任意整理は郵便物で家族にバレることがあるか?

借金の返済が困難になった場合に、債権者との間で債務の減額や利息のカット、利息の再計算によっても残ってしまう債務について原則3年以内の分割弁済の協議を行う債務整理手続きを任意整理といいます。

自己破産や個人再生、特定調停など他の債務整理手続きと異なり裁判所に申し立てる必要がなく、債権者が承諾する範囲であれば自由な和解を結ぶことができることから、簡易迅速で柔軟な解決が見込めるのがこの任意整理手続きの大きな特徴といえます。

ところで、この任意整理は法律の専門的な知識が必要であることから弁護士か司法書士に依頼して代理人となって交渉してもらうのが一般的ですが、その場合に不安になるのが、弁護士や司法書士に依頼したことで家族に借金のことがバレてしまうことがあるのではないか、という点です。

弁護士や司法書士に依頼した場合、弁護士や司法書士の事務所から書類等が送付されてくることもあると思いますが、その郵送されてきた書類を家族が開封すれば債務整理していることがすぐにばれてしまうでしょう。

また、仮に開封されなかったとしても、そもそも弁護士や司法書士事務所から郵便物が送られることなど普通の生活をしていればあり得ない話ですから、弁護士や司法書士事務所の名称が記載された封筒が届いた時点で「この郵便物は何なの?」と不審がられてしまい、詮索されて借金の存在がバレてしまうこともあるかもしれません。

では、実際問題として、弁護士や司法書士に任意整理を依頼した場合に郵便物で借金のことが家族にバレたりするものなのでしょうか?

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郵便物で家族バレするリスクは避けられない

結論からいうと、任意整理に限らず債務整理の手続きを弁護士や司法書士に依頼した場合には、自宅に郵送される郵便物で家族バレするリスクは一定確率で生じてしまいます。

弁護士や司法書士に任意整理を依頼した場合には、それ以降債権者から直接自宅に請求書や督促状が郵送されることは基本的になくなりますが、弁護士や司法書士事務所から連絡のための書類が送られてきたり、債権者との和解が整った場合には署名捺印のため和解書(示談書)が自宅に送付されてくることもありますから、その郵便物を同居する家族が開封してしまった場合には、当然、弁護士や司法書士に任意整理(債務整理)を依頼していることがバレてしまうでしょう。

また、弁護士や司法書士では通常、その弁護士や司法書士事務所の名称が印字された封筒を使用しているのが一般的ですが、一般の人の人生では弁護士や司法書士に何らかの相談をすること自体ごく稀なことだと思いますから、自宅宛てに郵送された郵便物に弁護士や司法書士事務所の名称が記載されているのを見た時点で、家族から「なんで弁護士(司法書士)なんかから郵便物が送られてくるの?」「何かトラブルに巻き込まれてるの?」などと同居の家族からいらぬ詮索を受けてしまうことは十分に考えられます。

このように、弁護士や司法書士に任意整理(債務整理)を依頼した場合には、弁護士や司法書士から郵便物が郵送されることもありますので、その際に家族バレしてしまうリスクはどうしても発生してしまうことになるのです。

郵便物で家族バレするのを防ぐ方法

以上のように、任意整理(債務整理)を弁護士や司法書士に依頼した場合には、弁護士や司法書士事務所から郵送される郵便物によって家族バレしてしまうリスクが発生してしまうことは避けられません。

もっとも、そのリスクを最小限に抑える方法がないわけではありません。郵便物で家族バレしたくない場合には弁護士や司法書士と相談して郵便物を以下の方法で郵送するように

(1)「局留め」で郵送してもらう

弁護士や司法書士の事務所から送られる郵便物で家族バレしたくない場合は、弁護士や司法書士に依頼する際に、郵便物は全て「局留め」で送ってもらうよう頼んでみるのも一つの方法として有効です。

