弁護士や司法書士に自己破産の申立を依頼する際に意外と気になるのが、実際に依頼した場合にいったいいくら費用が必要になるか、という点かもしれません。
なぜなら、一昔前と異なり、現在の弁護士や司法書士の報酬は完全に自由化されていますから、自己破産にかかる弁護士や司法書士の報酬もそれぞれの事務所によって異なっているからです。
一般の人にとって弁護士や司法書士は人生で数えるほどしか接することのない職業であり、また自己破産といった債務整理の手続きも専門的知識がないと分かり難いですから、自己破産を依頼する相談者からすれば、数ある弁護士や司法書士の事務所かいったいどの事務所を選べばよいのか、選択に迷うのが通常でしょう。
そのため、弁護士や司法書士を比較する基準として「値段」が大きな要素を占めることになりますが、その値段でさえ事務所によって大きな違いがありますから、利用者にとってはいったいどの事務所に相談すればよいのか、途方に暮れてしまうのです。
そこで今回は、弁護士や司法書士の自己破産の報酬を比較する際に、どのようなポイントに注意してチェックすればよいのか、といった点について考えてみることにいたしましょう。
自己破産の費用の内訳
弁護士や司法書士事務所における自己破産費用のチェックのポイントを考える前提として、弁護士や司法書士に自己破産を依頼した場合に、どのような内訳で費用が発生するのかという点を抑えておかなければなりません。
この点、弁護士や司法書士に自己破産を依頼する場合の費用は「弁護士・司法書士に対する報酬」「成功報酬」「通信費や交通費などの実費」「裁判所に納める手続き費用」「破産管財人が選任された場合の管財費用」の5種類に分類されるのが一般的です。
- 弁護士・司法書士に対する報酬
- 成功報酬
- 通信費や交通費などの実費
- 裁判所に納める手続き費用
- 破産管財人が選任された場合の管財費用
そのため、各弁護士や司法書士事務所の費用をチェックする場合も、この5つの項目それぞれにポイントを絞って比較する必要があります。
A)弁護士・司法書士に対する報酬
弁護士や司法書士もボランティアで仕事をしているわけではありませんから、弁護士や司法書士に自己破産を依頼する場合には、その依頼する弁護士または司法書士に「報酬」を支払わなければなりません。
この弁護士や司法書士の「報酬」については事務所によっては「手数料」や「弁護士費用(司法書士費用)」「着手金」などといった名目で表示されている場合もありますが、弁護士の場合には代理人として、司法書士の場合には書面作成者として本人の代わりに手続きを行ってくれたことに対する対価であることに違いはありませんので、ここでいう「報酬」とは「手数料」「弁護士費用(司法書士費用)」「着手金」等も全て含めたものをいいます。
この弁護士や司法書士に支払う「報酬(手数料・弁護士司法書士費用・着手金等)」は完全に自由化されていますので、事務所によっては10万円を切るような安いところもありますし、30万円から50万円を超える事務所もあります。
しかし、この弁護士や司法書士事務所の「報酬(手数料等)」をチェックする場合には、単に自己破産の「報酬」が高いか安いかで判断してはいけません。
なぜなら、事務所によっては自己破産の「報酬」を計算する際に、「自己破産の手続きそのものに対する報酬」と「債権者1社あたりの報酬」に分けて設定している場合があるからです。
「債権者〇社までは〇万円」「債権者1社あたり〇万円」に注意
例えば、A弁護士事務所における自己破産の「報酬」が「50万円」、B弁護士事務所の自己破産の報酬が「30万円」、C司法書士事務所の司法書士報酬が「20万円」であったと仮定しましょう。
- A弁護士事務所:自己破産の報酬は50万円
- B弁護士事務所:自己破産の報酬は30万円
- C司法書士事務所:自己破産の報酬は20万円
このような場合、一番費用が安くて済むのはC司法書士事務所となり、そのあとにB弁護士事務所、A弁護士事務所と続くことになります。
