自己破産をする場合、通勤通学用のバイクを買っても問題ないか?

自己破産の手続きを弁護士や司法書士に依頼した場合、その後は極力大きな出費をしないように注意しなければなりません。

なぜなら、自己破産はその負担する債務を免除(免責)してもらう反面、所有するすべての資産が取り上げられて売却され、その売却代金が債権者に配当(分配)されるという個人資産の清算手続きの性質を有しているからです。

仮に、自己破産を依頼した後に大きな出費をしてしまうと『「債権者の配当に充てるべき資産」を無駄に減少させた』として自己破産の手続きで裁判所や破産管財人に厳しく追及され、自己破産の手続き自体がうまくいかなくなってしまう恐れがあります。

しかし、そうは言っても日常生活で予期せぬ出費が必要になるということは珍しいことではありませんから、そのように大きな出費の必要性が生じた場合に、その買い物をしても大丈夫なのかという点に疑問が生じてしまいます。

たとえば、弁護士や司法書士に依頼した後に通勤や通学のために何らかの代替手段が必要になったような場合です。

自己破産の申立を弁護士や司法書士に依頼する時点でその所有する自動車がある場合には、例えその自動車が通勤や通学、介護など生活に必要不可欠な用途として利用している場合であっても、資産価値として認められるのであれば自由財産の拡張が認められない限り裁判所に取り上げられて売却され、債権者の配当に充てられるのが原則となっていますから、そのようなケースで自動車を取り上げられた場合には、その代替手段となるバイクなどを購入する必要が生じる場合も考えられるでしょう。

▶ 通期や通学、介護に必要な車は自己破産しても取り上げられない?

しかし、自己破産の申立を行った後に裁判官や破産管財人から「債権者の配当に充てるべき資産を無駄に減少させた」として問題にされるのであれば、そのような代替手段となるバイクを購入することは危険なので早起きして徒歩で通勤・通学するしかなくなってしまいまうかもしれません。

では、自己破産の手続きを行う場合、通勤や通学など生活に必要不可欠な用途として用いるためにバイクなどを購入することは問題があるのでしょうか?

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通勤や通学に必要不可欠であればバイクの購入も差し支えない

結論からいうと、通勤や通学に必要不可欠なのであれば、仮に自己破産の申立が決まっていたとしても、通勤や通学の手段としてバイクを購入することも差し支えありません。

もちろん、通勤や通学とは直接関係ないような例えばハーレーとかBMW、ドゥカティなどを購入するなら話は異なりますが、通勤や通学のため50CCや125cc程度のスクーター等を購入するのであれば特に問題は生じないと思います。

確かに、自己破産の手続きが将来的に予定されているまたはすでに自己破産の申立を行っている場合には、その申立人の資産は法律で所有が認められる自由財産の部分を除いて、その全てが「債権者の配当に充てるべき資産」と判断されることになりますので、その資産価値を目減りさせてしまうような高額な商品の購入は自己破産の手続き上で問題にされる可能性があります。

しかし、たとえ自己破産の申立人とはいっても、食費や住居費など生きていくうえで最低限必要な支出は当然にその支出が認められているのですから、通勤や通学など正当な理由があるのであればバイクの購入も認められると考えてよいでしょう。

ただし、必要以上に高額なバイクの購入は、後で破産管財人に「否認」されることも有り得る

前述したように、通勤や通学に必要など、その購入に正当な事情がある場合には、自己破産の申立前に、または自己破産の申立後にバイク(単車)を購入することも認められるものと考えられます。

もっとも、だからといって通勤や通学に必要性の無い高額なバイクを購入することは控えるべきでしょう。

前述したように50CCや125cc程度のスクーター等を購入するのであれば特に問題ありませんが、例えばハーレーとかBMW、ドゥカティなどの外国製の高級二輪車や、ホンダのCBやカワサキのZ1/Z2などいわゆる旧車と呼ばれる二輪車は、常識的に考えて通勤や通学に必要不可欠とは言えないわけですから、そのような高額なバイクを購入した場合には、自己破産の手続き上で裁判所から選任された破産管財人に「なぜ50CCのバイクで十分なのにハーレーの大型バイクを購入したんだ?」と厳しく突っ込まれることになるでしょう。

なお、仮にそのように破産管財人が高額な出費であると認定し「債権者の配当に充てるべき資産を不当に減少させた」と判断した場合には、破産管財人が「否認権」を行使してその契約を否認することになるのが通常です(破産法第160条1項)。

【破産法第160条1項】

次に掲げる行為(中略)は、破産手続開始後、破産財団のために否認することができる。

  1. 破産者が破産債権者を害することを知ってした行為。ただし、これによって利益を受けた者が、その行為の当時、破産債権者を害する事実を知らなかったときは、この限りでない。
  2. 破産者が支払の停止又は破産手続開始の申立て(中略)があった後にした破産債権者を害する行為。ただし、これによって利益を受けた者が、その行為の当時、支払の停止等があったこと及び破産債権者を害する事実を知らなかったときは、この限りでない。

具体的には、破産管財人がそのバイクの購入契約を解除して支払った代金を返してもらうことになるのが通常ですが、バイクを販売したバイク屋の保護も考えなければなりませんので、契約の解除はせずにその代金相当額を自己破産の申立人に積み立てさせて、その積み立てたお金を破産管財人が債権者に配当することになるケースが多いのではないかと思います。

このように、たとえ通勤や通学に必要不可欠であっても、分不相応なバイクを購入してしまった場合には、その代金を積み立てさせられることを命じられ、その積立が終わるまで自己破産の免責(※借金の返済が免除されること)が出されなくなることもありますので注意が必要でしょう。

購入する場合は必ず自己破産を依頼する弁護士や司法書士に相談すること

以上のように、通勤や通学に必要不可欠なのであれば、自己破産の手続き前にバイクを購入することも差し支えないと考えられますが、実際に購入する場合は自己破産を依頼する(又は自己破産を依頼した)弁護士なり司法書士なりに事情を説明し、バイクを購入しても差し支えないか確認することは必須です。

仮に弁護士や司法書士に相談無く購入してしまうと、前述したように自己破産の手続き上でその契約が否認され、バイクの購入代金相当額の積み立てなどを命じられ自己破産の手続きがうまく進まない場合も有りますので、早めに弁護士や司法書士に相談し適切な対処を取ることが必要といえるでしょう。