自己破産に回数制限はあるのか?

あくまでも一般論ですが、自己破産する人の中には財産管理能力に問題がある人もいるため、一度自己破産すると、2度、3度と繰り返してしまうケースも少ななからずあるようです。

(あくまでも一般論です!)

しかし、ここで疑問に思うのが、自己破産というものはそうそう何度もできるものなのか?という点です。

そんなに何度もできるなら、お金を借りまくって自己破産して、またお金を借りまくってまた自己破産して、という生活を繰り返すことも可能でしょうから、そのような不道徳な考えを抱く人も出てこないとは限りません。

では、現実問題として、自己破産の手続きは何度でもできるものなのでしょうか?

それとも、自己破産の手続きに回数制限などは設定されているのでしょうか?

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自己破産の手続きに回数制限はない

結論からいうと、自己破産の手続きに回数制限はありませんので、何回でも何十回でも、理論的には何百回でも自己破産をすることは可能です。

ですから、一度自己破産したら2回目はできないということはありませんし、一生のうちに一度しかできないといったようなこともありません。

ただし、前回の自己破産から7年以内の申し立ては免責不許可事由となる

前述したように、自己破産の申立回数自体に制限はありませんが、前回の自己破産(又は個人再生)手続きから7年以内に再度自己破産の申立を行う場合には、免責不許可事由に該当するものとして事実上の制限を受けることになります(破産法第252条第1項10号)。

【破産法第252条】

第1項 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
第1号~9号(省略)
第10号 次のイからハまでに掲げる事由のいずれかがある場合において、それぞれイからハまでに定める日から七年以内に免責許可の申立てがあったこと。
イ 免責許可の決定が確定したこと 当該免責許可の決定の確定の日
ロ 民事再生法(中略)第239条第1項に規定する給与所得者等再生における再生計画が遂行されたこと 当該再生計画認可の決定の確定の日
ハ 民事再生法第235条第1項(中略)に規定する免責の決定が確定したこと 当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日
(以下、省略)

「免責不許可事由」とは、破産法で定められた「このような事由がある場合は免責をみとめませんよ」という事由のことを言います。

自己破産の申し立てが行われた場合、その申立を受理した裁判官は、その申立人に「免責不許可事由」に該当する事実がないかチェックすることになりますが、「免責不許可事由」に該当する事実があった場合には、後述する「裁量免責」が認められる事情がない限り、免責(※借金の返済を免除すること)を「不許可」にしなければなりません。

したがって、仮に前回の自己破産や個人再生の手続きが終了してから7年が経過する前に自己破産の手続きを申立てる場合には、原則として免責が受けられない(※自己破産の申立をしても借金の免除が受けられない)ということになってしまうのです。

7年以内に申し立てる場合は裁量免責を求めるしかない

前述したように、前回の自己破産や個人再生の手続きが終了してから7年が経過しない間に自己破産の申立を行う場合は免責不許可事由に該当するため、通常は自己破産の申立をしても裁判所から免責を受けることができません。

もっとも、だからといって7年以内の自己破産が絶対に認められないのかというとそういうわけではありません。

なぜなら、自己破産の手続きを定めた破産法という法律では、免責不許可事由に該当する事実がある場合であっても、免責を認めるに足る事情がある場合には、裁判官の「裁量」で特別に免責を認めることができる「裁量免責」の制度が設けられているからです(破産法第252条第2項)。

【破産法第252条第2項】

前項の規定にかかわらず、同項各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。

裁量免責を受けたい場合には、上申書などを作成し裁判官に対して「免責不許可事由に該当する事実が生じてしまった事情」や「免責が必要な事情」を説明して理解してもらう努力が必要ですが、免責不許可事由に該当するとして一律に免責を不許可にしてしまうと何の救済もされない債務者が路頭に迷うことになってしまいますので、裁判所としては広くこの「裁量免責」を認める傾向にあります。

ですから、もしも前回の自己破産や個人再生の手続きから7年を経過しない間に再度自己破産の申し立てが必要になった場合には、裁判官に事情を十分に説明することで裁量免責を受けるしかないでしょう。

裁量免責を受ける場合は管財事件となるのが通常

なお、以上で説明したように、前回の自己破産や個人再生の手続きから7年が経過しなくても裁判官からの「裁量免責」を受けることにより免責を受けることは可能ですが、このように「免責不許可事由」に該当する事実があるケースでは裁判所が破産管財人を選任し、その破産管財人に申し立てに至った事情などを厳しく調査させるのが通常です(※同時廃止ではなく管財事件として処理されるということ)。

この点、破産管財人が選任された場合に必要となる破産管財人の報酬(管財費用)は最低でも20万円が相場となっていますから、このように7年以内に再度自己破産の申し立てをする場合には通常の自己破産の場合よりも20万円余計に費用が掛かるということになります。

最後に

以上のように、自己破産の申し立てに「回数制限」はありませんが「7年以内の申し立ては免責不許可事由に該当する」という制限があり、「7年以内の申し立てでも裁量免責を受けることができる」とはいっても、それは「あくまでも裁判官の裁量」であって「必ずしも裁量免責が受けられる保証はない」ですし、仮に裁量免責を受けられるとしても、そのためには破産管財人に支払う「管財費用が必要になってしまう」という不利益を受けることになります。

このように、自己破産の手続きに回数制限はなく、裁量免責の制度も設けられていますので、理論的には何度でも何十回でも自己破産の申し立ては可能といえますが、それなりの不利益やリスクはあるわけですので安易な借り入れは控えるべきでしょう。

また、仮に借り入れが膨らんだとしても、早期に弁護士や司法書士に相談すれば自己破産ではなく任意整理や個人再生で処理できるケースもあるわけですから、無理をして返済を続けるのではなく、返済が厳しくなった時点で早めに弁護士や司法書士に相談することが必要になってくるのではないかと思います。