しかし、弁護士や司法書士事務所によっては、この自己破産の手続きに関する「報酬」とは別に、「債権者1社あたり〇万円」とか「債権者10社までは○万円、11社以上の場合は○万円」など「報酬」の金額を設定している場合がには、その報酬に大きな違いが生じることになってしまいます。
例えば、上の事例で、A弁護士事務所では自己破産の「報酬」が「50万円」でそれ以外に報酬は発生しないと設定している一方で、B弁護士事務所では自己破産の「報酬」が「30万円」なのは債権者が10社までで「債権者が10社を超える場合」には「60万円」としていて、C司法書士事務所では自己破産の報酬は「19万円」だけれども「債権者1社あたり3万円」が「債権者割報酬」として加算されていると仮定しましょう。
- A弁護士事務所:自己破産の報酬は50万円で固定
- B弁護士事務所:自己破産の報酬は30万円(※債権者が10社を超える場合は60万円)
- C司法書士事務所:自己破産の報酬は19万円(※債権者1社あたり3万円)
このような料金設定では、たとえば債権者が3社までしかない場合には、B弁護士事務所の報酬は30万円のまま、C司法書士事務所の報酬は基本報酬の「19万円」と債権者割報酬の「9万円(3万円×3社)」の合計となる28万円となりますので、一番費用が安く済むのはC司法書士事務所で、そのあとに安いのがB弁護士事務所となり、A弁護士事務所が一番高いことになります。
【債権者が3社までの場合】
- 一番安い…C司法書士事務所【19万円】
- 次に安い…B弁護士事務所【30万円 】
- 一番高い…A弁護士事務所【50万円】
しかし、債権者が4社以上になる場合で10社を越えない場合には、C司法書士事務所に依頼した場合には債権者割報酬が12万円以上取られることになりますから、C司法書士事務所はB弁護士事務所よりも費用が高くなりますから、一番安いのはB弁護士事務所ということになります。
【債権者が4社から10社までの場合】
- 一番安い…B弁護士事務所【30万円】:一番安い
- 次に安い…C司法書士事務所【19万円+(12万円~30万円)】
- 一番高い…A弁護士事務所【50万円】
一方、債権者が10社を超えるケースになるとB弁護士事務所では弁護士報酬が「60万円」となりますし、債権者が13社までのケースではC司法書士事務所でも「債権者割報酬」が33万円から39万円となり「自己破産の基本報酬」と合計すると52万円を越えてしまうことからA弁護士事務所よりも高くなってしまいますから、債権者が10社を超えて13社までのケースではA弁護士事務所が一番安く、一番高いのはB弁護士事務所となってしまうでしょう。
【債権者が10社を越え13社までの場合】
- 一番安い…A弁護士事務所【50万円】:一番安い
- 次に安い…C司法書士事務所【19万円+(33万円~39万円)】
- 一番高い…B弁護士事務所【60万円】
さらに、債権者が14社以上になるようなケースでは、C司法書士事務所では「債権者割報酬」が42万円を超えることになりますので、C司法書士事務所が設定する自己破産の基本報酬である19万円と合計すると60万円を超えてしまいますから、このようなケースではC司法書士事務所が一番高くなってしまいます。
【債権者が14社以上の場合】
- 一番安い…A弁護士事務所【50万円】
- 次に安い…B弁護士事務所【60万円】
- 一番高い…C司法書士事務所【19万円+42万円以上】
「債権者が〇社までは〇万円」とか「債権者1社あたり〇万円」などと債権者数によって報酬基準が異なる事務所では思わぬ高額になることもある
このように、弁護士や司法書士の事務所のおける「自己破産の報酬」については、「自己破産そのものの報酬」として一定の金額で「固定」している事務所だけでなく、「債権者〇社までは〇万円、〇社以上は○万円」などと債権者が一定の数を越えた場合に自己破産の報酬を増額する事務所や、「債権者の1社あたり〇万円」などと設定して自己破産の手続き報酬とは別に「債権者割報酬」を請求している事務所があるのが実情です。
