安易な特定調停は危険? 返済が滞れば差し押えも…

スポンサーリンク

債務整理の手続きの中に「特定調停」と呼ばれるものがあります。

「特定調停」は全国の簡易裁判所に申立を行うことができるもので、借金の返済が滞った債務者が債権者との間で分割返済の話し合いを行う「調停」が実施される手続きのことをいいます。

特定調停は申立を行う「債務者」と相手方となる銀行や貸金業者などの「債権者」との間で単に話し合いを行う「調停」に過ぎませんが、裁判所から選任される「調停委員」が間に入ることから(調停委員の経験や知識にもよりますが…)基本的に法律上不当な弁済計画を強制される危険性がないという点が大きなメリットとなります。

たまに、借金の返済に行き詰った人が貸金業者などに連絡して自分で分割返済の話し合いをしてしまう例がありますが、仮に相手方の貸金業者の方に悪意があったりして本来は支払わなくても良い利息まで支払う返済計画を提示されてしまうと金融知識の乏しい債務者側が思わぬ不利益を受けてしまいかねません。

しかし、裁判所に特定調停を申立てた場合には裁判所の選任した調停委員が債務者と債権者の間に入って法律上不当な調停がなされないかチェックしますから、どんなに悪徳な金融機関が相手でも一応は法律上正当な分割返済案が認められることになります。

そのため、特定調停という手続きは、借金の返済が厳しくなった債務者が生活再建のためにとる手続きとしては利用価値の大きな手続きであるといえます。

スポンサーリンク

特定調停の最大のメリットは費用が「安い」こと

特定調停のメリットとしては、前述したように債権者との間で不当な分割返済の合意がなされないという点が挙げられますが、なにもメリットはそれだけではありません。

借金整理に必要となる費用を低額に抑えられるという点も特定調停の大きなメリットとして挙げられます。

特定調停とよく似た手続きで「任意整理」と呼ばれるものがありますが、任意整理は弁護士か司法書士に依頼しなければなりませんので、その報酬が発生します。

弁護士や司法書士の報酬は事務所によってまちまちなので一概に言えませんが、債権者1社あたり2万円~3万円が相場といえるでしょう。

しかし、特定調停であれば債権者1社あたり500円で申立を行うことが可能です。

その他にも債権者への書類の送付に必要な切手代や自分が裁判所に出向く際の通費など実費が必要となりますが、任意整理の場合も実費は請求されるのが通常ですので、弁護士や司法書士に依頼する任意整理よりも格段に安い費用で借金の整理が可能といえるでしょう。

任意整理は、弁護士や司法書士に依頼をして各債権者と個別に分割返済の話し合いをしてもらい、利息の再計算や将来利息のカット、一般的には3年以内の期間での分割返済の和解交渉をしてもらう手続きのことをいいますが、借金の利息の再計算を行い将来利息のカットを含む3年以内の分割返済の話し合いをする点は特定調停と全く同じですから、やっている内容は「任意整理」も「特定調停」も全く変わりありません。

にもかかわらず、特定調停のほうは1社あたり500円で処理してもらえるのですから、その費用の差は歴然といえます。

そのため、出来るだけ安い費用で借金の整理がしたいと思うのであれば断然、特定調停が「お得」ということになるでしょう。

「任意整理より安いから…」と安易に申立てるのは危険な面も…

しかし、単に「安いから」という理由だけで特定調停を申し立てるのは危険です。

なぜなら、特定調停は裁判所に申し立てる手続きですから、特定調停で債権者との間で合意される債務額や分割返済案に、公的な機関である裁判所がいわば「お墨付き」を与えることになるからです。

前述した「任意整理」の場合には裁判所に申立をせずに、依頼をした弁護士や司法書士が債務者の代理人となって直接債権者側と交渉し、正確な債務額や分割返済の金額・回数を合意することになります。

「任意整理」はあくまでも私人である債務者の代理人(弁護士・司法書士)と債権者(銀行や貸金業者など)との間の「私的」な「任意」の話し合いに基づく合意に過ぎませんので、公的な機関がその合意に何らかの効力を生じさせるものではないのです。

一方、特定調停の場合には、裁判所という公的機関が

  • 「『債務額が〇〇円、返済期間が○年、毎月の返済額が〇円で、毎月○日までに振り込む』という調停案で双方異議はありませんね?」
  • 「債務者さん…本当にこれで払えますね?」
  • 「債権者さん…本当にこの金額と返済回数で了承してもらえるんですよね?」

