自己破産で提出が義務付けられる必要書類には何がある?

自己破産の申し立てを行う場合には、自己破産の「申立書」を作成して裁判所に提出することが必要となりますが、その申立書には「添付書類」も合わせて提出することが義務付けられています。

この「添付書類」は、自己破産の手続きを弁護士や司法書士に依頼している場合にはある程度弁護士居や司法書士事務所の方で収集してくれるものもありますが、中には自分自身で収集しなければならない書類も含まれていますので、「具体的にどのような書類が必要となるのか」といった点について自己破産の申し立て前に知っておくことも無駄ではありません。

そこで、ここでは自己破産の申し立ての際に提出する必要書類(添付書類)には具体的にどのようなものがあるのか、またその収集方法はどのように行うのかといった点について大まかに解説してみることにいたしましょう。

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自己破産の手続きで必要となる書類

自己破産の手続きでは、次に挙げた添付書類を裁判所に提出することが必要になります。

  1. 取引履歴
  2. 引き直し計算書
  3. 住民票
  4. 銀行等の預金通帳の写し
  5. 収入を証明する書面
  6. 退職金に関する書類
  7. 保有する資産に関する書類
  8. 無資産証明書
  9. 登記事項証明書
  10. 評価証明書
  11. 所有する不動産の査定書
  12. 自宅の賃貸契約書
  13. 戸籍謄本および遺産分割協議書の写し
  14. 自営業者の確定申告書の控えの写し
  15. 自営業者の貸借対照表・損益計算書の控えの写し
  16. 自営業者の元帳または金銭出納帳などの帳簿類の写し
  17. 事業等に関する説明書
  18. 傷病のある場合の医師の診断書
  19. その他、裁判所から特に提出を求められた書類

(1)取引履歴

「取引履歴」とは、金融機関などの債権者が独自に作成しているもので、顧客との間で貸付と返済を繰り返した取引全ての履歴が表示されている一覧表のことを言います。

「取引履歴」はその債権者との間で具体的にどのような取引を行い、自己破産を申し立てる時点で具体的にどれだけの負債が残されているかを客観的に証明する資料となりますので、自己破産の手続きでは添付書類として提出が義務付けられているのです。

この「取引履歴」は、その金融機関と取引をしている顧客であれば誰でも発行を請求することができますが、通常は自己破産の手続きを受任した弁護士や司法書士の事務所が金融機関から直接取り寄せることになりますので、自己破産を申し立てる本人が金融機関から「取引履歴」を収集する必要はありません。

(2)引き直し計算書

「引き直し計算書」とは(1)で取り寄せた「取引履歴」に表示された過去の貸し借りを利息制限法所定の制限利率に基づいて再計算した結果を一覧表で表示させた計算書のことを言います。

金融機関との取引が比較的新しい契約のものについては、金融機関の方でも利息制限法に従った貸付を行っているため前述した(1)の「取引履歴」のみを添付すれば足りるのですが、2010年に出資法が改正される以前の取引についてはグレーゾーン金利の問題が発生することから(いわゆる「過払い金」の問題)、利息制限法に従って再計算すること(これを一般に「引き直し計算」と言います)が必要になります。

そのため、2010年前後に金融機関から借り入れがあった契約については(1)の「取引履歴」とは別に、その「取引履歴」を利息制限法に従って計算しなおした「引き直し計算書」の添付が必要となっているのです。

もっとも、この「引き直し計算書」についても、自己破産の手続きを弁護士や司法書士に依頼した場合には弁護士や司法書士事務所の方で作成してくれますので、申立人本人が作成する必要はありません。

(3)住民票

「住民票」は自己破産申立書に必ず添付が必要となる書類です。

この「住民票」は住民登録のある市町村役場で発行してもらえますが「世帯全員の記載のあるもの」が必要となりますので、発行手続きの際にその旨を役所の人に伝えて記載事項に省略のないものを間違いなく発行してもらう必要があります。

なお、弁護士や司法書士によっては職権で取得してくれる事務所もあるようですが、ほとんどの事務所では依頼人本人に取得してくるよう指示するのが通常ですので、自分自身で市役所等に取りに行くものだと思っておいた方がよいでしょう。

裁判所によっても若干の違いがありますが、一般的には自己破産の申立書を裁判所に提出する日の1か月前までに発行された住民票の添付が必要となっていますので、あまりにも早く取りすぎて無駄な手数料を出費しないように注意してください。

