自己破産に年齢制限はあるか?未成年・高齢者の破産申立の可否

借金の返済ができなくなった場合には、最終的に自己破産の申し立てを行って裁判所から借金の返済を免除してもらうことが必要となります。

この点、「借金を負担してしまう」という状況は、20~60歳までのいわゆる現役世代だけでなく、未成年者や高齢者であっても同様に生じうるはずですから、未成年者や高齢者であっても自己破産をする必要性に迫られることはあると考えられるでしょう。

では、自己破産の手続きについては未成年者や高齢者であっても問題なく利用することができるのでしょうか?

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自己破産に年齢制限は存在しない

結論からいうと、自己破産の手続きに年齢制限は設けられていませんので、未成年者であっても高齢者であっても、何の問題もなく申立てを行って自己破産の手続きを進めることは可能です。

自己破産の申し立ては「支払不能または債務超過にある債務者」に認めた手続きにすぎませんし(破産法1条)、「支払不能にあるとき」か「支払いを停止したとき」であれば年齢にかかわらず申立てが可能とされていますので(破産法15条)、未成年者であっても高齢者であっても申立てをすることに差し支えはないのです。

【破産法1条】

この法律は、支払不能又は債務超過にある債務者の財産等の清算に関する手続を定めること等により、債権者その他の利害関係人の利害及び債務者と債権者との間の権利関係を適切に調整し、もって債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図るとともに、債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ることを目的とする。

【破産法15条】

1項 債務者が支払不能にあるときは、裁判所は、第三十条第一項の規定に基づき、申立てにより、決定で、破産手続を開始する。
2項 債務者が支払を停止したときは、支払不能にあるものと推定する。

ただし、未成年者の場合は事実上、法定代理人である「親」が申立をすることになる

このように、自己破産の申し立て手続きでは年齢制限は設けられていませんので、未成年者でも高齢者であっても自己破産の申し立てをすることは可能なのですが、「未成年者」が自己破産の申し立てをする場合には、実際にはその「親」が申立を行う必要があるでしょう。

なぜなら、未成年者については「訴訟能力」がありませんので、未成年者が裁判所に自己破産の申し立てをする場合は法定代理人がその未成年者に代わって自己破産の申し立てを行うことが求められるからです。

【民事訴訟法31条】

未成年者及び成年被後見人は、法定代理人によらなければ、訴訟行為をすることができない。(但書省略)。

ですから、自己破産しようと思っている人が「未成年者」である場合は、まずその法定代理人である「親」に(親がいない場合は親以外で親権者になっている法定代理人とか未成年後見人とかに)相談することは必須となります。

未成年者が借金を抱えてしまった場合「親に内緒で自己破産できるか」と考える人も多いかもしれませんが、「法定代理人が申立をする必要がある」という点を考えると「親に内緒で」というのは難しいのではないかと思います。

未成年者の場合は弁護士や司法書士に「依頼すること自体」に「親の同意」が必要となる

前述したように「未成年者」であっても自己破産の申し立ては可能ですが、自己破産の申し立てを弁護士や司法書士に依頼する場合には、その「弁護士や司法書士に自己破産の手続きを依頼する」という行為について「親」の「同意」が必要となります。

なぜなら、「契約」を結ぶという行為は「法律行為」となりますが、「弁護士や司法書士に依頼する」という行為も「弁護士や司法書士と自己破産の処理に関する契約を結ぶ」という行為に他なりませんから、未成年者が弁護士や司法書士と「自己破産の依頼に関する契約」を結ぶこと自体に「法定代理人」の同意が必要となるからです。

【民法5条1項】

未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。(但書省略)

先述したように未成年者の法定代理人は「親」になるのが通常ですから、未成年者が借金の返済に行き詰った場合において自己破産の手続きを弁護士や司法書士に依頼する場合は、「自己破産の申し立てをすること」ではなく「弁護士や司法書士に依頼すること」自体に「親」の同意が必要となってくるでしょう。

親の同意が得られない状態で未成年者からの自己破産の依頼を引き受ける弁護士や司法書士は通常考えられませんから、未成年者が自己破産の手続きを利用したいと考えている場合はまず法定代理人である「親(親がいない場合は未成年後見人などの他の法定代理人)」に相談することがその意味でも必要不可欠であるといえます。

自己破産をする高齢者に認知症などの症状がある場合は成年後見人の選任が必要

前述したように、自己破産の申し立てに年齢制限はありませんから、80歳でも100歳でも自己破産の申し立てをすること自体は可能です。

ただし、その高齢者に認知症など判断能力について障害がみられる場合(事理弁識能力に問題がある場合)には成年後見人の選任が必要と思われますので、自己破産の申し立てをする前に成年後見の申立てを家庭裁判所に行って成年後見人を選任し、その選任された成年後見人から自己破産の申し立てをすることが必要になるでしょう。

最後に

以上のように、自己破産の手続きを利用するのに年齢制限はありませんから、未成年者や高齢者であっても自己破産の手続き自体を利用することは可能です。

ただし、前述したように、未成年者の場合には「法定代理人(通常は親)」が、高齢者の場合には「成年後見人」の関与がなければ事実上、自己破産の申し立てに支障が出てくる場合がありますので、未成年者や高齢者の人が自己破産するかしないかで悩んでいる場合は早めに弁護士や司法書士に相談し適切な助言を受けておくことが必要と言えるでしょう。