任意整理の和解書にはどのような内容が記載されるのか?

任意整理とは、弁護士や司法書士に依頼して債権者との間で債務の減額や利息のカット、分割弁済の協議を行う債務整理手続きの一種をいいます。

任意整理の協議が債権者との間で整うと、債務者(およびその代理人となっている弁護士・司法書士)と債権者の間で「和解書(示談書)」が作成されることになります。

この和解書(示談書)には、任意整理の協議で合意された内容が記載されますが、任意整理の経験がない人にとっては、具体的にどのような内容の文章が記載されるのか、気になる点もあるのではないかと思われます。

そこでここでは、任意整理の手続きで作成される和解書(示談書)に記載される具体的な内容について解説してみることにいたしましょう。

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任意整理で作成される和解書(示談書)の具体的内容

(1)当事者が「甲」「乙」で記載される

一般的な和解書(示談書)では、和解(示談)の当事者である債権者と債務者がそれぞれ「甲」「乙」として表記されるのが通常です。

和解書(示談書)には、文中に和解(示談)当事者の名前(名称)を随所に記載する必要がありますが、そのたびにそれぞれの名前(名称)を記載すると煩雑になるため、「甲」「乙」と略して記載することが多いのです。

この点、任意整理の和解書(示談書)では「債権者」と「債務者」と「債務者の代理人(弁護士または司法書士)」の3者が登場人物として記載されますが、「債権者」と「債務者」のどちらを「甲」または「乙」にするかは、和解書(示談書)を作成する各事務所や各債権者によって異なっています。

もっとも、一般的には、弁護士や司法書士事務所側で作成する和解書(示談書)では「債権者」を「甲」、「債務者」を「乙」、「債務者の代理人」を「乙代理人」として、債権者側が作成する和解書(示談書)では「債権者」を「乙」、「債務者」を「甲」、「債務者の代理人」を「甲代理人」として表示するのが一般的なようです。

【和解書の当事者欄の記載例】

甲 東京都○区〇〇町○番〇号〇〇ビル〇階
第X金融株式会社

乙 〇県〇市〇町〇丁目〇番〇号〇〇マンション〇号室
乙野太郎

乙代理人 〇県〇市〇町〇丁目〇番〇号〇○ビル〇階
〇〇法律事務所
弁護士 乙弁二郎(〇〇弁護士会 〇〇〇号)

(2)残債務の総額

任意整理の和解書(示談書)には、まず最初に債権者との間で合意された債務の総額を記載するのが一般的です。

任意整理の手続きでは、まず最初に弁護士や司法書士の方で利息の再計算を行いますが、債権者側との間で計算方法に若干の違い(※たとえばうるう年に2月29日の利息を参入するかしないかなど)がありますし、利息や遅延損害金をカットするかしないかによって債権者と債務者側の主張する債務額が異なるのが通常です。

そのため、残債務額を確定する作業が必要となるのですが、任意整理の交渉においてその残債務額の協議が整った場合には、その両者で合意された残債務額の金額が和解書(示談書)に記載されることになります。

この点、和解書(示談書)に記載される具体的な表示方法は和解書(示談書)を作成する弁護士や司法書士事務所、もしくは債権者などで異なりますが、「乙は甲に対し、金○円の支払い義務があることを認める」などと記載されるのが一般的なようです。

【和解書の当事者欄の記載例】

(※カードローンやキャッシングの場合)

乙は、甲に対し、甲乙間の金銭消費貸借契約に基づく債務として、金○円の支払義務があることを認める。

(※ショッピングなどの場合)

乙は、甲に対し、甲乙間の立替払契約に基づく債務として、金○円の支払義務があることを認める。

(3)分割払いの方法と振込口座、振込手数料の負担の有無

任意整理の手続きでは、利息の再計算を行っても残ってしまう債務については、その債務元本を原則3年以内で分割弁済するのが通常です。

そのため、任意整理の和解書(示談書)には、債権者との協議で合意された残債務をどのような方法で、どれくらいの期間の分割で債権者に返済していくのかを明確に記載しておく必要があります。

この点、任意整理後の返済は債権者が指定する口座に「銀行振込」で行うのが一般的ですので、まず「債権者の指定する銀行口座の情報」が記載されることになり、「いくら」の残債務を、「何時」から、「何時」まで、「何回」の分割で支払うのかということも具体的に記載されることになります。

また、振込手数料は債務者側が負担することになるのが通常ですので、その点も具体的に記載されることになります。

【和解書の返済方法の欄の記載例】

乙は、甲に対し、前項の金員を次のとおり分割して、甲の指定する下記口座に振込の方法により支払う。振込手数料は乙の負担とする。
(1)割賦金額 月額金○円(但し、初回は金○円)
(2)支払回数 合計○回
(3)支払期日 20XX年○月○日を第1回とし、最終回を20xx年○月○日として毎月末日限り

