自己破産の費用は分割払いができるのか?

自己破産の申し立てを予定している人のほとんどの人が不安になるのが、自己破産の手続きに必要な費用を分割で支払うことができるのか、という点です。

自己破産の費用には、手続きを弁護士や司法書士に依頼する場合に必要となる「【1】弁護士・司法書士への報酬」の他にも、「【2】裁判所に納める手続き費用(収入印紙や郵便切手、官報公告費用)」であったり、管財事件として処理される場合に裁判所から選任される「【3】破産管財人への報酬(引継予納金)」などがありますが、その総額は最低でも20万円ほど、高ければ50万円を超える費用が必要となりますから、そういった自己破産の費用を分割で支払うことができるのかといった点は債務者に非常に重要な関心ごととなっているわけです。

では、実際に自己破産の申し立てをする場合、手続きに必要なこれらの費用は分割払いで支払うことが認められるのでしょうか?

それとも、すべて一括で支払うことが求められてしまうのでしょうか?

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【1】弁護士や司法書士に支払う報酬

自己破産の費用として大部分を占めることになる「弁護士や司法書士に支払う報酬」については、ほとんどの事務所が「毎月2万円」程度の分割払いを認めてくれていますので、自己破産の手続きで必要になる弁護士・司法書士報酬は「分割払い」で支払うことができると考えておいて差し支えないでしょう。

また、収入が少なく法テラスの取り扱っている民事法律扶助を利用した場合は弁護士や司法書士に対する報酬は法テラスから立て替えてもらえますが、その場合に法テラスに償還する場合も毎月5,000円程度の分割となっていますので、いずれにしても弁護士や司法書士の報酬については「分割払い」ができると考えて差し支えないものと思います。

【2】裁判所に支払う手続費用

自己破産の手続きを裁判所に申し立てる場合には、申立書に添付する「収入印紙(1,500円分)の代金」と「官報公告費用(10,584円)」、および「郵便切手代(3,000円程度※債権者の数によって異なる)」の支払いが必要となりますが、これらの手続き費用については申立時に一括で支払うことが義務付けられています。

もっとも、とはいっても弁護士や司法書士に自己破産の処理を依頼して申立書の作成を行い、実際に裁判所に申立書を提出するまでは少なくとも3か月程度は期間が必要となりますから、その間にその「裁判所に納める手続き費用」を自分の預金口座や弁護士や司法書士の口座に積み立てておけば済む話ですので、「裁判所に支払う手続き費用」が一括払いであるとしてもその実質は「分割払い」のようなものです。

ですから、「裁判所に支払う手続き費用」については「分割払いできるか」という点に神経質になる必要はないのではないかと思います。

【3】破産管財人に対する引継予納金

自己破産の申し立て書を裁判所に提出した場合には、裁判官がその申立書を審査し、手続きの開始と同時に手続きを終了させる「同時廃止」で処理するか、それとも破産管財人を選任して調査や配当手続きを実施させる「管財事件」として処理するか振り分けることになります。

そしてこの場合、仮に「管財事件」に振り分けられてしまうと、その裁判所から選任される破産管財人(※通常は裁判所に備え置かれた管財人名簿に掲載されている弁護士から選任されます)に対する報酬(※管財費用や引継予納金などといわれます)として最低でも20万円ほどの金額を裁判所に納付するように指示されるのが通常です。

この場合に納付を指示される管財費用(引継予納金)は基本的に一括払いとなっていますが、特段の資産がない人の場合は3か月程度の猶予期間が与えられるのが一般的です。

ですから、申立時に預貯金などのたくわえがない場合は、裁判所から管財費用(引継予納金)の納付を指示されてから3か月程度与えられる猶予期間に、自己破産の処理を依頼している弁護士や司法書士の口座に毎月数万円程度を積み立てて、それが20万円に達したところで裁判所に納付することになるでしょう。

20万円を3か月で納めるとなれば1か月あたり7万円弱を積み立てる必要がありますから、一般的な給与所得者からすると少々厳しいかもしれません。

しかし、裁判所が管財人を選任することが決定するまでは自己破産の申立書を提出してから1か月程度後になりますので、弁護士や司法書士に自己破産を依頼してから申立書を提出するまでの期間(およそ3か月間)と、裁判所から管財費用(引継予納金)の納付までに与えられる猶予期間(だいたい3か月程度)を合計すれば半年から8か月程度は期間が空きますので、弁護士や司法書士に自己破産を依頼してから毎月2~3万円程度積み立てればよいだけですからそれほど苦にはならないはずです。

このように、裁判所から管財費用(引継予納金)の納付を求められた場合には20万円程度の金額を一括で支払う必要がありますが、弁護士や司法書士に自己破産を依頼してから実際に納付が必要になるまで半年以上の期間があることを考えれば、実質的には「分割払い」と同じですので、管財費用(引継予納金)の納付が分割払いでないことをそれほど深刻に受け止める必要はないのではないかと思います。

最後に

以上のように、自己破産の手続きを弁護士や司法書士に依頼する場合に必要となる「弁護士・司法書士報酬」についてはそもそもが「分割払い」が基本とされていますし、裁判所に納める「手続き費用」や破産管財人が選任された場合の「管財費用(引継予納金)」についても一括納付とされているとはいえ実質的には3か月から半年程度の分割での積み立てが可能となっていますので、自己破産に必要な費用はほぼ全てを「分割払いができる」と考えて差し支えないものと思われます。

ですから、自己破産の費用の支払いに頭を悩ませる必要は基本的にないと思いますし、それよりも借金の返済に行き詰った時点で速やかに弁護士や司法書士に相談し、管財費用が必要になる可能性がある事案では早めに管財費用(引継予納金)の積み立てを開始するなど、その案件に応じた適切な対処を取ることがはるかに重要になってくるのではないかと思います。