なぜこのように債権者数によって報酬が高くなるかというと、債権者数が多くなるのに比例して、事務作業が煩雑になってしまうからです。
債権者が1社の自己破産申立よりも10社の場合の方が利息の再計算や収集する資料の数も10倍になりますし、裁判所に説明しなければならない事情も増えることになりますから、多くの弁護士や司法書士事務所では債権者数によって異なる自己破産の報酬基準を設定しているのです。
そのため、「債権者〇社までは〇万円、〇社以上は○万円」とか「債権者1社あたり〇万円」などと報酬を設定している事務所では、そのような基準を見落としたまま依頼をしてしまうと思わぬ高額な報酬を請求されて驚いてしまうことがありますので、事前によく確認することが必要でしょう。
※自己破産の報酬を「○万円」と固定している事務所であっても、上記で例示した場合のように、そもそもその固定された金額が他の事務所よりも高額な場合には債権者数に応じて報酬基準を設定している他の事務所と比較して高額になる場合も有ります。
ですから「債権者〇社までは〇万円、〇社以上は○万円」とか「債権者1社あたり〇万円」と設定している事務所に依頼すると費用が高くなるというわけではありませんので誤解のないようにしてください。
B)成功報酬
弁護士や司法書士の事務所によっては、自己破産の「免責」が認められた場合に前述した(A)の「報酬」とは別に「成功報酬」を支払うよう定めている事務所があります。
「成功報酬」とはその名のとおり、事件が「成功」した場合に依頼にが弁護士(司法書士)に支払わなければならない報酬のことを言います。
裁判では勝訴するか敗訴するかはやってみないとわからない面がありますから、弁護士や司法書士が依頼人から事件を受任する場合にはまず「着手金」だけを請求し、裁判で勝訴した場合にだけ着手金とは別に「成功報酬」を受け取るのが一般的です。
この点、自己破産も裁判の一種であり、自己破産を申し立ててみないと借金の支払いが免除されるという「免責」が裁判所から出されるかわかりませんから、裁判所から「免責」を受けた場合を「成功(勝訴)」ととらえて免責を受けた時点で依頼人から前述した(A)の「自己破産の手続きを行うことそのものの報酬」とは別に「成功報酬」を受け取ることも否定されるものではありません。
ですから、弁護士や司法書士の事務所によっては前述した(A)の「報酬」とは別個に「成功報酬」を設定しているところがありますので、自分が依頼仕様とする事務所が「成功報酬」を取るのか取らないのか、といった点は事前によく確認しておくことが必要です。
なお、自己破産の手続きを規定する破産法という法律では、免責不許可事由というある一定の行為があった場合には「免責(借金の返済が免除されること)」を不許可にする(つまり自己破産の免責を認めないということになり借金を原則どおり返済しなければならなくなること)という事由が定められており、たとえばギャンブルや浪費などがあった場合や、前回から7年以内に再度自己破産を申し立てるような場合には「免責」が認められないことになるのが原則ですが、裁判所の実務上の取り扱いでは裁判官が特別に免責を認めるという「裁量免責」が比較的広く認められていますので、実際には「免責」が不許可になることは99.99%ありません。
ですから、自己破産の手続きを弁護士や司法書士に依頼する場合にその事務所が「成功報酬」を取っている場合には、手続きが終了する際にほぼ100%「成功報酬」を支払わなければならないと思っておいた方が良いでしょう。
もっとも、だからと言って「成功報酬」を設定している事務所がボッタクリなのかというと決してそういうわけではありません。
