任意整理で和解した後に支払いを延滞したらどうなる?

弁護士や司法書士に任意整理を依頼すると、依頼を受けた弁護士や司法書士が代理人となって債権者と交渉し、利息のカットや債務額の減額、分割弁済の和解(示談)を行ってもらうことができます。

債権者との間に分割弁済の和解(示談)が整えば、依頼した本人と債権者との間で残りの借金に関する分割弁済について記載された和解書(示談書)が作成されることになりますから、その和解書(示談書)で合意した内容にしたがって残りの借金を弁済していくことになります。

ところで、このように任意整理の手続きが終了した後も借金が残っている限り返済は続けなければならないのは当然ですが、ここで疑問が生じるのが任意整理で合意した分割弁済の途中で支払いが延滞したような場合にはどうなってしまうのか、という点です。

任意整理の手続きで弁護士や司法書士が債権者との間で分割弁済の協議をする場合には、債務者本人の家計状況も十分に聴取してから弁済案を提示することになりますが、長い弁済期間の間には収入が減ったり突発的な出費が必要となることもあるでしょうから、何らかの事情で再び返済ができなくなる可能性も否定できません。

では、任意整理で分割弁済の合意をした後の返済期間に支払いを延滞してしまった場合には、具体的にどのような結末になってしまうのでしょうか?

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2回以上連続して支払いを延滞した場合には、一括請求されるのが一般的

任意整理で債権者との間で合意した分割弁済期日に定められた金額を送金できなかった場合には「延滞」ということになりますが、2回以上支払いを延滞した場合には、債権者側から借金の残額の全額を一括請求されるのが通常です。

なぜなら、任意整理で債権者と合意した和解書(示談書)には『支払を2回以上怠ったときは当然に期限の利益を失い……残金及びこれに対する期限の利益喪失日の翌日から支払い済みまで年○%の割合による遅延損害金を直ちに支払う』などという一文が挿入されているのが通常ですので、分割弁済が2回以上遅れた時点ですぐに分割して返済するという「期限の利益」を失うことになって残金全額を一括して支払わなければならなくなるからです。

「2回延滞したら2回分をまとめて支払えば済むだろう」と思っている人も多いかもしれませんが、和解書(示談書)に上記のような一文が入っている場合には、2回支払いを延滞した時点で「毎月の分割で返済することができる」という「期限の利益」を失うことになりますから、債権者に対して残債務額の全額を一括して支払わなければならなくなってしまうのです。

残債務額全額に対する「遅延損害金」も請求される

また、任意整理で分割弁済の和解をした後に分割弁済を2回以上延滞した場合には、その延滞した日の翌日から任意整理で和解した利率に従って遅延損害金も請求されるのが一般的です。

なぜなら、前述したように、任意整理で債権者と合意した和解書(示談書)には『支払を2回以上怠ったときは当然に期限の利益を失い……残金及びこれに対する期限の利益喪失日の翌日から支払い済みまで年○%の割合による遅延損害金を直ちに支払う』などという一文が挿入されているのが通常だからです。

このような一文がある場合には、「仮に2回以上支払いを延滞した場合には残金の全額だけではなく、その残金全額に遅延損害金の利率を乗じた金額を加算して支払います」ということを承諾していることになりますので、残債務の残額だけでなく、それに遅延損害金もプラスした金額を一括して支払うことが強制されることになります。

最終的には自己破産で処理するしかない

以上のように、任意整理で債権者との間で分割弁済の和解をしている場合には、2回以上弁済を怠った時点で期限の利益を失うことになりますから、もはや分割して弁済することはできなくなってしまい、残債務額の全額に遅延損害金をプラスした金額を一括して支払わなければならなくなります。

