任意整理は、弁護士や司法書士に依頼して、債権者との間で利息のカットや分割返済の和解を取り付けてもらう手続きです。
自己破産や個人再生、特定調停などの手続きと異なり、裁判所に申し立てをしないで済むことから、費用的に安価で迅速な処理が望める点が大きなメリットといえます。
ところで、任意整理は自己破産のように債務の返済が全て免除されるわけではなく、個人再生のように債務の残額が5分の1まで圧縮される手続でもありませんから、分割払いの交渉をしてもらえるとはいっても、原則として借金の元本にあたる金額は全額返済しなければならないのが一般的です。
弁護士や司法書士が交渉しても貸金業者やクレジット会社は利息や遅延損害金のカットには応じても借入元本の減額には応じてくれないことが多いですから、その借入元本は返済しなければならない場合が多いでしょう。
ここで問題となるのが、アルバイトやパートなどの非正規労働者であっても任意整理は認められるのか、という点です。
アルバイトやパート、あるいは契約社員や派遣社員として働いている人は、正社員と事なり終身雇用ではないのが一般的ですから、そのような不安定な状況であっても、任意整理の分割弁済は認めてもらえるものなのでしょうか?
アルバイトやパートでも任意整理はできる
結論からいうと、アルバイトやパート、契約社員や派遣社員といったいわゆる非正規労働者であっても問題なく任意整理で借金を処理することは可能です。
任意整理は残りの借金元金を原則36回(3年)以内の分割払いで返済する和解を取り付けるのが最終的な目的となりますから、残りの借金を最長でも36回(3年)で返済できる資力さえあればアルバイトやパートなどであっても任意整理で処理して何ら問題ないからです。
例えば、パート収入が毎月10万円の人が元本100万円の借金を抱えているような場合で考えてみると、仮にパート労働者が一人暮らしの場合では収入のほとんどを生活費で使ってしまうため任意整理は難しかもしれません。
しかし、仮にこのパート労働者が主婦で、夫の収入が20万円程度あり、夫の収入である程度の生活費を賄うことができる家計状況にあるのであれば、パート収入の10万円のうち3万円程度を分割返済の原資に充てれば100万円の借金も36回の分割で弁済できるでしょう。
ですから、任意整理ができるかは正社員かアルバイト・パートかといった労働者としての雇用状態などではなく、収入と家計の状況によって可否が判断されますので、仮にパートやアルバイトなどの非正規労働者であっても家計から弁済金を余裕をもって賄うことができるのであれば任意整理は可能といえるのです。
正社員でも任意整理できない場合はある
前述したように、任意整理は正社員かアルバイトかといった雇用形態ではなく、収入から生活費を差し引いた毎月の余剰金で余裕をもって借金元本を最長でも3年以内、36回の分割払いで完済できるかといった点で可否が判断されます。
このように考えると、たとえ正社員であっても毎月の収入と支出の金額によっては任意整理できない場合があることがわかります。
たとえば、毎月に月収が30万円の正社員の人が毎月の生活費に最低でも25万円必要であったとすると、毎月の余剰金は5万円しかありませんから、余裕をもって返済をしたい場合には2万円程度しか返済に回せないでしょう。
この場合、仮に100万円の借金があったとすると36回払いで返済しようと思ったら毎月2万8千円程度返済に回さなければなりませんから、不可能とは言えないものの余裕をもって3年間の弁済するのはかなり厳しいといえます。
そのため、このような場合には、任意整理はあきらめて自己破産で処理するか、もう少し家計を切り詰めて毎月7~8万円の余剰金が出る程度まで家計状況を改善して再度任意整理を検討するか、選択を迫られることになります。
※弁護士や司法書士の方針にもよりますが、一般的には収入から毎月の生活費を差し引いた余剰金の3分の1程度の金額が任意整理で余裕をもって返済できる金額と考えられています。
(※たとえば収入が30万円、毎月の生活費が21万円の世帯では、毎月の余剰金は9万円となりますので、この世帯では毎月3万円の分割返済なら任意整理することできると考えられます。)
このように、収入と家計の状況によっては、たとえ正社員であっても任意整理できない場合もあり得ますので注意が必要です。