弁護士や司法書士から債務整理を断られたら懲戒請求できる?

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借金の返済が困難になった場合には、早めに弁護士や司法書士に相談して債務整理の手続きを取らなければなりません。

特に、ある債権者に対する返済を行うために他の債権者から借り入れを行うというように借り入れを回し始めると、借金は雪だるま式に増えていくばかりで完済することはほぼ不可能ですから、一刻も早く専門家である弁護士や司法書士に相談すべきといえるでしょう。

この点、弁護士や司法書士に債務整理を依頼する場合には、まず最初に依頼したい弁護士を決めてその事務所に電話をし、法律相談の予約を入れて借金に関する相談をしてもらうことが必要です。

企業法務を専門に扱っている事務所でもない限り、国内のほとんどの弁護士や司法書士事務所では債務整理の案件を扱っているのが現状ですから、自分が依頼したい弁護士や司法書士事務所をネットなどで探して電話をすれば、通常は簡単に依頼を受けてもらうことが可能でしょう。

しかし、弁護士や司法書士に債務整理の相談を行ったとしても、ごく稀にですが相談をした弁護士や司法書士から受任を断られてしまうケースがあるようです。

▶ 任意整理の依頼を弁護士や司法書士から断られるケースとは?

借金の返済に苦しむ多重債務者の側からしてみれば、藁をもつかむ思いでようやく相談までこぎつけたのですから、それにもかかわらず弁護士や司法書士の都合だけで依頼を拒否されてしまっては到底納得ができない場合もあるかもしれません。

では、このように弁護士や司法書士から債務整理を断られた場合、その弁護士や司法書士に対して懲戒請求等をすることができるのでしょうか?

弁護士については弁護士職務基本規程の第5条および6条において、司法書士については司法書士法第2条や司法書士倫理規定の第3条で、それぞれ「信義誠実義務」や「品位保持義務」が定められていますので、債務整理の依頼を弁護士や司法書士の勝手な都合で拒否することが、この「信義誠実義務」や「品位保持義務」に違反することになり懲戒請求の対象になるのではないか、という疑問が生じるため問題となります。

【弁護士職務基本規程第5条】

弁護士は、真実を尊重し、信義に従い、誠実かつ公正に職務を行うものとする。

【弁護士職務基本規程第6条】

弁護士は、名誉を重んじ、信用を維持するとともに、廉潔を保持し、常に品位を高めるように努める。

【司法書士法第2条】

司法書士は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正かつ誠実にその業務を行わなければならない。

【司法書士倫理規定第3条】

司法書士は、常に人格の陶冶を図り、教養を高め品位の保持に努める。

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弁護士や司法書士には債務整理の依頼を受けなければならない義務はない

結論からいうと、債務整理の依頼を断られたとしても、その弁護士や司法書士に対して懲戒請求をするのはまず無理だろうと思われます。

なぜなら、弁護士や司法書士には相談者からの依頼を全て受けなければならないという義務は存在しないからです。

この点、”医者”に関しては医師法という法律で正当な事由がない限り診察や治療を拒むことが禁じられていますので(医師法第19条第1項)、病院に行った際に診察や治療を拒否されることは通常は考えられないでしょう。

【医師法第19条第1項】

診療に従事する医師は、診察治療の求があった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。

しかし、弁護士の業務等を規定した弁護士法という法律では、このような依頼を受けなければならない義務を明示した規定は存在しませんから、弁護士が債務整理の依頼を受けるか受けないかはもっぱらその弁護士の自由意思に委ねられることになります。

一方、司法書士の業務について規定した司法書士法という法律では「依頼に応ずる義務」が明文で規定されていますから、司法書士は債務整理の依頼を拒否できないようにも思えます。

【司法書士法第21条】

司法書士は、正当な事由がある場合でなければ依頼(簡裁訴訟代理等関係業務に関するものを除く。)を拒むことができない。

しかし、その「依頼に応ずる義務」の根拠となる司法書士法第21条では、上記のように『簡裁訴訟代理等関係業務に関するものを除く。』と但書が入っており、「任意整理」の業務はこの『簡裁訴訟代理等関係業務』に含まれることになりますから、司法書士においても任意整理の依頼を受けるか受けないかはもっぱらその司法書士の自由意思に委ねられることになるでしょう(司法書士法第21条)。

このように、弁護士や司法書士には「信義誠実義務」や「品位保持義務」はあるものの、債務整理や任意整理の依頼を受けるかうけないかということ自体はその弁護士や司法書士が自由に決めてよいことになっていますから、「債務整理の依頼を拒否した」こと自体が「信義誠実義務違反」や「品位保持義務違反」になるわけではないといえます。

弁護士や司法書士から債務整理を断られても、それだけで懲戒請求を掛けることは困難

以上のように、弁護士や司法書士においては債務整理(任意整理)の依頼を受けるか受けないかはその弁護士や司法書士の自由となっていますから、仮に弁護士や司法書士に任意整理の相談をした際に依頼を拒否されたとしても、それだけで懲戒請求をすることはおそらく無理でしょう。

もちろん、その相談の際に弁護士や司法書士から人格を否定されるような暴言を受けたとか何らかの「信義誠実義務」や「品位保持義務」に違反するような事情があれば別ですが、そうでもない限り、依頼を断られた場合には速やかにその事務所を退席し、他の事務所を探す方が無難だと思います。