当然、その金額は高額になるでしょうし、そもそも分割払いが滞る人が一括弁済できるはずがありませんから、宝くじでも当たらない限り返済は無理でしょう。

この場合にどうなるかというと、最終的には自己破産を申し立てるしかありません。

個人再生の申し立てをして債務を5分の1(または最低100万円)まで圧縮するという方法もありますが、任意整理をする際に弁護士や司法書士に相談しているのであればその時点で既に個人再生についても検討しているでしょうから、その時点で個人再生を選択しなかったということは個人再生を申立てるメリットがないケースであったということが想定されますので(例えば総債務の額が100万円を超えていなかったとか、越えていてもその金額がわずかで個人再生による債務圧縮のメリットが希薄だったとか…)、おそらく自己破産にならざるを得ないのではないかと思います。

自動的に自己破産に移行するわけではない

もっとも、任意整理で合意した分割弁済の支払いが2回延滞したからといって自動的に自己破産の手続きに移行されるわけではありません。

そのため、任意整理で合意した分割弁済の途中で2回以上支払いを延滞し、債権者から残債務額の全額と遅延損害金の請求を受けてしまっているときは、再度弁護士や司法書士に依頼して自己破産の手続き(もしくは個人再生など他の手続き)を進めていく必要があります。

(※自己破産は弁護士や司法書士に依頼せずに自分で申立書を作成して申し立てることもできますがそうする人はあまりいないでしょう)

もう一度弁護士や司法書士に任意整理を依頼することは可能か?

以上のように、任意整理で分割弁済の和解をした後に支払いが2回以上延滞した場合には、債権者から残金全額に遅延損害金を加算した金額の一括請求がなされますから、常識的に考えればこのような場合には自己破産をするしかないと思われます。

この場合に再度弁護士や司法書士に依頼して任意整理で分割弁済を組み直してもらうことはできないか、という点が問題となりますが、もちろんそれを受けてくれる弁護士や司法書士がいてくれるならそれも可能でしょう。

しかし、任意整理で分割弁済の和解をしたということは、その任意整理を担当した弁護士や司法書士が十分に本人の家計を調査し余裕をもって返済できるだけの返済原資を確保したうえで弁済計画を策定しているでしょうから、常識的に考えれば再度分割弁済を組むことは難しいのではないかと思います。

▶ 任意整理は二回目でも可能か?

もちろん、以前依頼した弁護士や司法書士がいい加減な家計調査しかせずに無理な弁済計画を作っていた場合であったり、勤務先の事情で給料が引き下がられてしまい当初見込まれた返済原資が確保できなくなったような事情がある場合には別ですが、そのような特別な事情でもない限り、もう一度任意整理で分割和解をすることは事実上難しいのではないかと思います。

前回と同じ弁護士や司法書士に依頼しなければならないか?

なお、任意整理で合意した分割弁済の途中で2回以上支払いが滞り債権者から一括請求がなされている状況で再度弁護士や司法書士に相談に行く場合に、前回任意整理を処理してもらった弁護士や司法書士の事務所に再度相談しなければならないかというと、必ずしもそういうわけではありません。

もちろん、前回任意整理をしてもらった事務所には当時の資料などが残されているでしょうから、前回任意整理をしてもらった事務所に行く方がいろいろな意味で話がスムーズに進むでしょう。

しかし、弁護士や司法書士も人間ですから、前回依頼した弁護士や司法書士と性格的に合わなかったり費用の面で不満があったような場合もあるでしょうから、そのような場合には他の事務所に相談しても一向にかまいません。

最後に

このように、任意整理で合意した分割弁済の途中で2回以上支払いを延滞してしまった場合には、債権者から残債務額の全額に遅延損害金を加算した金額が一括して請求されるのが通常ですので、常識的に考えれば自己破産で処理するありません。

ですから、いったん任意整理で分割弁済の和解を取り結んだ場合には、その弁済を最後までやり遂げて完済することができるよう、家計を見直して無駄な出費をしないようにするなど十分な努力が必要になるのではないかと思います。

仮に分割弁済の途中で支払いが滞るような場合には早めに弁護士や司法書士に相談して適切な対処を採ることが重要であるといえます。