自己破産の申立をする場合には、申立前に負担した債務は全て返済を停止し、その債務にかかる債権者を裁判所に申告しなければならないのが原則です。
なぜなら、自己破産の手続きではすべての債権者を平等に扱わなければならないという債権者平等の原則が働くため、特定の債権者だけを自己破産の手続きから除外することは認められないことになっているからです。
ところで、ここで疑問が生じるのが、通信販売で購入した商品の請求書が自己破産の申し立てをした「後」に届くような場合の支払いはどのようにすればよいのかといった点です。
通信販売で商品を購入した場合には、購入した後に業者から振込用紙が送られてきてコンビニなどで後払いで支払うこともありますから、自己破産の申し立て「前」に購入した商品の請求書が自己破産の申し立てをした「後」に届いた場合、その支払いをしてよいのかといった点が問題となるのです。
では、このように自己破産の「申立前」に通信販売で購入した商品の請求書(振込依頼書)が自己破産の「申立後」に届いた場合、その支払いをしても良いのでしょうか?
自己破産の「申立前」に購入した商品の支払いを「申立後」にするのはNG
結論からいうと、通信販売に限らず、自己破産の「申立前」に購入した商品の代金を自己破産の「申立後」に行うことは基本的に認められません。
なぜなら、自己破産の申立前(※正確にいうと裁判所から自己破産の開始決定が出されるまで)に支払い義務が発生している債務については、その全ての支払いを停止して裁判所に自己破産における債務として申告することが義務付けられるからです。
確かに、通信販売などでは商品を購入してから数日(又は数週間)後に請求書や振込伝票などが送られてくることがありますが、商品の購入契約をした時点で代金を支払わなければならないという「債務」自体は確定していますから、たとえ代金の請求(支払い)が自己破産の申立後になされるとしても、自己破産の手続きでは「負債」としてその金額を届け出なければなりません。
ですから、このように自己破産の「申立前」に購入している限り、その通信販売で購入した商品の代金も自己破産における負債として裁判所に届け出る必要がありますので、たとえ「申立後」に請求書や振込伝票が送られてきたとしても、その支払いはしてはならないことになります。
※ただし、その購入した商品が生活に必要不可欠なもの(例えば食料とか)の場合には支出が認められる場合もあります。
弁護士や司法書士には報告すること
なお、自己破産の申立前に購入した商品の請求が自己破産の申立後になされるような支払がある場合には、自己破産の手続きを依頼する弁護士や司法書士に報告しておかなければならないことは十分留意してください。
自己破産の依頼を受けた弁護士や司法書士はその依頼人の全ての債務を把握したうえで申立書を作成しなければなりませんので、自己破産の申し立てをする時点で債務が発生しているのであれば、たとえその請求が申立後になされるものであってもその存在を任しておかなければ正しい申立書の作成ができなくなってしまいます。
ですから、弁護士や司法書士依頼する場合は、その時点で請求が来ている債務だけでなく、将来請求が来ることが明らかな債務についても全て申告する必要があることは十分理解しておく必要があるといえます。