(4)銀行等の預金通帳の写し

自己破産の申立書には、自己破産を申し立てる時点で銀行や信用金庫、信用組合等の金融機関に開設しているすべての預金口座の通帳の写し(コピー)の添付が必要となります。

自己破産の申し立てをする時点で「閉鎖」していないのであれば、その口座にたとえ1円の残高がなかったとしても添付が必要となりますので、普段使っていない口座がないか十分に確認しておく必要があります(添付に漏れがあると「資産隠し」を疑われるので注意が必要です)。

ネットバンクの口座がある場合は通帳自体が存在していませんので、PC上に表示される過去の入出金履歴をプリントアウトするなどして提出することが必要になります。

なお、裁判所によって若干の違いがありますが、通常は過去2年分の入出金履歴が記載している通帳の写しがすべて必要となります。ですから、仮に1つの通帳に過去2年分の取引がすべて記載されていないような場合は、現在使用している通帳だけでなく更新する前の通帳の写しも必要となるので注意しましょう。

仮に通帳を扮してしまったような場合には、銀行の窓口で申請して銀行からその預金口座に関する「取引履歴」を発行してもらう必要がありますが、銀行によっては1ページあたり数百円の手数料を請求するところもありますので事前によく確認しておく必要があります。

また、一括記帳がなされて部分的に入出金履歴が省略された個所があるような場合にも、その一括記帳がなされた部分だけ銀行の窓口で「取引履歴」を発行してもらう必要がありますので注意しましょう。

ちなみに、この通帳の写しは通帳の表紙も含めて全てのページのコピーが必要で、コンビニでコピーを取ると結構な金額になりますので、弁護士や司法書士に依頼している場合は、事務所に自分の持っている通帳をすべて持参して事務所の方でコピーを取ってもらう方が何かとお得です。

(5)収入を証明する書面

自己破産の申立書には「収入を証明する書面」の添付が必要となります。

会社員やアルバイトなど、雇用されている被用者の場合には、勤務先から発行される給与明細書の写しを添付すればよいでしょう。

裁判所によっても異なりますが、一般的には自己破産の申立書を提出する日からさかのぼって過去3か月分の給与明細書の写しが必要となりますので注意が必要です。

給与明細書を紛失してしまっている場合は勤務先から再度発行してもらうか、銀行に振り込まれた際の通帳の写しを資料として上申書を作成し、その上申書で給与明細書の写しが提出できない理由を説明するしかありませんので、依頼する弁護士や司法書士とよく協議する必要があります。

(※雇い主が通常から給与明細書を発行していないようなケースも、その給与明細書が発行されない事情を上申書に記載して裁判所に提出する必要がありますの、事前に弁護士や司法書士とよく協議しておく必要があります)

なお、自営業者の場合は市役所等で発行される所得証明書の原本を提出する必要があります。

(6)退職金に関する書類

勤務先の会社が退職金を支給する会社である場合には、自己破産の申立書に「退職金に関する書類」を添付する必要があります。

これは、自己破産の手続きでは実務上、将来取得する可能性のある退職金の8分の1に相当する金額を債権者への配当に充てる取り扱いにしていることに由来します。

具体的には「現時点で退職した場合に受け取ることのできる退職金の金額」が記載されている「退職金の見込み額証明書」を会社から発行してもらい、その「退職金の見込み額証明書」を裁判所に提出することになります(「退職金の見込み額証明書」のひな型は弁護士や司法書士事務所が用意してくれます)。

なお、会社に対して「退職金の見込み額証明書」を作成するように頼むと自己破産の手続きをしていることがバレてしまうという不安がある場合は、「退職金の見込み額証明書」に代えて「退職金規定の記載されている就業規則」の写しを提出しても構いません。

「退職金の見込み額証明書」も「退職金規定の記載されている就業規則」の写しも提出することができないような特別の事情がある場合は、そのような書類が添付できない事情を上申書に詳細に記載して裁判所に提出し裁判官の理解を求めるしかありませんが、その場合は弁護士や司法書士が必要に応じて上申書を作成してくれるのが通常ですので、退職金関係の書類の提出が困難なケースでは事前に弁護士や司法書士とよく協議しておく必要があるでしょう。

