自己破産の手続きでは、申立人が開設している全ての銀行口座(信用金庫や農協等の口座も含む)の通帳をコピーして申立書に添付し、裁判所に提出することが求められます。
とはいっても、自己破産の手続きになじみのない人にとっては具体的にどのように「通帳をコピー」すればよいか、分かり難い点もあるでしょう。
そこでここでは、自己破産の申立書に添付する預金通帳のコピーの取り方について、最も重要な10の項目について厳選して説明することにいたします。
- 自己破産の申立書に添付する通帳のコピーの取り方
- 【1】残高の有無にかかわらず開設している全ての通帳のコピーが必要
- 【2】休眠口座の通帳であってもコピーを添付する必要がある
- 【3】表紙、裏表紙、印字のないページも含めて通帳の全てのページをコピーする
- 【4】過去1年分(裁判所によっては過去2年分)の入出金履歴が印字されている通帳のすべてのコピーが必要
- 【5】一括記帳の部分がある場合は別途履歴の添付が必要
- 【6】通帳を紛失している場合は銀行の窓口で履歴を発行してもらうことが必要
- 【7】ネットバンクの口座はPC画面に表示された入出金履歴をコピーするか郵送で履歴を発行してもらう必要がある
- 【8】家族の預金口座から家賃や光熱費が引き落とされている場合はその家族の口座の通帳のコピーも添付が必要
- 【9】個人名の送入金や資産目録や債権者一覧表で説明していない企業などからの送入金がある場合は上申書での説明が必要
- 【10】1日で合計20万円以上の入出金がある場合は上申書でその使途の説明が必要
- 最後に
自己破産の申立書に添付する通帳のコピーの取り方
自己破産の申立書に添付する通帳のコピーを取る場合は以下の10個の項目に関連する事項に十分に注意する必要があります。
【1】残高の有無にかかわらず開設している全ての通帳のコピーが必要
まず最初に注意すべき点は、通帳のコピーは自己破産の申し立て時点で口座残高の存在するものだけでなく、残高が「0円」で口座についてもそのコピーが必要になるという点です。
口座の残高が「0円」であっても「資産がない」ということを証明するための証拠になりますので残高が「0円」であってもコピーの添付を省略することはできないのです。
なお、通帳のコピーは自己破産の申立書を裁判所に提出する日から遡って1週間(裁判所によっては2週間)以内に記帳したうえでコピーを取ることが求められますので注意してください。
ちなみに、裁判所ではすべての書類をA4用紙で統一して管理していますので、コピーする際もA4用紙を使ってプリントアウトすると裁判所に喜ばれます。
【2】休眠口座の通帳であってもコピーを添付する必要がある
預金通帳は通常、1つないし2つの銀行で開設した口座だけを日常的に使用しているのではないかと思いますが、それまでの生活状況によっては過去に口座を開設して使用していないようないわゆる「休眠口座」を保有しているような場合もかもしれません。
自己破産の申し立てにおいては、このように普段使用していない「休眠口座」であっても、自分が名義人となっている口座はすべてそのコピーを添付しなければなりませんので注意しましょう。
特に、転勤や就職などで県外に転居しているような場合は、前の住所地の地方銀行などに使っていない口座があるケースが多いので、そのような眠っている口座がないかよく確認しておくことが必要です。
もし仮にそのような預金口座が存在し、そこにそれなりの金額(特に20万円以上)が残されている場合は、後の調査でその口座の存在が明らかになった場合に「資産隠し」を疑われてしまいますので十分に注意するようにしてください。
【3】表紙、裏表紙、印字のないページも含めて通帳の全てのページをコピーする
通帳のコピーは、取引が印字されている部分だけでなく、外側の表紙(名義人の名前とキャラクターなどが表示されている面)はもちろん、見開き部分のページ(口座の開設支店などの記載された最初のページ)であったり、定期預金などの部分についても全てのページのコピーの提出が必要になります。
定期預金については定期預金を1円も預けていない場合であっても「定期預金がない」ということを証明しなければなりませんので、何も印字されていない定期預金の「1」のページだけはコピーして提出しなければなりませんので注意してください(定期預金の「2」以降のページは「1」のページに何も印字されていなければ空白であることが裁判所にも明らかなのでコピーの必要はありません)。
【4】過去1年分(裁判所によっては過去2年分)の入出金履歴が印字されている通帳のすべてのコピーが必要
通帳のコピーは一般的な裁判所では過去1年分、特定の裁判所では過去2年分の取引について印字されている通帳のすべてが必要になりますので注意してください。
例えば、「過去1年分」の通帳のコピーの提出を求めている裁判所において2019年の4月1日に裁判所に自己破産の申立書を提出する場合は最低でも2018年4月1日以降から2019年3月31日までの部分の取引が印字された通帳のコピーが必要となりますが、コピーしようとしている通帳が2018年の8月に更新したもので、2018年の7月以前の取引が更新前の通帳に印字されているような場合には、その「更新前」の通帳についても「全てのページ」の添付が必要となります。
なお、通帳のコピーを取る場合は、最初の「1」のページから全てのページのコピーを取らなければなりませんので、たとえば2019年の4月1日に裁判所に自己破産の申立書を提出する場合に提出する通帳の、「1」から「3」のページに2015年から2018年3月までの取引が印字されていて、「4」のページ以降に2018年4月以降の取引が印字されていたとしても「1」から「3」のページまでのコピーを省略することはできませんので注意してください(このような場合は「1」ページからの分も含めて全てのページのコピーの提出が必要になります)。
【5】一括記帳の部分がある場合は別途履歴の添付が必要