≪甲の振込口座≫
金融機関名・支店   〇〇銀行・〇〇支店
預金種別・口座番号  当座・1234567
口座名義       〇〇金融株式会社

(4)期限の利益喪失条項

前述したように、任意整理で分割弁済の和解が整った場合は、債権者との間で合意した弁済額を債権者の指定する銀行口座に毎月振り込む必要がありますが、その返済が延滞してしまった場合を想定してあらかじめ「期限の利益喪失条項」が定められるのが一般的です。

「期限の利益」とは、本来であれば一括で返済しなければならない債務を毎月の弁済で支払っても良いとする”利益”のことで、毎月の弁済を滞りなく行っている場合はこの「期限の利益」を受けられることになりますが、返済を怠るとこの「期限の利益」を失い(期限の利益の喪失)、債権者から一括して債務全額の返済を求められることになるのが通常です。

この点、任意整理の和解(示談)の場合にも、和解書(示談書)に「期限の利益の喪失」に関する条項を入れるのが一般的です。

なぜ「期限の利益の喪失」の条項を和解書(示談書)に入れるかというと、「期限の利益の喪失」の条項を和解書(示談書)に入れておかないと、債務者の返済が遅れた場合に、「期限の利益」を喪失させてすぐに裁判などに移行させる必要があるからです(※分割で弁済できないのであれば当然一括で弁済することもできないので、訴訟を提起して差押えなど強制執行をすることができるからです)。

「期限の利益喪失」について和解書に明記されておかないと、債権者は債務者が返済を延滞しても延々と債務者の返済を待ち続けなければならなくなってしまいますから、通常は「2回以上延滞した場合は期限の利益を失う」と定めて、それ以後は一括請求ができるようにし、速やかに訴訟などに移行できるようにしているのです。

【和解書の期限の利益喪失の欄の記載例】

乙が、前項の割賦金の支払を2回以上怠ったときは当然に期限の利益を失い、乙は甲に対し、第○項の金員から既払額を控除した残金及びこれに対する期限の利益喪失日の翌日から支払い済みまで年○%の割合による遅延損害金を直ちに支払う。

(5)請求権の放棄に関する条項

任意整理の和解書(示談書)には、任意整理の協議で合意した分割弁済が合意したとおりに履行された場合には、債権者側でその他の全ての債権を放棄する旨を約する「請求権の放棄に関する条項」を入れるのが一般的です。

任意整理の手続きでは、債務者が本来支払わなければならない「経過利息」や「将来利息」、任意整理の協議が合意に至るまでに発生した「遅延損害金」などが存在していますが、これらの債務については債権者に放棄してもらうのが一般的です。

しかし、債権者が無条件にこれらの債権を放棄するわけではなく、あくまでも任意整理で合意した分割弁済が滞りなく最後まで完済できた場合にだけそれらの債権を放棄するだけであって、仮に返済が途中で滞った場合には、これらの利息や遅延損害金も合わせた全ての債権を請求するのが通常です。

そのため、任意整理の和解書(示談書)には、「和解書記載の弁済が終えられた時は、その他の請求を放棄する」などといった「請求権の放棄に関する条項」が記載されることになります。

【和解書の請求権の放棄の欄の記載例】

乙が、本和解に基づき甲に対し第2項の金員の支払いを終えた時は、甲は乙に対するその余の請求を放棄する。

(6)債権債務の不存在に関する条項

任意整理の和解書(示談書)には、その和解書に明記されたもの以外に債権債務が存在しないことを確認する「債権債務の不存在に関する条項」が盛られるのが一般的です。

任意整理の手続きでは、債権者と債務者の間で発生した借金に関するトラブルをその時点で全て解消させる必要がありますが、「債権債務の不存在に関する条項」が和解書(示談書)に明記されていないと、後日何らかの事情で紛争が蒸し返される恐れもあり、債務者だけでなく債権者としても不都合です。

そのため、任意整理の手続きでは、「債権者と債務者の間にはこれ以上紛争の種になるようなものは何もありませんよ」ということを明文で約束し、両者の間の紛争を「最終的に不可逆的に」解決するために「この和解書に記載した以外の債権債務は存在しない」ということを合意する一文が記入されることになります。

【和解書の債権債務の不存在の欄の記載例】

甲乙は、甲乙間には前記各項を除き何らの債権債務関係も存在しないことを相互に確認する。

最後に

上記の和解書の記載事項はあくまでも一般的なものであって、弁護士や司法書士事務所によっては記載事項が異なる場合もあります。

また、特に大手の消費者金融などによってはその企業の書式による和解書を指定する場合もありますので、債権者によっては若干異なった文章が挿入されることもあります。

もっとも、いずれにしても任意整理を依頼した弁護士や司法書士事務所の方で十分に確認された和解書(示談書)にサインするのが通常ですので、内容の不明な点については弁護士や司法書士に確認し納得できるのであればサインしても特に問題も生じないだろうと思います。