおり、闇金には借入元本も含め一円も返済する必要はありませんし、犯罪者集団に資金を提供してしまうことを考えればヤミ金には一円たりともお金を支払うべきではないでしょう。

しかし、事案によっては依頼者の意向や依頼者の生活の平穏のため借入元本の金額だけを支払うことで手打ちにすることも否定されるものではありません。

そのため、弁護士や司法書士の処理方針や個々の弁護士・司法書士の思想によっても異なりますが、依頼した弁護士や司法書士によっては、依頼人の状況などを考慮して闇金側と借入元金の支払いで手落ちをすることもあるのが現状だと思います。

闇金の処理を弁護士や司法書士に依頼する際の心構え

以上で説明したように、闇金からの借入であっても全体の6割程度の闇金は弁護士や司法書士が介入することであっさり解決することが多いです。

また、残りの4割は弁護士や司法書士が介入したとしても執拗に督促や嫌がらせを継続することがありますが、弁護士や司法書士が闇金が使用する口座の凍結や携帯電話の強制解約をしたり警察に被害届を出すことで闇金に対抗することも可能です。

それでも手を引かない闇金に対しては、一切返済を行わず弁護士や司法書士と共に闇金が逮捕されるまで戦っても良いですし、借入元金分を支払って手打ちにすることもできるでしょう。

ただし、ここで忘れていけないのは、最終的には闇金から借り入れをした本人の協力が必要だという点です。

弁護士や司法書士に闇金の処理をする人の中には「闇金には一円も返済しないでいいんでしょ」「プロなんだから先生何とかしてくださいよ」と弁護士や司法書士に丸投げする人もたまにいるようですが、前述したように、手を引かない闇金は逮捕されるまで何をやっても手を引きません。

そのような手を引かない闇金に対しては最終的に、一切返済しないで闇金が手を引くのを待つか、口座や携帯を凍結して警察に被害届を出し闇金が逮捕されるのを待つか、こちらが音を上げてお金を支払うか、の根競べになりますから、いずれにしても本人の意思の問題となります。

ですから、闇金は弁護士や司法書士に相談すれば必ず解決するという問題ではなく、どれだけ自分が闇金と対決できるかという点が非常に重要となってきますので、「弁護士や司法書士に依頼すれば解決するだろう」と安易に考えて闇金から借り入れをしないようにする必要があります。

 

闇金からの借金は弁護士や司法書士に相談すれば必ず解決するものですが、解決のためには本人の協力が少なからず必要になるということは肝に銘じておいた方が良いでしょう。