自己破産で親バレしてしまう10のケース

自己破産の申立を行う場合に一番懸念されるのが、親などに自分が自己破産することがバレてしまわないか、という点です。

自己破産の手続きは清算手続きの側面を有していますので、裁判所が資産調査のために実家に連絡を入れるかもしれませんし、親と同居している場合には自宅に調査にやってこないとも限りません。

また、弁護士や司法書士事務所に自己破産の手続きを行う場合には、弁護士や司法書士事務所からの連絡などで親にバレてしまうのではないかといった懸念もありますから、自己破産の手続きをする場合には「親バレしてしまわないか」という点が非常にセンシティブな問題として悩みの種となるのです。

この点、自己破産の手続きを行ったとしても、必ずしも親に連絡が入ったり親に事情聴取が行われるわけではありませんので、基本的には親バレすることがないまま自己破産の手続きを終了させることは勿論可能です。

しかし、自己破産の申し立てをする人の態様によっては、自己破産の手続きに親の協力が必要であったり、自己破産の手続きに親が関与しなければならないケースも存在しますから、そのようなケースでは親バレしてしまうことも避けられない場合も有るのが実情です。

では、具体的にどのようなケースでは自己破産をしていることが「親バレ」してしまうといえるのでしょうか?

ここでは、自己破産で「親バレ」してしまう代表的な10個のケースを特に厳選して紹介してみることにいたしましょう。

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1.親からお金を借りている場合

親からの借金がある場合には、自己破産する場合に「親バレ」してしまうことは避けられません。

なぜなら、自己破産の手続きではすべての債権者を裁判所に申告することが求められますから、たとえお金を借りている相手が自分の「親」であったとしても、その「親」を自己破産の「債権者」として裁判所に申告しなければならないからです。

自己破産の手続きで債権者として届け出たものについては当然、裁判所から自己破産に関する通知が送付されることになりますから、「親」を自己破産の債権者として裁判所に届け出た場合には、その「親」に対して裁判所から通知がなされることになります。

したがって、親からの借金がある場合には「親バレ」してしまうことは避けられないといえます。

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2.親にお金を貸している場合

「1.」とは反対に、親にお金を貸している場合も「親バレ」してしまう可能性があります。

なぜなら、自己破産の手続きは清算手続きの側面も有しているため、自己破産の申立人が保有する全ての財産が裁判所(破産管財人)によって処分され、その売却代金等が債権者に分配(配当)されるのが原則となっているからです。

この点、仮に親にお金を「貸している」状態であれば、その「親に貸しているお金」は「返してもらえるお金」として「資産価値」があると判断されますから、裁判所(破産管財人)が親に対して請求を行いその貸したお金を回収することになります。

そうすると当然、その親に自己破産の手続きを行っていることは知られてしまいますから、「親バレ」してしまうことは避けられないといえます。

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3.親が自分の借金の保証人になっている場合

親が自分の借金の保証人になっている場合も「親バレ」してしまうので注意が必要です。

借金に保証人が付いている契約では、その保証人は主債務者が返済をしない場合には主債務者に代わって返済をすることを約束していることになりますが、主債務者が自己破産をするということはそれ以後の返済を一切行わないことを意味しますので、保証人に対して残りの債務全額の請求がなされることになります。

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したがって、自分の親が保証人になっている借入がある場合には、自己破産の申し立てをすることによって親に債権者から一括請求がなされることになりますから、自己破産の手続きに入ったことが「親バレ」してしまうことは避けられません。

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4.親の借金の保証人になっている場合

また、親の借金の保証人になっている場合にも「親バレ」してしまうことは避けられません。

なぜなら、自己破産の申立を行う場合は自分がお金の借金の債権者だけでなく、自分が保証人となっている借金の債権者も「債権者」として裁判所に申告しなければならないからです。

自己破産の目的は裁判所から出される「免責の決定」によって全ての債務から逃れるところにありますが、その債務には自分が自身でお金を借りている債務だけでなく、自分が他人の借金の保証人となっている場合の保証債務も含まれることになります。