「成功報酬」を設定していない事務所であっても前述した(A)の報酬が高ければ結果的にその弁護士(司法書士)に支払う報酬は高くなりますし、「成功報酬」を設定している事務所であっても前述した(A)の「報酬」が低く設定して有れば全体としてその弁護士(司法書士)に支払う報酬は低くなるでしょう。
ですから、弁護士や司法書士に自己破産を依頼する場合には、前述した(A)の「自己破産そのものに関する報酬」はいくらになるのかといった点だけでなく、この(B)の「成功報酬」も支払わなければならないのかといった点も確認し、(A)の報酬と(B)の成功報酬を合計していくらになるのか、といった全体としての報酬の金額を他の事務所と比較する必要があるといえるでしょう。
C)通信費や交通費などの実費
弁護士や司法書士に自己破産の申立を依頼した場合には、前述の(A)で説明した「報酬」の他に「実費」についても請求されるのが一般的です。
自己破産における「実費」とは、弁護士や司法書士が自己破産の手続きを進める際に必要となる通信費や交通費のことをいい、具体的には依頼人や債権者、裁判所などと連絡を取る際に必要となる電話の電話代や切手代、裁判所等に出向く際の交通費などが含まれることになります。
自己破産の手続きは出張して調査が必要となる案件は稀なケースであり、そのほとんどは事務所内における書類作成業務となりますので、自己破産で必要となる実費はそれほど多くはありません。
一般的には1~2万円程度に設定している事務所が多いのではないかと思いますが、事務所によっては「実費」を前述した(A)の「報酬」に含まれるものとして請求しないところもあります。
そのため、弁護士や司法書士に自己破産を依頼する場合には、「実費」はいくら支払う必要があるのか、「実費」は「自己破産の報酬」に含まれるのかそれとも別個に「実費」として支払わなければならないのか、といった点についてよく説明を受けておく必要があるでしょう。
D)裁判所に納める自己破産の手続き費用
自己破産の手続きを行う場合には、裁判所に自己破産に関する手続き費用を納付しなければなりません。
この自己破産に関する手続き費用とは、自己破産を手続きを進めるために最低限必要な費用であり、具体的にはの3種類の費用をいいます。
- 申立書に添付する収入印紙代
- 債権者に通知を行う際の郵便切手代
- 官報公告費用
この自己破産に関する手続き費用のうち、「1.」の収入印紙代と「3.」の官報公告費用については全国一律になっており、「1.」の収入印紙については1,500円、「3.」の官報公告費用については10,584円で変わりありません。
「2.」の郵便切手代については各地の裁判所によって異なっており、債権者の数に関係なく3,000円~4,000円程度の切手を申立時に納付させる裁判所もあれば、82円切手を債権者の数だけ納めさせる裁判所もあります。
したがって、自己破産の申立を弁護士や司法書士に依頼する場合には、前述した(A)の報酬や(B)の成功報酬、(C)の実費の他に、この(D)の「裁判所に納める手続き費用」についても必要となりますので注意が必要です。
もっとも、この(D)の裁判所に納める手続き費用については、どの弁護士や司法書士事務所に依頼する場合にも請求されるものですし、仮に弁護士や司法書士に依頼せずに自分で申立書を作成して裁判所に申立を行う場合であっても納付しなければなりませんから、この費用については「だいたい合計して1万5千円ほど裁判所に納めなければならない」という認識だけで結構だと思います。
なお、この裁判所に納める手続き費用のうち「官報公告費用」については、弁護士や司法書士事務所によっては依頼を受ける段階で依頼人に請求する場合が多いと思いますが、事務所によっては申立書を作成して裁判所に提出し、裁判所から請求され段階で本人から裁判所に直接振り込ませるところもあるようです(※特に司法書士申し立ての場合)。
E)破産管財人が選任された場合の管財費用
① 管財費用とは?
