親の自己破産が子供の学校に知られてしまう3つのケース

子供を持つ親が自己破産する場合に意外と気になるのが、自己破産すると子供の学校に自己破産したことが知られてしまうのではないかという点です。

親が自己破産したことが学校で噂として広まったり、子供の内申に悪い評価を与えることを懸念して、自己破産の事実が学校に知られてしまうのを極端に恐れてしまうことがあるのです。

もっとも、実際には自己破産した事実が子供の通う学校に知られてしまうことは基本的にありません。

なぜなら、自己破産の手続きは「自己破産の申立人」が負担する債務と申立人が所有する資産を清算する手続きであって、子供が通う学校とは何ら関係しませんから、親の自己破産の事実が子供の通う学校に知られてしまう可能性は通常考えられないからです。

ただし、これはあくまでも原則的な場合の話であって、例外的に子供の学校に知られてしまうことが全くないわけではありません。

次に例示するような3つのケースでは、親が自己破産した場合にその事実が子供の通う学校に知られてしまう(裁判所から通知されてしまう)ことになりますので注意が必要です。

広告

(1)学費等の滞納がある場合

親が自己破産の申立を行う場合に、子供の通う学校の学費を滞納している場合には、その学校に自己破産の事実が知られてしまう場合があります。

なぜなら、子供の通う学校の学費は「親」にその支払い義務があるのが通常ですから(※大学の場合は子供自身で学費を負担している場合もありますが…)、未払い分の子供の学費は「親の負債」となり、自己破産の申立書に「負債」として申告する必要があるからです。

未払い分の学費を負債として自己破産の申立書に記載する場合には子供が通う学校が自己破産の手続きにおける「債権者」となりますので、裁判所から子供の通う学校に「開始決定」などの通知が送付されることになり、自己破産することが知られてしまうことになるでしょう。

【公立学校の場合は「学費」の債権者は「都道府県」や「市町村」になるのではないか?】

公立高校の場合は「都道府県」や「市町村」が運営主体となるため、「未払い分の学費」の債権者も「その学校」ではなく「都道府県」や「市町村」になるから自己破産の申立書に「学校」を債権者として記載する必要はないのではないかという点に疑問が生じる人もいるかもしれません。

しかし、学費については各学校に直接納付するのが一般的だと思いますので、その徴収権限も各学校に委任されているのが通常ですから、自己破産申立書の債権者一覧表には「債権者」として学校の名称と住所を記載するのが実務上の取り扱いになろうかと思います。

(※正確には債権者の欄に「〇〇県立〇〇高校(債権者は〇〇県)」などと記載したり備考の欄に「本来の債権者は〇〇県」などと記載する場合が多いと思います)

そうすると当然、裁判所からの通知も「都道府県(庁)」や「市町村(役場)」ではなく「学校」に送付されることになりますので、公立高校であっても子供が通う学校に自己破産の事実が知られてしまうものと考えられます。

(2)給食費の滞納がある場合

子供の通う学校に給食費の未納分がある場合も同様です。

子供の通う学校における給食費はその「親」に支払い義務がありますので、その「親」が自己破産する場合にはその「給食費の未払い分」は自己破産における「負債」となり、その子供が通う学校が自己破産における「債権者」となります。

そうすると、前述した学費の滞納分と同様に裁判所から子供が通う学校に自己破産の開始決定等の通知書がソウルされることになりますので、子供が通う学校に自己破産の事実が知られてしまうことになるでしょう。

(3)PTA会費の滞納がある場合

PTAの会費に未払い分がある場合も(1)(2)の場合と同様に考えることができます。

PTAの会費も学校に納付するのが一般的だと思いますので、それに未納分がある場合は学校を債権者として自己破産の申立書に記載する必要がありますから、裁判所から学校に自己破産に関する通知書が送付される結果、子供の通う学校に自己破産した事実が知られてしまうことになるでしょう。

「学費」「給食費」「PTA会費」の未納分を自己破産の手続きから除外したり自己破産前に弁済してしまうことは可能か?

以上のように、「学費」や「給食費」「PTA会費」などに未納分がある場合には子供が通う学校に自己破産の事実が知られてしまうことになると考えられます。

この点、これを防ぐためにその未納分の存在を隠して申立書に記載せずに自己破産の申立を行ったり、自己破産の申立前にその未納分だけを支払って債務を消滅させて申立てを行うなどの方法を行うことも考えられますが、そのように一部の債権者を手続きから除外したり、一部の債権者の債務だけを返済してしまうのは免責不許可事由に該当するため基本的には好ましい方法とは言えないでしょう。

▶ 自己破産で一部の債権者だけを除外することはできるか?

もっとも、「学費」や「給食費」「PTA会費」などの未納分の金額がそれほど多くない場合には、免責不許可事由に該当することを承知で申立前に弁済し、学校に対する債務を消滅させたうえで申立てを行うケースもあります。こうすれば学校対する債務はなくなるため学校を債権者として裁判所に申告する必要がなくなるからです。

ただし、このような場合は当然、免責不許可事由に該当することになりますので、裁判官から「裁量免責」を受ける必要がありますので手続きが煩雑になることは受け入れなければならないでしょう。

▶ 自己破産で一部の債権者だけを除外することはできるか?

子供の通う学校に知られると噂が広まるか?

以上のように、「学費」や「給食費」「PTA会費」に滞納がある場合には学校に自己破産の事実が知られてしまうことになりますが、だからと言って学校の先生が自己破産したことを学校中に言いふらさない限りそのことが他の生徒や児童に知られることはないと思いますし、子供の内申に悪い評価を与えるということも通常は考えられないでしょう。

ですから、「学費」や「給食費」「PTA会費」に滞納がある場合であっても自己破産を躊躇する必要はないのではないかと思います。

最後に

以上のように「学費」や「給食費」「PTA会費」に滞納がある場合には子供の通う学校に自己破産の事実が知られてしまう可能性があることになります。

もっとも、前述したように免責不許可事由に該当することを承知であえて事前に「学費」や「給食費」「PTA会費」を事前に支払い、裁判官に裁量免責を求めるという方法もありますので、どうしても自己破産の事実を学校に知られたくないという場合には、早めに弁護士や司法書士に相談し、裁量免責を受ける方向で手続きを進められないか検討することも必要になるのではないかと思います。

▶ 子供の学費・給食費を滞納している親が自己破産する場合の注意点