任意整理とは、弁護士や司法書士に代理人になってもらい、債権者と個別に交渉して利息のカットや債務額の減額、分割返済の和解を取り結んでもらう手続きのことを言います。
債務整理で代表的な自己破産や個人再生手続は裁判所に申立を行う手続きであり、その効力は全ての債権者に対して強制力と持つことになりますから、一部の債権者だけを除外して手続きを進めることはできません。
しかし、任意整理は自己破産や個人再生とは異なり、任意整理は裁判所に申立を行う必要がなく強制力はありませんので、一部の債権者だけを対象として任意整理を行うことも可能です。
たとえば、A社・B社・C社の3社から借り入れがある場合に、C社からの借り入れを除外してA社とB社からの借金だけを任意整理することも可能なのです。
ところで、ここで疑問が生じるのが、別々の債権者ではなく、一つの債権者から複数の借り入れがある場合に、その一部の借り入れについてだけ除外して任意整理をすることができるのか、という点です。
クレジット会社の多くでは、カードローンとは別に車のローンなども貸し付けている場合がありますので、たとえばカードローンの返済が困難になった場合に、車のローンはそのままにしてカードローンでの借り入れだけを任意整理で処理してもらいたいと考えることもあるかもしれません。
このような場合、車のローンだけを除外してカードローンによる借り入れだけを任意整理することは可能なのでしょうか?
カードローンを任意整理すると車のローンも停止してしまうのが通常
同一のクレジット会社からカードローンと車のローンを借り入れている場合には、契約上はカードローンに関する「金銭消費貸借契約」と車の購入に関する「ローン契約(立替払い契約・割賦販売契約)」の2種類の契約がなされていることになります。
この場合に弁護士や司法書士に依頼してカードローンの契約だけを任意整理しようとすると、原則として車のローン契約の方も取引が停止してどちらも任意整理の対象となるのが原則的な取り扱いとなります。
クレジット会社は、弁護士や司法書士から「債務整理を開始しますよ」という受任通知が到着した時点でその利用者に対する請求を停止しなければなりませんから、カードローンと車のローンの2種類の契約で借り入れをしている場合にはその両方の取引が停止されてしまうことになるのです。
車のローンの返済を継続したい場合は車のローンを除外する旨の通知を送ってもらう必要がある
前述したように、同一のクレジット会社からカードローンと車のローンの2種類の借り入れを行っている場合には、カードローンについて債務整理しようとすると、車のローンまで請求がストップされることになり取引が停止してしまうのが通常の取り扱いです。
もっとも、このような場合に車のローンだけを返済し続けることができないわけではありません。
同一のクレジット会社からカードローンと車のローンを借り入れている場合において、車のローンだけを任意整理から除外して処理してもらいたい場合には、任意整理を依頼した弁護士や司法書士から「除外通知(※事務所によって通知の名称は異なります)」を発送してもらうことによって車のローンだけを除外して任意整理をしてもらうことも可能だからです。
もちろん、この場合には事前に弁護士や司法書士に対して任意整理を依頼するクレジット会社についてカードローンとは別に車のローンがあることを申告し、車のローンだけは今後も払い続けたいので任意整理から除外してもらうようお願いしておくことが必要ですので忘れないように注意が必要です。
何も言わないで任意整理を依頼してしまうと受任通知だけを発送されて車のローンの取引まで停止してしまうので気を付ける必要があります。
債権者によっては車のローンの除外に応じないことも
以上で説明したように、同一のクレジット会社からカードローンと車のローンがある場合であっても車のローンを除外してカードローンからの借り入れだけを任意整理することも可能です。
しかし、任意整理は裁判所が関与しない強制力(拘束力)のない私的な手続きですから、債権者によっては車のローンを除外することに同意しない場合もあり得ます。
ほとんどのクレジット会社では車のローンなどを切り離して任意整理に応じてくれるとことが多いですが、借り入れ状況や返済の状況、車の現況などによってはクレジット会社が車のローン等の除外に応じない場合も有るので注意が必要でしょう。
他の債務の状況によっては車のローンだけを除外できない場合も有り得る
以上のように、同一のクレジット会社からカードローンと車のローンがある場合には、相手方のクレジット会社が承諾するのであれば除外通知を出すことで車のローンだけを任意整理の手続きから切り離すことも可能です。
しかし、これはあくまでも「可能」というだけであって、すべての案件で車のローンを除外して任意整理できるわけではありません。
借金額が多額に渡り、車のローンを除外して任意整理で処理する返済原資が確保できないような場合には、車のローンも含めた全体を任意整理(もしくは個人再生、自己破産など)しなければならない場合も有り得るでしょう。
この判断については依頼する弁護士や司法書士と相談のうえ決めなければなりませんが、弁護士や司法書士が家計状況を聴取して車のローンを支払い続けるのは困難と判断するようであれば、車のローンの返済はあきらめて、車のローンも含めたすべての借金を整理しなければならないこともあるということは認識しておくべきではないかと思います。