自己破産の免責が認められれば、保証人としての責任も逃れることになり、その債権者にとっては貸付金について保証人を失う結果となるため、自己破産の債権者として保証債務の債権者を記載し、保証債務の債権者に自分が自己破産をすることを申告する必要があるのです。

この場合、その保証債務の債権者は保証人に対して請求することができなくなってしまいますから、主たる債務者である「親」に対して「あなたへの貸付金の保証人が自己破産することになったから別の保証人を付けなさい」と請求することになるのが通常ですから、「親バレ」してしまうことになるのです。

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5.親と同居している場合

親と同居している人が自己破産する場合において、その親と同一の家計で生活費を賄っている場合には、自己破産の手続きに際して親に関する書類等を提出することが必要になります。

たとえば、同居の親と同じ家計で生活している場合には、親の給与明細書の写し(コピー)や住民票などが必要となりますし、親の預金口座から光熱費や自宅の家賃などが引き落とされている場合には、その親の通帳の写しについても添付しなければなりません。

また、賃貸マンション等であれば親の名前で契約している契約書の写しなども裁判所に提出しなければならないでしょう。

このように、同居の親と家計を一つにしている場合には、その同居の親に関する書類の提出が必要となりますから、親の協力を受ける際に親にバレてしまうことは十分考えられるでしょう。

この場合、自己破産をすることが知られないように注意して説明すれば、親に気付かれることなく手続きを進めることも可能でしょうが、気づかれないという保証はどこにもありません。

また、自己破産を依頼している弁護士や司法書士事務所、または裁判所などから郵便物が送られてくることもありますから、その際に「親バレ」してしまう危険せいもあります。

このように、親と同居している場合には、「親バレ」してしまう可能性はかなり高くなるといえます。

6.親が自分の名義で生命保険等を契約し保険料を払っている場合

自己破産の手続きでは、その保有するすべての資産が裁判所(破産管財人)に取り上げられて売却され、その売却代金が債権者に分配(配当)されるのが原則的な取り扱いとなりますので、たとえば生命保険の契約をしていてその解約返戻金が発生しているような場合には、その生命保険や破産管財人によって強制解約され、その払い戻される解約返戻金が債権者に分配(配当)されることになるのが通常です。

▶ 自己破産で生命保険が解約される場合と解約されない場合

この点、「親」が「子」の名義で生命保険を契約し「親」がその保険料の支払いを負担している場合にどのような扱いがなされるかが問題となりますが、このような場合も「子」の名義で契約がなされる以上、その生命保険契約において払い戻される解約返戻金は契約者である「子」に支払われることになりますから、「子」が自己破産する場合は「子の資産」として裁判所に届け出る必要があります。

もちろん、自己破産の手続きの過程でその解約返戻金の元となる保険料の支払いが全て「親」が行ったことを説明し「親」の財産であることを説明できれば裁判所や破産管財人が「子」の資産として債権者への配当原資にしないこともありえますが、いずれにしても「子」の名義で契約されている以上、裁判所の調査が入ることは避けられません。

このように、「親」が自分名義で生命保険を契約し、その保険の解約返戻金が発生している場合には、その解約返戻金を資産として裁判所に届けなければならないため、その保険の契約に関する書類等を裁判所に提出したり、保険の契約に至った経緯などを説明する必要がありますから、その際に自己破産していることが「親バレ」してしまう可能性はあるでしょう。

7.ローンで購入した商品を親が使っている場合

ローンで商品を購入した場合において、そのローンの支払い途中で返済ができなくなって自己破産する場合には、そのローンで購入した商品は債権者が引き揚げて中古市場で売却し、売却代金を弁済に充当するのが通常です。

ローンで購入した商品についてはローンが完済されるまでの間は債権者であるローン会社やその商品の販売会社に所有権が留保されているのが通常ですから、ローンを完済するまでは債権者の方でその商品を自由に処分してよいからです。

したがって、仮にローンで購入した商品を「親」にプレゼントしていたり、例えばローンで購入した車を「親」が使っているような場合などに自己破産してしまうと、その商品を使用している親に「商品を債権者に返さないといけない」と伝えなければならなくなりますので、その際に「親バレ」してしまう可能性はあるといえます。

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8.親の会社で役員に就いている場合

会社の取締役や監査役などの役員に就任している人が自己破産する場合、株主から株主総会で役員に選任された際の委任契約自体が当然に終了してしまいますから(民法第653条第2号)、自動的に取締役や監査役など役員としての地位を失うことになります。

▶ 会社の役員(取締役・監査役)が自己破産すると解任される?

