任意整理(債務整理)しても預金口座は開設できる?

借金の返済が困難になった場合には、弁護士や司法書士に依頼して債権者との間で債務の減額や利息のカット、利息の再計算によっても残ってしまう債務について原則3年以内における分割弁済の協議を行う任意整理の手続きをすることが可能です。

任意整理の交渉によって債権者との間に分割弁済の和解(示談)が整えば、毎月の返済額を大きく見直すことができますから、毎月余裕をもって返済できる収入があるのであれば、任意整理は多重債務の有効な解決策となり得ます。

ところで、任意整理をした場合に気になるのが、弁護士や司法書士に依頼して任意整理してしまうと銀行などの預金口座を開設できなくなってしまうのではないか、という点です。

任意整理に限らず、債務整理の手続きを行ってしまうと信用情報機関に事故情報として登録(※いわゆる「ブラックリストに載る」ということ)されてしまいますが、信用情報機関に事故情報として登録されてしまうと、当然その後は金融機関から融資を受けることはできなくなるのが通常です。

これは、金融機関との取引ができなくなるということを意味しますから、銀行に預金口座を開設する際の審査においても、経済的信用がないという理由で拒否されてしまうのではないかという懸念がどうしても生じてしまいます。

では、任意整理の手続きで借金を処理した場合、銀行などの預金口座を開設する際に何か支障が出てしまうのでしょうか?

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任意整理をしても銀行口座の開設は可能

結論からいうと、任意整理で借金を処理したとしても、銀行や信用金庫などで預金口座を作ることは可能です。何の問題もありません。

確かに、前述したように、任意整理で借金を処理すると信用情報機関に事故情報として登録され、それ以後に新たに融資を受けることは困難となります。

しかし、銀行に「預金口座を開設する」という契約は「消費寄託契約」であり、金融機関から「お金を借りる」という契約は「金銭消費貸借契約」であってその性質は全く異なります。

また、金融機関から「お金を借りる」契約を顧客の立場から見ると、お金を貸す「金融機関」が「債権者」、お金を借りる「一般顧客」が「債務者」となりますが、銀行の「預金口座を開設する」契約を顧客の立場から見る場合では「預金者」が銀行にお金を預ける(貸す)ことになりますので、「預金者」である「一般顧客」が「債権者」、「金融機関」が「債務者」となります。

このように、金融機関から「お金を借りる」契約と、銀行などに「口座を開設する」という契約はその性質も債権債務関係も全く異なることになりますから、「お金を借りる」という契約によって生じた信用情報に関する”事故”は「口座を開設する」という契約の審査に影響を及ぼすことはありません。

したがって、仮に任意整理で借金を処理したとしても、それによって信用情報機関に登録された事故情報は、銀行等に口座を開設する際に何ら影響を与えることはありませんから、たとえ過去に任意整理をしていたとしても、銀行等の預金口座を開設することは全く問題ないということになります。

預金口座が凍結されてしまうことと、預金口座を開設できるかということとは全く別の問題

前述したように、任意整理で借金を処理し、信用情報機関に事故情報として登録されたとしても、その信用情報は銀行預金の口座開設には何ら影響を及ぼしませんから、任意整理後に銀行や信用金庫などで預金口座を開設することは可能です。

この点、銀行のカードローンなどを債務整理の対象とした場合に、その銀行に開設した預金口座が凍結されて預金が引き出せなくなることがあることから、「債務整理で銀行の口座が凍結されるのに何で銀行の預金口座を開設できるんだ?」と疑問に思う人ももしかしたらいるかもしれません。

▶ 任意整理で口座凍結されるのはどんな場合?

しかし、銀行のカードローンを債務整理の対象とした場合に預金口座が凍結されるのは、あくまでもその債務整理の対象となるカードローンを貸し付けている銀行に開設している口座に限られますし、そもそもその口座が凍結されるのはその口座に残っている預金残高を返済を受けられないカードローンの弁済と相殺させるためであって預金口座そのものを解約させるものではありません。

そして、相殺が終わり保証会社からの代位弁済が終了すれば、いったん凍結されていた口座は再び使用できるようになるわけですから(※この点の詳細はこちらのページを参照ください→任意整理で口座凍結されるのはどんな場合?)、任意整理の手続きによって預金口座自体が凍結されたとしてもそれは一時的なものであって、口座自体が解約されるのではないのです。

このように、任意整理をした場合に銀行の預金口座が凍結されてしまう問題と、任意整理をした場合に銀行の預金口座を開設できるかという問題はまったく別の問題として考えるべきものですから、両者を混同して考えないようにすることが必要です。