任意整理で弁護士や司法書士に辞任されてしまう4つのケース

弁護士や司法書士に依頼して、債権者との間で借金の減額や利息のカット、長期の分割弁済の協議を代行してもらう手続きを「任意整理」といいます。

任意整理はほとんどの弁護士や司法書士事務所で扱っていますから、ネットなどで適当な弁護士や司法書士事務所を探して相談すればごく簡単に依頼することが可能です。

このように、任意整理の手続き自体は多くの弁護士や司法書士事務所で取り扱っているため任意整理を「依頼」すること自体は簡単なのですが、任意整理を依頼した後であっても依頼した弁護士や司法書士に対して不誠実な対応をとったり、迷惑を及ぼすような行為を繰り返してしまうと、弁護士や司法書士から一方的に契約を解除(解約)され「辞任」されてしまうこともあり得ます。

では、具体的にどのような行動をとっていると任意整理を依頼した弁護士や司法書士から「辞任」されてしまうのでしょうか?

ここでは、任意整理を依頼した後に弁護士や司法書士から辞任されてしまう代表的な4つのケースについて具体例を示して解説してみることにいたしましょう。

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任意整理を依頼した弁護士・司法書士から辞任されてしまう場合

(1)着手金、報酬を支払わない

任意整理を依頼した弁護士や司法書士から辞任されてしまう代表的なパターンとしては、弁護士や司法書士に支払わなければならない着手金や報酬を支払わないケースです。

多重債務問題などの債務整理案件では、着手金や報酬、手続き費用などを「分割払い」にしてくれる事務所も最近は多くなりましたが、これらの弁護士・司法書士費用を分割払いで支払う契約にしている場合には、任意整理の手続きが行われている最中に毎月定められた金額を弁護士や司法書士事務所に送金しなければなりません。

この毎月の送金を怠っていると、弁護士や司法書士から辞任されてしまうことがあります。

弁護士や司法書士もボランティアで仕事をしているわけではありませんし、弁護士や司法書士も仕事の報酬で食べていかなければならないわけですから、報酬を支払はない依頼人の仕事を継続することはできません。

また、毎月定められた金額を弁護士や司法書士事務所に送金できないということは、仮に任意整理で債権者との間で分割弁済の和解が整ったとしても、その任意整理の協議で合意された返済計画に従って毎月の支払いができないのは容易に推測することができますから、そもそも任意整理の手続きをすること自体意味がないでしょう。

このように弁護士や司法書士の報酬を支払わない場合には、即時にということはないにしても、いずれは弁護士や司法書士から辞任されてしまうことになるので注意が必要です。

(2)連絡が取れなくなる

任意整理を依頼した弁護士や司法書士から辞任されてしまうケースで一番多いのが、依頼人との連絡が付かなくなるケースです。

意外に思うかもしれませんが、このように弁護士や司法書士に任意整理を依頼した後に連絡が付かなくなり行方不明になってしまうケースは意外と多く、私の過去の経験からすると10~20人に1人ぐらいの割合で連絡が付かなくなっていしまう人がいます。

依頼人と連絡が付かなくなると当然、それ以降債権者と交渉をすることもできませんから、弁護士や司法書士に辞任されてしまうのは避けられません。

なお、このように連絡不能になって弁護士や司法書士が辞任した場合であっても、その弁護士や司法書士の仕事の進捗状況によっては辞任するまでに発生した報酬や費用は支払う義務が生じますので、弁護士や司法書士事務所に任意整理を依頼した後に「ばっくれた」場合には、「債権者に対する借金」以外に「弁護士や司法書士に対する借金」も加算されてしまうことになるので注意が必要です。

(3)嘘ばかり申告している

任意整理を依頼した弁護士や司法書士に対して嘘の申告を繰り返している場合には、依頼した弁護士や司法書士から「信頼関係が構築できない」とか「信頼関係が破たんした」という理由で辞任されてしまうことがあります。

任意整理の手続きは債権者との間で分割払いの交渉をしなければなりませんので、その交渉に挑む前提として依頼人である債務者本人の「収入」や「家計支出」など家計の状況を正確に把握する必要がありますが、その聴取の際に本人から嘘の申告がなされてしまうと、事実と異なる情報をもとに債権者と交渉をせざるを得なくなってしまいます。

しかし、仮に嘘の情報をもとに債権者と交渉をして分割弁済の協議が整ったとしても、いずれ分割弁済が破たんしてしまうのは明らかです。

その案件だけならそれでもかまいませんが、弁護士や司法書士事務所自体が債権者側から「あそこの事務所で任意整理した案件は途中でダメになる」というレッテルを張られてしまう可能性がありますし、いい加減な家計調査しかしていないと認定されてしまうと他の事件処理にまで影響しかねません。

このように、依頼人である債務者から嘘の申告が度重なると、誠実な事件処理ができなくなってしまいますから、弁護士や司法書士から辞任されてしまうこともあるといえます。

(4)弁護士や司法書士に依頼した後も借り入れを繰り返す

弁護士や司法書士に任意整理を依頼した後に債権者からの借り入れをしてしまう依頼人も弁護士や司法書士から辞任されてしまうケースの典型例です。

弁護士や司法書士に任意整理を依頼するもしくは相談するということは、その時点で「もうこれ以上契約通りに返済することはできない」ということを自分自身で認識していることになります。

なぜなら、契約通りに返済できるのであれば、そもそも弁護士や司法書士に相談に行くことはないからです。

それにもかかわらず、弁護士や司法書士に任意整理を依頼した後に債権者からお金を借りるということは「これ以上返済はできない」ということを認識しながら「お金を借りる」ことに違いないでしょう。

これは「詐欺」そのものといえます。

金融機関から「お金を借りる」という行為は、「借りたお金は必ず返しますよ」ということが大前提としてあるわけで、「これ以上返済できない」ということを認識していながらそれでもなお「お金を借りる」行為は「返すつもりがない」のに「必ず返しますよ」と嘘をついて「お金を借りている」ことになるのは明らかですから、それはすなわち金融機関から「お金を騙し取る」行為そのものといえます。

仮にこの行為を弁護士や司法書士が認めてしまうと、その弁護士や司法書士は「詐欺の片棒」を担ぐことになりかねませんから、任意整理を受任した後に借入を繰り返すような依頼人は辞任してしまうことになります。

弁護士や司法書士事務所に任意整理を依頼する場合には、弁護士や司法書士から「以後は絶対に借り入れはしないように」と念を押されるのが通常ですが、そのような弁護士や司法書士の忠告は必ず守らなければならないと自覚する必要があります。

最後に

以上のように、弁護士や司法書士に任意整理を依頼した場合であっても、不誠実な対応を取り続けている場合には、弁護士や司法書士から辞任されてしまうこともあるのが実情です。

もっとも、弁護士や司法書士も鬼ではないので実際に辞任してしまうケースはあまり多くはないと思いますが、「どうせ辞任まではしないだろう」と高をくくっていると思わぬ時期に辞任されてしまい自分自身が大きな不利益を受けてしまうので、いったん任意整理を依頼した弁護士や司法書士には出来得る限り誠実な対応を心掛ける必要があるといえるでしょう。