自己破産の申立を行うと、裁判所がその自己破産の申立案件を「管財事件」と「同時廃止事件」のどちらかに振り分けることになります。
「管財事件」とは、裁判所が破産管財人を選任し、その破産管財人にその申立てられた自己破産の案件に不正な点がないか調査させたり、売却できる資産がある場合は申立人から取り上げて売却し、その売却代金を債権者に分配したりさせたりする手続きのことを言います。
自己破産を申し立てる人に目ぼしい資産があったような場合や、申し立てをする人にギャンブルや浪費などの問題行動(免責不許可事由)があった場合に「管財事件」で処理されるのが一般的です。
一方、「同時廃止事件」とは、申立人に目ぼしい資産がなかったり、浪費などの問題行動もないような場合に破産管財人を選任しないで簡単に「免責」を認めてしまう手続きになります(※自己破産の申立後に破産管財人に調査させずに申し立てと”同時”に手続きを”廃止(終了)”させてしまうことから「同時廃止」と呼ばれています)。
自己破産の手続きでは前述した「管財事件」で処理するのが原則的な取り扱いなのですが、全ての自己破産の申立案件を「管財事件」で処理しようとすると破産管財人になる人(多くの場合は裁判所から指定される弁護士)も不足してしまいますし、特段調査の必要性がない案件まで「管財事件」で処理してしまおうとすると申立人に無駄な費用や労力を使わせてしまうため問題となることから「同時廃止」で処理する扱いが運用されているのです。
なお、「管財事件」で処理するのが原則で「同時廃止」で処理するのが例外と書きましたが、実際の裁判所の運用では仮にギャンブルや浪費などの免責不許可事由があってもほとんどの案件は「同時廃止」で処理されるのが通常で、「管財事件」として処理されるのはそこそこの資産があったりギャンブルや浪費でもその程度が特にひどい場合などに限られているようですので、実際の運用面では原則と例外が逆転しており、「管財事件」で処理される方が例外的な取り扱いとなっています。
そして、裁判所が自己破産の案件を「管財事件」で処理すると決定した場合に裁判所に納めなければならない費用が、ここでいう「管財費用」ということになります。
② 管財費用の内訳
管財費用の内訳は、「破産管財人への引き継ぎ予納金」「郵便切手代」「官報公告費用」の3種類となります。
破産管財人への引き継ぎ予納金
破産管財人への引継ぎ予納金とは、破産管財人に調査や配当などをしてもらうために必要となる破産管財人に対する報酬のことをいいます。
前述したように、自己破産を申し立てした場合に裁判所がその案件を「管財事件」で処理すると決定した場合には、裁判所から破産管財人が選任されますが(※裁判所の管財人名簿に掲載されている弁護士から選任されます)、破産管財人もボランティアではありませんので、その破産管財人に対しても報酬を支払わなければならないことになります。
その報酬が「破産管財人への引継ぎ予納金」で、一般的な個人の自己破産ケースでは20万円が相場ですが、資産が多いような案件では30万円から50万円ほどを指定される場合もありますのでケースによって異なることになります。
郵便切手
裁判所が自己破産の申立案件を「管財事件」で処理することに決まった場合には、その管財事件の処理においても債権者に通知するための郵便切手を改めて裁判所に納付しなければなりません。
前述した(D)の「裁判所に納める自己破産の手続き費用」でも郵便切手を治めなければなりませんでしたが、その申立段階とは別に、破産管財人が選任された際にも別途郵便切手の納付が必要となります。
なお、この郵便切手代についても各地の裁判所によって異なっており、債権者の数に関係なく3,000円~4,000円程度の切手を申立時に納付させる裁判所もあれば、82円切手を債権者の数だけ納めさせる裁判所もあります。
官報公告費用
裁判所が管財事件として処理することを決定した場合には、前述した(D)の官報公告とは別に、自己破産の管財事件についての官報公告も必要となりますので、前述した(D)の官報公告費用とは別に改めて別個の官報公告費用を納付しなければなりません。
この官報公告費用は全国的に13,834円の裁判所が多いですが、一部の裁判所では16,550円に設定されているところもある様です。
③ 管財費用は管財事件になった場合には必ず納付しなければならない
なお、これらの管財費用は、裁判所がその自己破産の申立を管財事件で処理すると決定した場合には必ず納めなければなりませんので、弁護士や司法書士の事務所によって異なりませんし、仮に弁護士や司法書士に依頼せず自分で申立書を作成して申立を行っても必要になるものです。
ですから、この管財費用は何処の事務所に依頼しても同じですので、「仮に管財事件で処理された場合は最低でも22~3万円程度の管財費用が必要になる」ということを認識しておく程度でよいのではないかと思います。
事務所選びでチェックすべきポイントは?
