子供の学費・給食費を滞納している親が自己破産する場合の注意点

子供の学費や給食費に未納分がある親が自己破産する場合には特別な配慮が必要です。

なぜなら、学費や給食費についてはその親に支払い義務があるのが通常ですので、その未納分については「親の負債」ということになるからです。

学費や給食費の未納分が「親の負債」になれば当然、自己破産の申立においても「負債」として記載し、その支払先である学校を「債権者」として手続きに含めなければならなくなりますから、子供の通う学校に自己破産したことが知られてしまうことになるでしょう。

もちろん、親が自己破産したことが学校に知られてしまったからと言って、子供の評価や内申に影響を与えるものではありませんし、家庭の問題を教師が他の生徒児童に言いふらすこともないでしょうから、それ自体で子供に具体的な不利益が生じるわけではありません。

しかし、親が自己破産するということが褒められるべきものでないのは事実ですから、万が一子供に影響が出る可能性も考えると、できるだけ学校に知られてしまうのは避けたいのが現実です。

では、子供の学費や給食費の未納分がある親が自己破産する場合には、具体的にどのような点に注意すればよいのでしょうか?

広告

学費や給食費の滞納がある場合、学校が債権者になる点を理解しておくこと

前述したように、子供の通う学校の学費や給食費に滞納がある場合には、その未納分は「支払わなければならないお金を支払っていない」ということになりますから、自己破産の手続きにおいてはその未納金額を「負債」として記載し、かつ、その請求元である学校を「債権者」として自己破産の申立書に記載しなければならないことになります。

そうすると当然、自己破産の手続きにおいて債権者である学校に「〇〇という人が自己破産しましたよ」という通知(開始決定)が送付されることになりますから、子供が通っている学校に自己破産していることが知られてしまうことになります。

【公立の場合は「都道府県」や「市町村」が債権者になるのではないか?】

公立の小中高校の場合は「都道府県」や「市町村」が運営主体となるため、「未払い分の学費や給食費」の債権者も「その学校」ではなく「都道府県」や「市町村」になるから自己破産の申立書に「学校」を債権者として記載する必要はないのではないかという点に疑問が生じる人もいるかもしれません。

しかし、学費や給食費については各学校に直接納付するのが一般的だと思いますので、その徴収権限も各学校に委任されているのが通常ですから、自己破産申立書の債権者一覧表には「債権者」として学校の名称と住所を記載するのが実務上の取り扱いになろうかと思います。

(※正確には債権者の欄に「〇〇県立〇〇学校(債権者は〇〇県)」などと記載したり備考の欄に「本来の債権者は〇〇県」などと記載する場合が多いと思います)

そうすると当然、裁判所からの通知も「都道府県(庁)」や「市町村(役場)」ではなく「学校」に送付されることになりますので、公立の小中高校であっても子供が通う学校に自己破産の事実が知られてしまうものと考えられます。

学費や給食費の未納分を自己破産の手続きから除外することができるか?

このように、子供が通う学校に学費や給食費の未納分がある親が自己破産する場合には、その自己破産の事実が学校に知られてしまうことになりますが、それを防ぐために自己破産の手続きから学校を除外することは認められるのでしょうか?

たとえば、学費や給食費の未納分の存在を隠し、学校を債権者として記載せずに自己破産の申立書を作成すれば、裁判所から学校に開始決定などの通知書が送付されることもなくなるので学校に自己破産の事実を知られなくても良くなるでしょう。

しかしこれは基本的にできません。

なぜなら、学費や給食費の未納分があるにもかかわらず、それを隠して自己破産の申立書を作成して提出した場合には「虚偽の債権者名簿提出した」ということで免責不許可事由に該当することになり、自己破産の免責(借金の返済が免除されること)が受けられなくなってしまうからです(破産法第252条第1項7号)。

【破産法第252条】

第1項 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
第1号~6号(省略)
第7号 虚偽の債権者名簿(中略)を提出したこと
(以下、省略)

学費や給食費の未納分がある限り、その債権者である学校を自己破産の申立書に記載しないと免責が受けられなくなってしまいますから、学校に知られたくないからといって学校だけを債権者から除外することはできないのです。

学費や給食費の未納分を自己破産の申立前に弁済してしまうことはできるか?

学費や給食費の未納分を自己破産の手続きから除外することが認められないのであれば、自己破産の申立前に学費や給食費の未納分を全額弁済してしまうことはできないのでしょうか?

申立前に未払い分を解消してしまえば、学校に対する負債はなくなるわけですから自己破産の申立書に学校を債権者として記載しなくても「虚偽の債権者名簿を提出した」ということに名ならないため免責不許可事由の問題も生じないはずです。

しかし、やはりこれも認められません。

なぜなら、一部の債権者に対する債務だけを自己破産の申立前に弁済してしまうことは「偏波弁済(へんぱべんさい)」として、虚偽の債権者名簿の提出とは別の免責不許可事由に該当することになるからです(破産法第252条第1項3号)。

【破産法第252条】

第1項 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
第1号~2号(省略)
第3号 特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。
(以下、省略)

自己破産の申立前に学費や給食費の未納分を弁済してしまうと免責が受けられなくなってしまう危険性がありますから、学校に知られたくないからといって、自己破産の申立前に学費や給食費の未納分だけを弁済してしまうことも避けなければならないことになります。

どうしても学校に知られたくない場合にはどうすれば良いか?

以上で説明したように、学費や給食費の未納分がある場合には、その存在を隠して申し立てをすることも、事前に弁済してしまうことも認められませんから、学校に知られてしまうことは事実上避けられないものと考えられます。

もっとも、だからと言って絶対に学校に知られてしまうことを防ぐことができないのかというとそういうわけでもありません。

なぜなら、自己破産の手続きを定めた破産法という法律では、免責不許可事由に該当する事実がある場合であっても、裁判官の判断(裁量)で特別に免責を認める「裁量免責」の制度が設けられていますから、前述した免責不許可事由に該当することを承知の上で自己破産の手続きを始める前にそれまで滞納してしまった学費や給食費を弁済(偏波弁済)し、裁判官に裁量免責を求めていくという手法も否定されるものではないからです(破産法第252条第2項)。

【破産法第252条第2項】

前項の規定にかかわらず、同項各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。

もちろん、その場合に必ずしも裁判官が「裁量免責」を認めてくれるという保証はありませんが、「学校に知られてしまうと子供の就学に影響が出る可能性がある」ということは裁判官や破産管財人にも十分理解してもらえると思いますので、その事情を十分に破産管財人や裁判官に説明し理解を求めることができれば裁判官が「裁量免責」を出してくれる可能性は大いにあるでしょう。

ですから、どうしても除外したい債権者がある場合には、あえて自己破産の申立前に学費や給食費の未納分を弁済し、その未納分を解消してしまうということも検討する価値はあると思います。

ただし、あくまでもこれは例外的な手法となりますので、学費や給食費の未納分がある場合には、早めに弁護士や司法書士に相談し、事前に弁済しても裁量免責を受けることができるか、という点について十分に検討を重ねる必要があるといえるでしょう。