自己破産した後の生活ではどのような変化が生じるか?

自己破産を検討している人のほとんどは「自己破産した後の生活はどのように変化するのか」という点が気になるようです。

自己破産すると所有している資産(財産)がすべて取り上げられて債権者への配当に充てられるのが原則ですし、信用情報機関に事故情報として登録されてしまうこと(いわゆる「ブラックリストに載る」ということ)によって新たな借り入れやローンの利用ができなくなりますから、自己破産後に安定した生活が送れるのか、という点に不安を覚えてしまうのでしょう。

では、実際のところ、自己破産をした後の生活にはどのような変化が生じうるものなのでしょうか?

ここでは、生活のシチュエーションごとに自己破産後の生活がどのように変化するものなのか、考えてみることにいたしましょう。

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「住居」は自己破産後に変化するか

自己破産後に「住居」に関する事柄に変化が生じるか、という点が気になりますが、基本的には自己破産しても「住まい」に関する事項が変化することはありません。

なぜなら、自己破産しても「賃貸契約」をすることは特別なケースでない限り差し支えありませんので自己破産したからと言って住まいを失うことは基本的に考えられないからです。

▶ 自己破産しても賃貸マンションや賃貸アパートを借りれるか?

もちろん、住宅ローンを抱えていたり持ち家がある場合などは自己破産の配当手続きのために自宅が取り上げられることはありますが、その場合であっても賃貸マンション等に引っ越せば何不自由なく暮らせるので、「住居」に関して生活に支障が出るような問題が生じることはないといえます。

「日常生活」は自己破産後に変化するか

「日常生活」についても自己破産したからと言って特別に変化することはありません。

自己破産しても買い物は普段通りにできますし、電車やバス、飛行機に乗ることも自由です。

パスポートが取り上げられることもありませんから海外旅行に行くことももちろん差し支えありません。

「経済活動」は自己破産後に変化するか

自己破産後の「経済活動」については若干の変化が生じます。

自己破産すると「JICC」や「CIC」「全国銀行協会」といった信用情報機関に5年から10年の間事故情報が登録されてしまいますから、その期間は新たな借り入れやローンの審査が厳しくなるため、日常生活で必要なお金はすべて自己資金で賄わなければならなくなるでしょう。

ただ、それは誰もがやっていることであって、ローンを利用せず貯金をして一括払いにすることは特別なことではないわけですから、ローンや借り入れに頼れないからといって生活が激変するわけではないでしょう。

ですから「経済活動」についてもさほどの変化はないといえます。

なお、銀行の預金口座であったり証券口座の開設や利用は自己破産後も問題なくできます。

「財産」は自己破産後に変化するか

自己破産する際に意外と気になるのが、所有している「財産」を取り上げられてしまうことだと思います。

この点、自己破産の手続きは債務者の資産(財産)と債務(借金)を清算する手続きであって、自己破産の免責を受けるためには所有している財産をすべて債権者への配当に充てるのが前提となりますから、所有している財産はすべて裁判所に取り上げられてしまうことになるのは避けられないといえます。

しかし、自己破産しなければならない人の場合は、その時点でめぼしい資産は売却したり差し押さえを受けて失っているのが通常ですから、自己破産の手続きで実際に財産が取り上げられるのはかなりのレアケースといえます。

また、仮にめぼしい財産がある場合であっても、「現金」であれば99万円まで、「現金以外の財産」については20万円までの資産については自由財産として保有が認められていますので、それを超えた資産を所有している場合でない限り資産に変動はないわけですから、自己破産したからと言って財産を奪われてしまう人はほとんどいないといえます。

このように、実際の手続きでは所有している財産を取り上げられるというシチュエーションはほとんどないわけですから、「財産」に関しても自己破産後に目立った変化はないということができます。

「仕事」は自己破産後に変化するか

自己破産後の変化で一番気になるのは「仕事」への影響だと思いますが、自己破産したからと言って「仕事」に変化が生じることは考えられません。

もちろん、会社からの借り入れを自己破産で処理した場合は会社に自己破産していることがバレてしまううえ、会社からの借金を返済しないことになるので会社での信用を無くして立場が危うくなる可能性はありますが、そのようなレアなケースでもない限り、自己破産していることがバレてしまうことは通常ありませんので自己破産したからと言って「仕事」に影響が生じることはないといえます。

▶ 自己破産が勤務先の会社にバレてしまう6つのケース

また、自己破産すると警備員や保険の外交員など一定の職種に就くことが制限されますが、自己破産の手続きが終了すれば「復権」してそのような職業制限は消滅します。

したがって、自己破産した後に職業制限が生じるということはありませんので、その意味でも自己破産したことで仕事に変化が生じることはないといえます。

「人間関係」は自己破産後に変化するか

自己破産した場合に意外と気になるのが周囲の人との人間関係に生じる変化ですが、基本的に自己破産したからといって周囲との人間関係に影響が生じることはないといえます。

もちろん、友人から借りた借金を自己破産で処理して免責を受けたようなケースではその友人に借金の返済を行わないことになるためその友人との関係性は切れてしまうかもしれませんし、親族に保証人や連帯保証人になってもらっているケースであればその親族に一括請求がなされることによって親族との関係性にトラブルが生じることもあるかもしれません。

しかし、そのようなレアケースでもない限り、友人や親せきなどに自己破産の影響が及ぶことはありませんし、自己破産していることが知られてしまうこともないわけですから、通常は自己破産したことで人間関係に影響が生じることはないといえます。

なお、自己破産すると官報に名前と住所が掲載されますが、官報を毎号チェックしている人は常識的に考えて皆無なので、自分が自己破産したことが周囲の人に知られてしまう可能性はほぼ0%といえます。

最後に

以上のように、冷静に考えてみると、自己破産後の生活が従前の生活と何ら変わりないものであることがわかります。

自己破産したからといって自己破産後の生活が激変してしまうことは常識的に考えてありえないわけですから、「自己破産した後の生活が心配だ」などと無駄なことを考えて無理な返済を重ねてしまわないように注意してもらいたいと思います。