以上のように、弁護士や司法書士に自己破産を依頼する場合の費用は「弁護士・司法書士に対する報酬」「成功報酬」「通信費や交通費などの実費」「裁判所に納める手続き費用」「破産管財人が選任された場合の管財費用」の5種類に分類されますが、そのうち「裁判所に納める手続き費用」「破産管財人が選任された場合の管財費用」についてはどこの事務所に相談しても同額ですから、実質的に異なるのは「弁護士・司法書士に対する報酬」「成功報酬」「通信費や交通費などの実費」の3つになるといえるでしょう。
- 弁護士・司法書士に対する報酬
- 成功報酬
- 通信費や交通費などの実費
- 裁判所に納める手続き費用
- 破産管財人が選任された場合の管財費用
ですから、弁護士や司法書士に自己破産を依頼する場合には、上記(A)や(B)(C)で説明したように、弁護士が費用として説明している「報酬」はいくらなのか、その「報酬」は債権者の数によって異なるのか、また「成功報酬」は発生するのか、実費は報酬とは別に支払わなければならないのか、といった点をよく精査しすることが必要です。
事務所によっては自己破産の報酬は安くても債権者の数が多くなると報酬が増額される場合がある反面、報酬自体が高くても債権者数に関係なく一定の金額に抑えられている場合もありますので、単なる弁護士や司法書士の「報酬」だけを比較するのではなく「債権者数によって変動する報酬」や「成功報酬」、「実費」なども含めた全ての「報酬」の合計を把握することが重要だと思います。
安さだけを追求することが良いとは限らない
なお、このページでは弁護士や司法書士事務所を選ぶ基準のうち、あくまでも「費用」という側面だけに焦点を当てて考察しただけであって、何も弁護士や司法書士を選ぶ際は報酬の「安い」事務所を選んだ方が良いという意味ではありません。
自己破産の手続きは弁護士や司法書士が依頼を受けた場合は依頼を受けて申立書を作成し申立を行うまで早くても2~3か月は必要ですし、その後も裁判所での審尋なども含めれば手続きが終了するまで最短でも半年間はかかるのが一般的です(管財事件になった場合は1年程度かかります)。
そのため、自己破産を弁護士や司法書士に依頼する場合には、その依頼した弁護士や司法書士と打ち合わせなどで長期間顔を合わせなければなりませんから、仮に費用の安い事務所に遺体で来たとしても、その事務所の弁護士や司法書士と性格的に合わなかったような場合には、長期間不愉快な思いをし続けなければならなくなるでしょう(※事務所で担当する事務員の良し悪しもありますが…)。
また、仮に報酬の安い事務所で引き受けてもらえたとしても、仮にその事務所の弁護士や司法書士(またはその事務所の事務員)が「申し立てが通ればOK」と考えているような人物であった場合には、十分な調査等をしないまま申立書を作成してしまい、本来であれば管財事件にしなくても良いケースまで裁判所が管財事件に回してしまうこともあるかもしれません。
そうなってしまうと、事務所の報酬が安かったとしても、払わないでよい管財費用を払わなければならなくなってかえって高くつくといったようなこともありますので、「安ければよい」という問題でもないでしょう。
ですから、弁護士や司法書士に自己破産の申立てを依頼する場合には、費用の安さも重要ですが、その弁護士や司法書士との相性や、その弁護士や司法書士の能力や事務所の方針等についても十分に説明を受けて納得できる事務所に依頼することが必要なのではないかと思います。