(7)保有する資産に関する書類

自己破産の手続きでは保有する資産は自由財産に含まれるものを除いてすべて裁判所に取り上げられて債権者への配当に充てられるのが基本的な取り扱いとなっていますので、保有する資産がある場合にはその資産に応じて各別にその資産価値を示す資料を添付書類として提出する必要があります。

例えば自動車の場合には「車検証の写し」と「2社以上の中古車販売店の査定書」が、生命保険の解約返戻金がある場合には「保険証券の写し」と保険会社から発行してもらう「解約返戻金見込み額証明書」などがそれにあたります。

なお、具体的にどのような書類が必要になるかは資産の種類や現状などによっても異なりますので、詳細は自己破産の手続きを依頼する弁護士や司法書士に訪ねればよいでしょう。

(8)無資産証明書

自己破産の申立書には原則として「無資産証明書」を添付する必要があります。

「無資産証明書」とは、市町村役場の固定資産税課で発行している「その自治体に所在する土地や建物の名義人にはなっていませんよ」という証明書のことを言います。

簡単にいうと「あなたがこの自治体に土地や建物といった不動産を一切所有していないことを証明します」ということが書かれている証明書のことです。

土地や建物などの不動産は自己破産の手続きでは「資産」として扱われ、裁判所に取り上げられて競売され競売代金が債権者への配当に充てられるのが原則ですので、「不動産を一切所有していない」人が自己破産する場合は「私は不動産を一切所有していないですよ」ということを裁判所に認めてもらうためにこの「無資産証明書」の添付が必要となるわけです。

なお、「無資産証明書」はそれが発行される年の1月1日時点でその自治体に所有権名義の不動産があるかないかで判断されますので、自己破産を申し立てる日の属する年の1月1日以降に他の自治体から転居してきている場合には、全住所地の発行する「無資産証明書」の添付も必要となるので注意が必要です。

もっとも、具体的にどの自治体の無資産証明書が必要かという点は自己破産の手続きを依頼する弁護士や司法書士が的確に指示してくれますので、申立人自身が頭を悩ます必要はありません。

ちなみに、もし仮に不動産を所有している場合はこの「無資産証明書」は発行されませんから、後述する不動産の「登記事項証明書」や「評価証明書」を添付することになります。

(9)登記事項証明書

自分が所有権者となっている不動産がある場合には、その所有者名義になっている土地や建物の「登記事項証明書」の提出が必要になります。

「登記事項証明書」は最寄りの法務局に行けば発行してもらえますが、インターネットからも交付(プリントアウト)を受けることが可能です(※もちろん有料です)。

仮に自分名義になっていなくても、相続している不動産がある場合(相続人になっているものの相続登記が済んでない不動産がある場合)にはその「登記事項証明書」も必要となりますので、先祖の土地などに相続が発生していないか親などに確認する必要があります。

なお、単独の所有ではなく共有名義となっている場合(例えば所有権の〇分の1の名義人になっている場合など)であっても「登記事項証明書」の添付は必要となりますので注意が必要です。

(10)評価証明書

自分名義の不動産がある場合には、その不動産に関する「評価証明書」の添付も必要です。

評価証明書はその不動産の所在する市町村役場の固定資産税課で発行してもらうことが可能です。

(11)所有する不動産の査定書

所有する不動産が売却して配当に充てられる程度の資産価値がある場合には、その不動産の資産価値について不動産業者が見積もりを行った査定書の添付も必要となります。

具体的にどのような状況の不動産が「売却して配当に充てられる程度の資産価値がある」と判断されるのか、その判断基準は各裁判所によって異なりますので、自己破産を依頼する弁護士や司法書士に「査定書が必要か否か」を判断してもらい、必要であれば不動産業者に査定してもらう必要があるでしょう。

(12)自宅の賃貸契約書

賃貸マンションや賃貸アパート、市営住宅など賃貸物件に居住している場合には、「賃貸契約書」の写しを添付する必要があります。

賃貸契約書は表紙から署名押印の欄まですべてのページのコピーが必要となりますので、依頼する弁護士や司法書士の事務所に原本を持参してコピーを取ってもらう方が無難です。

なお、この場合に添付が必要となる賃貸契約書は、自分が居住している物件だけでなく、居住していなくても自己破産する人が契約者の名義になっている賃貸物件の契約書はすべて必要となりますので注意が必要です。

