自己破産の事務所選び…「安ければ良い」は正しいか?

弁護士や司法書士に自己破産の申立を依頼する場合、事務所によっても異なりますが、その費用は20万円から50万円になるのが一般的な相場です。

確かに、自己破産の申し立ては法律の専門的知識を必要とするものであり、法律の専門家である弁護士や司法書士に依頼する場合にはそれなりの金額が必要になるとは思いますが、一般の人にとっては20万円から50万円もの大金を支払うのは相当な覚悟がいるのが現実です。

そのため、多くの多重債務者は、自己破産を依頼する弁護士や司法書士を探す際に、その事務所の「費用(報酬)」がいくらになるかといった点が事務所選びの重要なポイントになるわけですが、そのように弁護士や司法書士の「費用(報酬)」だけを基準に事務所選びをすることが、果たして正解といえるのでしょうか?

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弁護士や司法書士とは半年以上付き合うことになる

自己破産の手続きは、申立書を作成して裁判所に提出しただけで終わるものではなく、裁判所や破産管財人から照会があった場合にはそれを調査して早急に回答することが求められますから、弁護士や司法書士に申立を依頼した場合であってもその依頼した弁護士や司法書士(もしくはその事務所の事務員)と複数回打ち合わせをしなければなりません。

また、仮に特段の資産がなく、免責不許可事由となるようなギャンブルや浪費などの事情がないような案件であったとしても、手続きが終了するまでは弁護士や司法書士に依頼してから最短でも半年から1年は必要となりますから、依頼をした弁護士や司法書士もしくはその事務所の事務員と半年から1年間は顔を合わせたり電話で話したりする機会が必要となるでしょう。

そのため、弁護士や司法書士に自己破産を依頼する場合には、その弁護士や司法書士もしくはその事務所の事務員との相性が非常に重要な要素となるのですが、その事務所の報酬体系が他の事務所よりも安いからと言って、その事務所の人間と相性が良いとは限りません。

もちろん、費用(報酬)が高いほど相性が良くなるということもないでしょうが、費用の多寡だけで事務所選びをしてしまうと、性格的に相性の悪い事務所に依頼してしまう可能性は高くなってしまうでしょう。

仮に費用(報酬)が安いからと言ってその弁護士や司法書士との相性を考えずに依頼してしまうと、性格的に合わない弁護士や司法書士(またはその事務所の事務員)と長期間に渡って付き合わなければならなくなって大きなストレスとなります。

「申立てが通ればOK」という方針の事務所では管財事件になる可能性が高くなる

数としてはあまりないと思いますし、そのような事務所はないと思いたいのですが、弁護士や司法書士の中には、自己破産の申し立ては「裁判所で申し立てが認められたらOK」と考えている人も、多少はいるかもしれません。

仮にこのような「申し立てが認められたらOK」というような方針の事務所に依頼してしまうと、「管財事件」で処理されてしまうリスクが高まってしまいます。

なぜなら、自己破産の申し立てを裁判所に申立を行うと、裁判所で「管財事件」と「同時廃止」の事件に振り分けられ、「管財事件」に振り分けられた場合には破産管財人が選任されて詳細な調査や配当が行われることになりますが、「裁判所で申し立てさえ認められたらOK]と考えているような事務所では、事前調査や説明が不十分な申立書であっても「裁判所が受理してくれるならそれでよい」と考えているので中途半端な申立書しか作ってくれないからです。

そのような中途半端な申立書では裁判所としても「資産の有無」やギャンブルや浪費などの「免責不許可事由に至るまでの事情」などが十分に理解できませんから、「破産管財人に調査させよう」と考えて「管財事件」として処理する可能性が高くなってしまうのです。

例えば、簡単な調査をすれば相続財産の承継がないことが明らかになっていたにもかかわらず、十分な相続財産の調査をしないで申し立てをしてしまったため、裁判所が相続財産があるものと確信して破産管財人を選任して管財事件にしたものの、破産管財人の調査でやっぱり相続財産はないという結論になったようなケースが例として挙げられるでしょう。

管財事件として処理されれば当然、「管財費用」として20万円~50万円程度の費用を追加で支払わなければなりませんから、「裁判所で申し立てさえ認められればOK」と思っているような事務所に依頼してしまった場合には、たとえその事務所の費用(報酬)が他の事務所より安かったとしても、管財費用を納付しなければならない分、全体の手続費用は高くなってしまうでしょう。

もちろん、「管財事件」になった場合には依頼を受けた弁護士や司法書士の方でも破産管財人に引き継ぐための事務処理が増えてしまい面倒になってしまいますから、できるだけ「同時廃止」で簡単に処理してしまいたいのが本音です。

しかし、弁護士や司法書士の事務所では「管財事件」になった場合には「同時廃止」の案件よりも報酬を増額するところが多いので、そのような事務所では「管財事件」になったからといってその依頼を受けた弁護士や司法書士が損をするわけではありません。

ですから、弁護士や司法書士によっては「申し立てさえ認められればOK」という考えを持っている人も少なからずいるわけです。

もし仮に「申し立てさえ認められればOK」と思っているような事務所に依頼してしまうと、管財事件になるリスクは高まり、管財費用の分だけ全体の費用が高くなる場合があるということになりますから、その事務所がどのような方針で自己破産を処理しているのかという点は十分に精査する必要があるといえます。

報酬(費用)の安さだけで判断するのは危険かも…

以上のように、費用(報酬)の安さだけで弁護士や司法書士事務所を選ぶのは危険な面があることも理解しておくべきです。

もちろん、一般の消費者にとって費用がいくらになるかといった点は弁護士や司法書士を選択する重要な要素の一つになるでしょう。

しかし、費用が安いからという理由だけで事務所選びをするのは危険です(※もちろん報酬が高いからと言って良い事務所というわけではありません)。

ですから、費用の多寡だけで事務所を判断するのではなく、その事務所の弁護士や司法書士、実際に担当することになるであろう事務員などとの相性については相談する際にじっくり判断することが必要になるのではないでしょうか?