「婚活費用」は自己破産で「浪費」と判断されるか?

自己破産の手続きでは、申立人に一定の責められるべき行為があった場合に、裁判所から「免責」という借金の返済を免除する決定を受けられなくなってしまう「免責不許可事由」が定められています。

この免責不許可事由には様々なものがありますが、最も代表的で有名なのは自己破産の申立人に無駄遣いなどの「浪費」がある場合です(破産法第252条第1項4号)。

【破産法第252条第1項】

裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
第1号~3号(省略)
第4号 浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと
(以下、省略)

たとえば、自己破産の申立人が申立前に風俗営業法関連のお店(たとえばキャバクラやホストクラブ、性的な行為を行うお店など)で頻繁に遊興しているような場合には、そこで支出した出費が「浪費」と判断されて自己破産の手続きで問題にされることがあるのです。

ところで、「婚活」という言葉が広く定着した今日の日本では、幅広い年齢層の未婚者が結婚相談所やお見合いパーティーなどに足を運ぶことも少なくありませんが、このような「婚活」に伴う費用が原因で自己破産に至った場合、その「婚活費用」は「浪費」と判断されてしまうのでしょうか?

婚活パーティーや結婚相談所での交際相手の紹介も、異性との交遊を目的としているという点ではホストやキャバクラ、性的な行為を伴う風俗営業法関連のお店と共通する面もありますから(※結婚相談所や婚活パーティー業者が風俗営業法関連のお店と同業種という意味ではありません)、「婚活」に費やした出費も「浪費」と判断され免責不許可事由に該当してしまうのではないかという疑問が生じるため問題となります。

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婚活もその程度によっては「浪費」と判断される

結論からいうと、結婚相談所の利用や婚活パーティーへの出席も、その程度によっては自己破産の手続きで「浪費」と判断される場合はあると考えられます。

なぜなら、社会一般で是認できるような回数の「婚活」であれば、例えその費用を借り入れで賄っていたとしても結婚という人生の伴侶を探すきっかけを提供してくれる婚活業者に支出す行為を「浪費」として直ちに非難することはできないでしょうが、その頻度やそれに充てる費用がその人の収入に見合わないものであるような場合には、無駄遣いと判断してしかるべきだからです。

どの程度の婚活であれば「浪費」と判断されるのか、または判断されないのかはその人の収入や個々の婚活業者の費用で異なるでしょうから一概には言えませんが、日々の生活費に影響を及ぼすような回数や金額の婚活が繰り返されているような場合には、「浪費」と判断される可能性もあるのではないかと思われます。

婚活が「浪費」と判断された場合はどうすれば良いか

前述したように、常識的な婚活であればたとえ借り入れの原因に結婚相談所や婚活パーティーの費用が含まれていたとしてもそれが直ちに「浪費」と判断されることはないと思われますが、その頻度や金額等によっては婚活費用も「浪費」と判断される可能性はあるといえます。

この点、仮に裁判所に婚活費用が「浪費」と判断された場合には、前述したように免責不許可事由となって免責(借金の返済が免除されること)が受けられなくなってしまいますが、そのような場合には、裁判所に説明を尽くして裁判官に「裁量免責」を認めてもらうしかありません。

「裁量免責」とは、免責不許可事由に該当する事実が認められる場合であっても裁判官の独自の判断(裁量)によって免責を与えることができる制度のことをいいます(破産法第252条第2項)。

【破産法第252条第2項】

前項の規定にかかわらず、同項各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。

この「裁量免責」は全てのケースで認められるわけではありませんが、自己破産の申立をしている人は借金が払えないから申立をしているわけですから、原則に従って「免責不許可事由に該当するケースは全て免責を出さない」という取り扱いをしてしまうと借金の返済が出来ず路頭に迷う多重債務者が街にあふれてしまい不都合な結果となってしまいます。

そのため、裁判所では「裁量免責」を比較的緩やかに認める傾向がありますから、婚活を繰り返さなければならなかった事情や、婚活にのめりこんでしまった反省点などを裁判官に説明することによって、裁判官に「裁量免責」を出してもらうことは十分に可能です。

ですから、仮に婚活を繰り返したことで借金の返済が困難になり自己破産するに至った場合には、婚活にのめりこんでしまった事実を正直に裁判所に申告し、反省すべき点は反省して裁判官の理解を受けることが大切になってくるといえるでしょう。