例えば。大学生の子供が独り暮らしをしているアパートの契約者が「親」になっている場合にその「親」が自己破産する場合には、その「親」の自己破産申立書に大学生の子供が居住しているアパートの賃貸借契約書の写しも添付書類として提出する必要があります。

(13)戸籍謄本および遺産分割協議書の写し

自己破産を申し立てる人に関して相続が発生しているような場合は、その相続に関する戸籍謄本の添付が必要になります。

例えば、自己破産を申し立てる人の親が申立前に死亡し、その死亡した親に何らかの資産があるような場合は、その親の戸籍謄本(または除籍謄本など)と自己破産する申立人の戸籍謄本をそれぞれ添付しなければなりません。

これは、相続が発生したことによって被相続人の資産が相続人である自己破産の申立人に引き継がれることになりますが、その相続の事実を客観的に証明するため戸籍謄本の記載で相続人である地位があることを証明する必要があるからです。

なお、遺産分割協議がすでに行われている場合には、その際の遺産分割協議書の写しも提出する必要があります。

(14)自営業者の確定申告書の控えの写し

自営業者が自己破産する場合には確定申告書の控えの写し提出が必要です。

裁判所によって異なりますが、基本的に過去3期分が必要となります。

(15)自営業者の貸借対照表・損益計算書の控えの写し

また、自営業者が自己破産する場合には、確定申告の際に作成した貸借対照表や損益計算書の写しも提出が必要になります。

こちらも裁判所によって異なりますが、基本的に過去3期分の提出が必要となると考えておいた方がよいでしょう。

(16)自営業者の元帳または金銭出納帳などの帳簿類の写し

自営業者が自己破産する場合には、元帳や出納長など帳簿類の提出も必要となるので注意が必要です。

これも裁判所によって異なりますが、過去3期分の帳簿類の提出を求められるのが通常です。

なお、帳簿類を紛失してしまっている場合には、その旨を上申書に記載して裁判所に提出し、裁判官や破産管財人の調査に任せるしかないと思います。

(17)事業等に関する説明書

裁判所によっても異なりますが、自営業者や会社役員が自己破産する場合には「事業に関する説明書」の提出を求められることが多いです。

「事業に関する説明書」には、その事業で具体的にどのような事業を営んでいたのか、売掛金や買掛金はあるのか、どういった会社の資産が残されているのか、といった点を詳細に記載することになるのが通常です。

この説明書のひな型は、提出を求める裁判所で配布していますので、弁護士や司法書士に自己破産の手続きを依頼する場合は、その依頼した弁護士や司法書士から具体的な書き方のレクチャーも受けられると思います。

(18)傷病のある場合の医師の診断書

自己破産の申し立てをする時点で何らかの傷病に罹患している場合には、裁判所からその傷病に関する医師の診断書を求められることがあります。

自己破産の手続き中に入院が必要な場合であったり、裁判所への出廷が困難な精神状況にある場合(例えばうつ病など)には、医師の診断書を提出することで手続きが簡略化されたりする場合もありますので、裁判所から亭主を促された場合には速やかに提出するほうが無難です。

なお、医師が診断書を作成する場合は封筒に封印して患者に渡すケースもありますので、その場合は封印を解かずにそのまま裁判所に提出するようにしてください。

(19)その他、裁判所から特に提出を求められた書類

自己破産の申立書に添付が必要となる書類は代表的なものとしては上記のようなものになりますが、案件によってはそれ以外の書類も添付が必要な場合もありますので、自己破産を依頼する弁護士や司法書士、あるいは裁判所の裁判官や書記官、破産管財人の指示などに従って速やかに提出するように心がけてください。

最後に

以上のように、自己破産の手続きでは様々な書類が必要となりますが、自己破産の手続きを弁護士や司法書士に依頼する場合は、すべて弁護士や司法書士から詳しく説明してもらえますので、自己破産の申し立て前に「自己破産するときは何が必要なんだろう」などと深く考える必要は全くありません。

大切なのは、返済が滞った時点で速やかに弁護士や司法書士に相談し、自己破産の手続きがスムーズに進行できるように十分な準備を整えることですので、早めに弁護士や司法書士に相談し、適切な対処を取ってもらうことがなによりも必要といえるでしょう。