という確認をとったうえで特定調停に基づく調停調書を発行することになります。

これは、特定調停において債務者と債権者が合意した調停内容(債務額や返済額、返済期間や返済回数など)については、裁判所という公的な機関においてお墨付きが与えられるということになります。

裁判所からお墨付きを与えられるとなぜ危険なのかというと、後述するように、万が一返済が滞った場合には差押えという強制執行が簡単になされることになるからです。

特定調停で合意した返済が滞るとすぐに差押えがなされる可能性がある

通常、貸金業者や銀行などの債権者が債務者に対して差し押さえなどの強制執行を行う場合には、裁判所に裁判を提起して判決を出してもらい、その判決書を裁判所に改めて提出するという手続きをとらなければなりません。

一般に、裁判を行って判決を取るまでには最短でも半年以上の期間が必要です。

そのため、債権者への返済が滞っただけであれば仮に債権者から裁判を起こされたとしても実際に差押えという強制執行を受けるまでは半年以上の期間がかかるわけです。

言い換えれば借金の返済ができなくなっても少なくとも半年間ぐらいは差押えされる危険性はないことになります。

しかし、特定調停をした場合にはそうはいきません。

特定調停によって裁判所から発行される「調停調書」は一般の裁判における「判決書」と同じように裁判所が公的に発行するものとなりますから、特定調停の調停調書は裁判の判決と同じような重みのあるものとなりますから、仮にその調停調書に記載されているとおりに返済ができない場合には、債権者側がその調停調書を裁判所に提出することですぐに差押えを実施することが可能となります。

このように、差し押さえなどを行うことができる文書のことを専門用語で「債務名義」といいますが、特定調停の「調停調書」も裁判における「判決書」も同じ「債務名義」ということで、それを裁判所に提出することですぐに差押えという強制執行の手続きに進むことができるのです。

このように、特定調停を行った場合には、仮にその調停調書に記載された返済計画のとおりに返済ができない状況に陥った場合には、すぐに差押えがなされる危険性があることはあらかじめ知っておく必要があります。

仮に給料を差し押さえられてしまうようになった場合には、勤務先の会社に自分が多額の借金を抱えていることが知れてしまうことになりますので十分に注意することが必要です。

仮に給料を差し押さえられたとしても生活に必要な最低限の金額は差し押さえが禁止されていますから、特定調停で合意した返済が滞って差押えがなされたとしてもすぐに生活に困窮することはないと思いますが、会社に借金のことが知れてしまうと勤務先での信頼を失い査定や昇進に響くこともあるかもしれません。

 

返済に自信がないのであれば任意整理の方が良い場合も有る

上記のように、特定調停の場合には返済が滞った場合にはすぐに差押えがなされる危険性がなされるという点が大きなデメリットといえるでしょう。

一方、弁護士や司法書士が介入して個別に債権者と分割返済の和解を取り付ける「任意整理」の場合には裁判所が”お墨付き”を与えるわけではありませんから、仮に任意整理で債権者と合意した返済が途中で滞ったとしても、債権者からいきなり差押えがなされることはありません。

なぜなら、仮に任意整理で合意した返済が滞った際に債権者側が差押えをしたいと思う場合には、債権者は改めて「貸したお金を返せ」という裁判を裁判所に提起して裁判所から判決を出してもらい、その判決書を「債務名義」として裁判所に強制執行の申立を行うという手順を踏まなければならないからです。

前述したように、裁判には最低でも半年はかかりますから、任意整理を行った場合には仮に途中で返済が行き詰まったとしても半年間ぐらいは差押えの危険がありませんので、その期間に余裕をもって対処法を考える(といっても通常は自己破産をするしかないかもしれませんが…)こともできるでしょう。

このように、任意整理は弁護士や司法書士に支払う報酬が発生する半面、返済が滞った場合であってもすぐに差押えを受けないといったメリットもあるという点は知っておいて損はないと思います。

「安いから」という理由だけで特定調停を申立てるのも、場合によっては危険な面もあるということは知っておいてほしいと思います。

 

特定調停
スポンサーリンク
この記事をシェアする
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます。
スポンサーリンク
脱・借金コム