実家で親と同居している人が自己破産する場合には、一人暮らしの人が自己破産する場合と比較して特別に注意すべき点がいくつかあります。
親と同居している人が一番気になるのは、いわゆる「親バレ」してしまわないかという点かもしれません。
しかし、自己破産の手続きをしていることが親に知られてしまう「親バレ」だけで済めばまだ良い方で、一歩間違えば親も自己破産しなくてはならなくなったりする可能性もありますから、親と同居している人が自己破産する場合は、それ相応の注意を払う必要があるのです。
では、親と同居している人が自己破産する場合には、具体的にどのような点に気を付ければよいのでしょうか?
「親バレ」したくない場合は弁護士や司法書士にその旨伝えておく
「親バレ」したくない場合は、自己破産を依頼する弁護士や司法書士に相談する際に、「親バレしたくないこと」を伝え、郵便物や電話連絡を直接実家の方にしないように頼んでおく必要があります。
電話連絡は自分の携帯電話を使えば済むでしょうが、弁護士や司法書士事務所から送付される書類等の受け取り先を実家にしておくと、万が一親がその封筒を開封した場合に「親バレ」してしまう可能性があるからです。
(※なお、自己破産の手続き上で裁判所から通知される書面等は全て弁護士や司法書士事務所に送付されるので自宅に裁判所から直接通知が届けられることは通常はありえません(※ただし、手続きが遅れて債権者が裁判を起こした場合は自宅に通知が来ることがあります)。)
ちなみに、弁護士や司法書士事務所からの郵便物で「親バレ」しないようにするためには郵便局の「局留め」で送ってもらうとか、自分で事務所にとりに行くなどの方法を採る必要がありますが、その点についてはこちらのページで詳しく説明していますので参考にしてください。
親が保証人になっている場合は親にあらかじめ事情を話しておく
親が自分の借金やローンの保証人になっている場合には、自己破産の手続き前に必ず親に事情を話しておかなければなりません。
なぜなら、親が保証人になっている債務のある人が自己破産した場合には、その債務の債権者は保証人である親に対して残りの債務を一括して請求することになるからです。
借金の保証人は債権者に対して「主たる債務者が返済をしない場合は自分が代わって支払いますよ」ということを約束することになっているわけですから、主たる債務者である自分が自己破産して借金の返済をしないことが確実になった以上、債権者は保証人である親に対して請求をするほかありません。
しかも、通常の貸金やローンの契約では「主たる債務者に破産手続の開始があったとき」が「期限の利益喪失」の条件となっていることが多いため、保証人である親に請求される場合は、毎月の支払額ではなく、残りの残債務が一括して請求されることになるのが通常です。
それにもかかわらず、事前に親に連絡しておかなかった場合には、突然多額の債務の支払い請求を受けた親は資金繰りができなくなってしまい、親の方も自己破産を考えなければならなくなってしまう危険も生じてしまうでしょう。
ですから、自分の親に保証人になってもらっている借金がある場合には、自己破産の手続きに入る前にあらかじめ親にそのことを説明し、親の方で保証債務の支払いをどのようにするのかという点を考える時間を与えてあげる必要もあるのです。
親の保証人になっているときも親にあらかじめ話しておく
自分が親の借金の保証人になっている場合も上記と同様です。
自己破産の手続きでは、自分自身がお金を借りている債務だけでなく、自分が他人の借金の保証人になっている場合の「保証債務」も「自己破産の債務」として裁判所に申告する必要がありますから、自己破産の手続きが進行すればその「保証債務」も免除(免責)されることになります。
そうすると当然、親の借金の契約から保証人(自分)である自分が離脱することになりますから、親がお金を借りている債権者は「あんたに貸したお金の保証人が自己破産していなくなったんだから他の保証人をつけろよ」と親に対して請求することになります。
この場合、親が事前にそうなることを知っておけば代わりの保証人を用意することもできるかもしれませんが、親に自分が自己破産することを内緒にしていた場合には、親が突然債権者から新しい保証人を付けるよう求められてしまい、最悪の場合には保証人になってくれる人を見つけられずに債務の一括弁済を求められる可能性もあるかもしれません。
ですから、自分が親の借金の保証人になっている場合にも、自分が自己破産することを事前に話しておかなければならないでしょう。
親の預金通帳や給与明細書の写し(コピー)が必要となる点もあらかじめ話しておく(方が良い)
自己破産の手続きでは、家計を同じくした同居の親族がある場合には、その同居の親族の給与明細の写し(コピー)の添付が必要になります。
また、自宅の光熱費や家賃の支払いを自分以外の同居の親族の銀行口座から引き落としている場合には、その同居の親族の預金口座通帳の写し(コピー)の添付も必要となります。
その他にも、同居の親族の住民票や所得証明書、無資産証明書なども必要になったりしますので、そのような書類を家族に内緒で取得できる場合でない限り、家族の協力は必須となります。
このような場合、家族にバレることになりますが、添付書類となっている以上、添付しないわけにはいきませんので、親に内緒でその書類を収集できる場合でない限り、早めに親に事情を説明しておかなければならないでしょう。
最後に
以上のように、親と同居している人が自己破産する場合には、その同居している親に大きな負担や不利益を及ぼす可能性もありますから、「親バレ」してしまうことはあるにしても、なるべく早めに親に事情を説明しておいたほうがよいのではないかと思います。
もちろん、どうしても「親バレ」したくない人も多くいるでしょうから、弁護士や司法書士に相談して「親バレ」せずに処理できるのであればそれに越したことはないでしょう。
しかし、親と同居している人が自己破産する場合には、親に相談できないこと自体が負債が増大することになった原因であることも多いと思いますので、これを機会に親に事情を説明し、親の協力の元で経済的な再生を図ることも考えてもよいのではないかと思います。