この場合、会社としては取締役や監査役を失うことになりますので、臨時株主総会を開くなどして新しい取締役や監査役を選任する必要が生じます。

この点、仮に自己破産する人が「親」の会社の取締役や監査役として就任していた場合には、自己破産の手続きを取ることによってその「親」の会社における役員としての地位を失うことになりますから、その「親」の会社で新しい取締役や監査役を選任しなければならないということになります。

そうすると当然、その「親」の会社の実質的な経営者である「親」には自分が自己破産して役員としての地位を失うことになった経緯を説明しなければならなくなるでしょうから、自己破産することが「親バレ」してしまうことは避けられないといえます。

9.親との間で買掛金や売掛金がある場合

たとえば職人さんの世界では「親」の元で修業したのちに独立して個人事業主として働いているような人も多いのではないかと思いますが、このようなケースでは事業者としては別になる「親」との間で仕事上の取引が発生することもあるでしょう。

例えば、「親」から材料や仕入れたり、「親」から発注を受けた商品を納品するなどといった場合です。

このような事業主間の取引は会計上、「買掛金」や「売掛金」として処理されますが、このように「親」との間で「買掛金」や「売掛金」が生じている場合には、自己破産の手続きにおいて「親バレ」してしまうことは避けられません。

なぜなら、仮に「親」に対して「買掛金」がある場合には、その未払いになっている「買掛金」は自己破産の手続上「負債」と判断されますから、自己破産の申立書に「親」を「債権者」として記載しなければならず、その結果裁判所から債権者である「親」に対して自己破産の開始決定書等の通知が送付されてしまうからです。

▶ 自営業の自己破産で買掛金を手続きから除外することはできるか?

また、仮に「親」に対して「売掛金」が発生している場合には、その未回収の「売掛金」は「親」に対して請求できる「財産」となり、自己破産の手続きにおいては破産管財人が回収して債権者に配当されるべき「資産」と判断されますから、自己破産の手続上で裁判所から選任された破産管財人が”子の破産管財人”として「親」に対して請求を行うことになるでしょう。

▶ 売掛金を回収しないまま自己破産すると取引先にバレてしまう?

このように、自己破産の申立人が「親」に対して「買掛金」を負担していたり、「売掛金」を保有している場合には、それらが自己破産の手続上、負債や資産と認定されることによって「親バレ」してしまうことがあるといえます。

10.遺産分割が終わっていない場合

自分と「親」が相続人となっている相続財産があるにもかかわらず、その相続財産についての遺産分割協議が終わっていない状況で自己破産の手続きに入る場合には、「親」に自己破産の事実が知られてしまう可能性があります。

例えば、父・母・姉と4人家族で父が死亡した場合に、父の相続財産の遺産分割協議が住んでいないような場合です。

このような場合、配偶者である母と姉と自分が相続人となりますので、父の遺産については3人で遺産分割協議を行って誰がどれだけの遺産を相続するか決める必要がありますが、「子」のには相続財産の4分の1の相続分がありますので、その相続分については自己破産の手続き上「資産」と判断されます。

自己破産の手続き上で遺産分割未了の財産がある場合には、その相続人としての相続分について裁判所から選任された破産管財人が「その相続人の代理人」として遺産分割協議に参加することになるのが原則です。

そのため、仮にこのような場合には、破産管財人が自分に代わって母と姉との間で遺産分割協議を行うことになりますから、自己破産していることは「親バレ」してしまうでしょう。

最後に

上記以外にも、自己破産の手続きを行った場合に「親バレ」してしまう可能性はあると思いますので、以上はあくまでも一例と考えてください。

「親バレ」しないで処理できるケースも少なくはありませんが、上記のように特定のケースでは「親バレ」をある程度覚悟しておかないと自己破産の手続きがうまく進まない場合も有りますので、事案によっては事前に親に事情を説明するなどの対処も必要になるかもしれません。