通帳の記帳を一定期間行わない場合、その期間が一括してまとめて記帳されることがあります。
そのような「一括記帳」がなされている部分については裁判所において入出金の詳細を判断することができませんので、その一括記帳がなされた部分について銀行の窓口に申告して取引履歴を発行してもらい、その窓口で発行してもらった履歴をコピーしたものを提出する必要があります。
銀行によっては履歴1ページ当たり200円~500円程度の手数料を徴収しているところもありますので(無料の銀行もあります)、一括記帳がなされている部分の発行を依頼する場合はその期間をきちんと明示して発行してもらわないと不要なお金を取られてしまうので注意してください。
なお、一括記帳の部分の履歴の発行には数週間かかりますので、弁護士や司法書士事務所に相談した後に速やかに銀行の窓口に行き発行の申請をするようにこころがけましょう。
(※弁護士や司法書士に相談する前に取り寄せてもよいですが、間違った期間の履歴を取得すると手間ですし有料になると無駄になりますので、弁護士や司法書士から指示された時点で発行を申請するほうが無難です。)
【6】通帳を紛失している場合は銀行の窓口で履歴を発行してもらうことが必要
普段使用していない口座などがある場合、その口座の通帳を紛失して手元に通帳がない場合もあると思います。
そのように通帳がない場合には、先ほどの【5】の場合と同じように銀行の窓口で、自己破産の申立書を裁判所に提出する日から遡って過去1年分(裁判所によっては過去2年分)の履歴を取り寄せてそのコピーを提出することが必要になります。
【7】ネットバンクの口座はPC画面に表示された入出金履歴をコピーするか郵送で履歴を発行してもらう必要がある
最近はインターネット銀行などのネットバンクを利用している人も多いかと思われますが、ネット銀行の口座についてはもともと通帳が発行されていません。
そのため、このようなネット銀行の口座については、まずインターネットでその口座にログインし、パソコンの画面にそのネット銀行の口座の入出金履歴を表示させて過去1年分(裁判所によっては過去2年分)すべての履歴をプリンターで出力させたものを提出する必要があります。
ネット銀行によっては、システム上、特別な口座以外では過去2~3か月分しか入出金履歴を表示してくれない使用になっているところもありますが、そのような口座の場合は電話やメールでそのネット銀行に連絡し、必要な期間の取引履歴が記載された履歴書面を郵送で取り寄せてから、その発行された取引履歴のコピーを提出するようにします。
【8】家族の預金口座から家賃や光熱費が引き落とされている場合はその家族の口座の通帳のコピーも添付が必要
通帳のコピーは通常、その自己破産の申立人本人が名義人となっている口座のものだけを提出すれば足りますが、その申立人の家計表に記載した「家賃」や「光熱費」が申立人以外の名義人の口座から引き落とされている場合には、その家賃や光熱費が引き落とされている申立人以外の人の口座のコピーも過去1年分(裁判所によっては過去2年分)提出する必要があります。
たとえば、夫婦のうち「夫」だけが自己破産する場合に「夫」の通帳から家賃や光熱費が引き落とされている場合には「夫」の通帳のコピーだけを提出すれば済みますが、「妻」の口座から家賃や光熱費が引き落とされている場合は「妻」の口座(引き落としがなされている口座だけで構いません)の通帳のコピーも提出が必要になりますので注意しましょう。
【9】個人名の送入金や資産目録や債権者一覧表で説明していない企業などからの送入金がある場合は上申書での説明が必要
裁判所に提出する必要のある通帳に「個人名」を名宛人とする送金や入金があったり、「債権者一覧表や財産目録(資産説明書)に記載していない企業」を名宛人とする送金や入金がある場合には、その送金や入金が何を目的としたものなのか、という点を申立書とは別に上申書を作成して説明する必要があります。
例えば、通帳に「ヤマダハナコ」への「5万円」の送金があった旨の履歴が印字されているような場合は、そのヤマダハナコへの5万円の送金が「何」を目的(原因)としたもので、今後の送金の必要性があるのかないのかなど、詳細な説明を上申書に記載して裁判所に提出しなければなりません。
もっとも、このような上申書は手続きを依頼する弁護士や司法書士の方で作成してくれますので、特に心配する必要はありません。
なお、このような説明が必要な理由は資産隠しや負債の記載漏れを防ぐために必ず必要となりますので、資産隠しや友人知人からの借金などを隠蔽して返済し続けるような行為は絶対にしないようにしましょう。
【10】1日で合計20万円以上の入出金がある場合は上申書でその使途の説明が必要
通帳に1日(もしくは近接した数日間)に20万円以上の入出金がある場合も、その理由や使途を上申書に記載して裁判所に提出し説明することが必要になります。
このように20万円以上の入出金がある場合についても、資産隠しであったり負債の隠蔽が疑われますので、裁判所から説明を求められるのは避けられません。
ですから通帳のコピーを提出する場合はあらかじめその点を説明した上申書を作成しておいて通帳のコピーと一緒に提出するようにしましょう。
もっとも、先ほども述べたようにそのような上申書は弁護士や司法書士が作成してくれるので、申立人本人はさほど心配する必要はありません。
最後に
以上はあくまでも一般的な事項を説明しただけであって、上記以外でも裁判所や破産管財人が提出を命じる口座や期間については裁判所や破産管財人に支持されたとおりのコピーの提出が必要となりますので誤解のない様にしてください。
もっとも、弁護士や司法書士に手続きを依頼する場合は弁護士や司法書士がコピーの取り方を詳しく教えてくれるのが通常ですから、コピーの取り方をそれほど深く悩む必要はありません。
また、通帳が複数ある場合はコンビニのコピー機代もバカになりませんので、記帳した通帳を弁護士や司法書士に渡して事務所でコピーを取ってもらうようにすれば足りるのではないかと思います。