「局留め」とは、自分あての郵便物を自分が指定する郵便局で受け取るようにすることができる郵便局のサービスのことを言います。

郵便物を送付する側が郵便物の宛名(宛先)に、特定の郵便局を指定して「〇〇郵便局留め」と記載しておくと、その指定された郵便局でその郵便物が留め置かれることになり、その郵便物の名宛人がその郵便局でその郵便物を受け取ることが可能となります。

▶ 郵便局留・郵便私書箱 – 日本郵便

ですから、どうしても自宅に郵便物を郵送されたくない場合は、自宅に郵送が必要となる郵便物を全て「局留め」で郵送してもらうよう、弁護士や司法書士にあらかじめ伝えておくようにしておくと良いかもしれません。

(2)弁護士や司法書士の名前を伏せて送ってもらう

弁護士や司法書士から送られてくる郵便物で家族バレしたくない場合の方法としては、弁護士や司法書士事務所の名称を伏せて送ってもらうという方法もあります。

例えば、「A法律事務所」に任意整理(債務整理)から送られてくる封筒に「A法律事務所」と記載するのではなく、「株式会社A」などという名称を記載して送付してもらうような方法です。

もちろん、そのような「偽名」で送付してくれることに依頼する弁護士や司法書士が承諾してくれることが大前提となりますが、弁護士や司法書士がそのように送付しても差し支えないというのであれば、このような方法で書類を送ってもらうことも可能でしょう。

(3)事務所に取りに行くようにする

どうしても郵便物で家族バレしたくない場合は、弁護士や司法書士事務所から郵便物を郵送するのを一切やめてもらい、郵送が必要となる書類がある場合は事前に携帯に電話してもらうなどして、自分が弁護士や司法書士事務所まで出向いて受領するという方法にするしかないでしょう。

弁護士や司法書士事務所まで出向く必要があるためかなり面倒にはなりますが、このようにしておけば郵便物で家族にバレてしまう可能性はなくなりますので、どうしても家族に知られたくない場合には事務所まで取りに行くようにすることも検討してみる他ないでしょう。

弁護士や司法書士事務所側がミスをすることもある

以上のように、弁護士や司法書士事務所から郵便物で家族バレしたくない場合には、局留めや事務所に受け取りに行くなどの方法を採ることによって、ある程度家族バレすることを防ぐことは可能です。

しかし、弁護士や司法書士の事務所で働く事務員も人間ですので、上記のような方法で郵便物を受け取るように指定していても、何らかのミスで自宅宛てに郵便物を郵送してしまう可能性は否定できません。

実際、私が過去に勤務していた事務所でも、家族に内緒にしている依頼人が郵便物は全て事務所に取りに行くと指定していたにもかかわらず、事務員が手違いで自宅に郵便物を郵送してしまい家族にバレてしまってトラブルになったことがあります。

ですから、上記のような対処法はあるにしても、事務員が人間である以上、100%絶対に家族バレしないということはあり得ないと思いますので、その点はある程度覚悟しておいた方が良いのではないかと思います。

最後に

以上のように、弁護士や司法書士に任意整理(債務整理)を依頼した場合に事務所からの郵便物で家族バレしてしまうリスクはあるものの、局留めなどの手段を取ることによってある程度そのリスクを軽減することは可能です。

しかし、多重債務の原因はほとんどの場合、家計の収支が破たんしてしまっているのが原因と考えられますから、そもそも借金の問題を家族に内緒で処理できたとしても、家計全体の改善が図られない限り根本的な解決にはならないのが通常です。

家計の改善がなされ、借金の根本原因が解消されない限り、たとえ任意整理(債務整理)で借金を処理できたとしても、それはあくまでも一時的なものであって、いずれ将来また借金をするのは目に見えているでしょう。

ですから、借金の問題は本来、家族に話をしたうえで家族全体の問題と認識して、家族全員で家計を改善していくことが必要といえますから、家族に内緒で任意整理(債務整理)をすることはなるべく控え、出来るだけ家族に話したうえで手続きを進めるのが本来の任意整理(債務整理)のあり方なのではないかと思います。