自己破産するとエアコンや冷蔵庫などの家電も取り上げられる?

自己破産の手続きを行うに際して一番気になるのが、所有している財産を裁判所に取り上げられてしまうのではないか、という点です。

自己破産が裁判所で認められると「免責(※借金の返済が免除されること)」の手続きによって全ての借金の返済が免除されますが、その代わりに所有するすべての財産が裁判所(破産管財人)に取り上げられて売却され、その売却代金が債権者に配当(分配)されるのが原則です。

なぜなら、自己破産の手続きは借金の免除手続きであるとともに清算手続の側面も有していますから、申立人の全ての財産を弁済に充てても返済できない借金の支払いが「免責」によって免除されるにすぎないからです。

しかし、この場合に例えなエアコンや冷蔵庫や洗濯機など生活に必要不可欠な家電製品なども取り上げられるてしまうとなると、日常生活に支障をきたす恐れもあり生命の危機すら生じてしまい不都合です。

では、自己破産の場合には、実際にこれら日常生活に必要不可欠な家電製品等も取り上げられてしまうのでしょうか?

それとも、生活に必要不可欠な一定の財産の保有は認められることもあるのでしょうか?

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生活に必要不可欠な家電製品は取り上げられないのが原則

自己破産の手続きにおいて裁判所(破産管財人)に取り上げられる財産は法律上「破産財団」と呼ばれますが、この「破産財団」については破産法という法律の第34条(破産法第34条)に規定がなされており、「差押えが禁止される財産」については「破産財団」には「属しない」と規定されています。

【破産法第34条】

第1項 破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産(中略)は、破産財団とする。
第2項(省略)
第3項 第1項の規定にかかわらず、次に掲げる財産は、破産財団に属しない。
第1号  (省略)
第2号 差し押さえることができない財産(省略)。ただし、同法第132条第1項(省略)の規定により差押えが許されたもの及び破産手続開始後に差し押さえることができるようになったものは、この限りでない。
第4項(以下、省略)

したがって、生活に必要不可欠な家電製品等が自己破産の手続きで裁判所(破産管財人)に取り上げられるか否かは、「差し押さえることができない財産」に含まれるか否か、という点で判断されることになります。

この場合、「差し押さえることができない財産」に具体的にどのようなものが含まれるかという点が問題となりますが、「差し押さえることができない財産」については民事執行法の第131条で具体的に定められていますので、民事執行法131条を確認してみる必要があります。

民事執行法第131条では「債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具」が差し押さえてはならない財産として挙げられています(民事執行法第131条)。

【民事執行法第131条】

次に掲げる動産は、差し押さえてはならない。

  1. 債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具
  2. (以下省略)

この点、エアコンや冷蔵庫、洗濯機などの日常家電製品等の「生活に必要不可欠な家電製品等」が、この「債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具」に含まれるかという点が問題となりますが、地球温暖化やヒートアイランド現象が問題となる現在の日本ではエアコンがなければ熱中症などの危険性も生じますし、家事や育児に追われる現在の生活実態に即して考えれば冷蔵庫や洗濯機などの家電製品も日常生活で必要不可欠な家電製品と位置付けられることを否定する人はいないでしょう。

したがって、エアコンや冷蔵庫、洗濯機などの家電製品等も「生活に必要不可欠な家電製品等」と考えられ、「債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具」に含まれると判断されますので、自己破産の手続きによっても裁判所に取り上げられることはないと考えて差し支えないと思われます。

テレビなど娯楽目的の物も取り上げられないのが原則

以上のように、「生活に必要不可欠な家電製品等」は「債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具」に含まれると考えられますから、自己破産の手続きで裁判所に取り上げられることはないと判断されます。

ここで問題となるのが、テレビなどの娯楽を目的とした品物であったり、パソコンやスポーツ用具など、生活には直接関係がないような物品については、この「債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具」に含まれると考えてよいのか、という点です。

テレビやパソコン、スポーツ用具などは、衣食住に直接関係するものではありませんので、冷蔵庫や洗濯機などとことなり「無ければ無いで生活にはさほど支障は生じない」とも考えられますから、「債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具」には含まれないとされても文句が言えないような気がするからです。

しかし、一般常識的に考えてテレビはぜいたく品には当たらないでしょうし、現代の情報社会では情報の収集や買い物、公共料金の決済等にインターネット環境は欠かせない面もありますからパソコンがある家庭も普通ですし、健康で文化的な生活を送るためにはスポーツ用品等の所有も認められるべきでしょう。

したがって、現代社会の一般的な通常の感覚からすればテレビやパソコン、スポーツ用品などの物品も「債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具」と考えて差し支えないと考えられますので、そのような品物についても自己破産で裁判所(破産管財人)に取り上げられてしまうことはないと判断してよいと思います。

家電製品等でも取り上げられてしまう場合

以上のように、生活に必要なエアコンや冷蔵庫、洗濯機やテレビ、パソコンなど通常の一般家庭で使用されているような物については「債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具」に含まれるものとして自己破産の手続きで裁判所(破産管財人)に取り上げられることはないのが原則です。

しかし、あくまでもそれは原則的な取り扱いとなりますから、個々のケースによってそのような家電製品等であっても裁判所(破産管財人)に取り上げられてしまう可能性も否定できません。

例えば、冷蔵庫は生活に必要不可欠と考えられるため取り上げられないのが原則ですが、一般家庭では通常使用しないような冷蔵庫を自宅で使用しているなどのケースでは(例えば過去に飲食店を経営していた時期がありその時に使用していた冷蔵庫を自宅で使用しているような場合など)、その冷蔵庫の価格(時価)にもよりますが、生活に必ずしも必要ではないと判断されて自己破産の手続き上で破産管財人が取り上げて売却し、その売却代金が債権者に配当するようなこともあるかもしれません。

また、前述したように熱中症などの危険を考えればたとえ自宅の各部屋にエアコンが取り付けられていたとしても、自己破産の手続きでそのエアコンが取り上げられることはないと考えられますが、例えば自己破産の手続きに伴って自宅が競売や任意売却に掛けられることになり引っ越しを余儀なくされるような場合に引っ越し先では部屋数が少なくなるためエアコンを全て移転させる必要がないなどのケースでは、不要になったエアコンが裁判所(破産管財人)に取り上げられて売却されることはあるかもしれないでしょう。