任意整理とは、弁護士や司法書士に依頼して貸金業者などの債権者と分割返済の話し合いをしてもらう手続きのことを言います。
任意整理を行うと、将来利息をカットして返済計画を組みなおすのが通常となりますから、月々の返済金額を大幅に減少することも出来る場合があるため借金の返済に苦しむ債務者にとっては非常に大きなメリットがあります。
ところで、住宅ローンの返済に苦しむ方は多いと思いますが、では住宅ローンを弁護士や司法書士に依頼して任意整理してもらうことができるのでしょうか?
住宅ローンの月々の返済は高額になることが多いため、任意整理を行って利息のカットや分割返済額の減額ができるとなれば、住宅ローンの返済に苦しむ多くの人にメリットがあるので問題となります。
住宅ローンは任意整理に応じてもらえないのが通常
結論からいうと、住宅ローンを弁護士や司法書士に依頼して任意整理してもらうことはできません。
なぜなら、住宅ローンはそのローンを組んでいる土地建物なりマンションなりに抵当権がつけられていますから、返済が滞った時点ですぐに抵当権を実行し競売に掛けられる(もしくは任意売却される)ことになるからです。
任意整理は裁判所に申し立てる自己破産や個人再生手続きと異なり、強制力がありませんから、任意整理に応じるか否かは受託ローン会社の「任意」となります。
住宅ローン会社からすると任意整理に応じなければならない法的な義務はありませんし、仮に応じたところで利息のカットや弁済金の減少など、住宅ローン会社にとって不利益な処理を迫られるだけですから、担保権(抵当権)を行使して競売や任意整理で処理する方が損失が少なくて済みます。
ですから、弁護士や司法書士に住宅ローンの任意整理を依頼したとしても、住宅ローン会社が任意整理に応じることはまずありません(※それ以前に弁護士や司法書士が住宅ローンの任意整理を受任することは通常あり得ません)。
住宅ローンは弁護士や司法書士から通知が来た時点で代位弁済される
仮に、住宅ローンの任意整理を受けてもらえる弁護士や司法書士がいたとしても、住宅ローン会社は弁護士や司法書士から受任通知(依頼者から任意整理に依頼を受けましたという受任通知)を受け取った時点ですぐに「住宅ローンの返済が停止された」ものとして保証会社から代位弁済を受けることになり、「住宅ローン」というローン自体が消滅して保証会社から一括請求がなされるのが一般的です。
ですから、住宅ローンを任意整理することはできないと考えておいた方が良いと思います。
銀行等に住宅ローンの見直しを依頼するしかない
前述したように、住宅ローンの任意整理には住宅ローン会社(銀行等)の方が応じないのが通常ですから、一般論としていうと住宅ローンを任意整理することはできないということになります。
では、住宅ローンの返済が苦しくなった場合にまったく対処法がないかというとそうでもありません。
そのような場合には、住宅ローン会社に連絡して住宅ローンの見直しをすることが可能です。
住宅ローン会社(銀行等)では、住宅ローンの返済が苦しくなった利用者のために住宅ローンの見直しに応じていますから、自分が住宅ローンを組んでいる銀行等に連絡をして住宅ローンの見直しを相談してみてください。
収入や資産状況によっても異なりますが、毎月の返済金額や返済期間などの見直しを行い住宅ローンの返済計画の組み直しに応じてもらえるところも多いと思いますので、住宅ローンの返済が苦しくなった時点で早めに住宅ローンの借り入れをしている銀行などに相談する方が良いでしょう。
住宅ローン以外の借金がある場合は早めに弁護士や司法書士に相談すること
以上で説明したように、住宅ローンについては銀行などの住宅ローン会社に相談することで住宅ローンの返済額や返済期間の見直しができることが多いですから、返済が厳しくなった時点で早めに住宅ローンの借り入れを行っている銀行などの金融機関に住宅ローンの見直しを相談することが必要です。
ただし、住宅ローンとは別に貸金業者などから借入がある場合には、その住宅ローン以外の借金について早めに弁護士や司法書士などに債務整理の相談を行っておくことが必要です。
住宅ローンの返済に行き詰っているということは、それ以外の借金の返済にも行き詰っているということが推測できます。
そのため、住宅ローンだけを見直しても他の借金の返済が滞り、結局はまた住宅ローンの返済にも窮することになり、結果的に後々住宅ローンの返済にも支障が出てくることは明白です。
ですから、住宅ローンの返済が厳しくなったと感じた時点で早めに弁護士なり司法書士なりに住宅ローン以外の借り入れについて相談しておくことが必要となります。
弁護士や司法書士に住宅ローン以外の借金の債務整理を依頼し、その弁護士や司法書士に住宅ローンの返済があることも告知したうえで住宅ローンについては自分で住宅ローン会社にローンの見直しを打診して返済金額を見直すのがもっとも最善な対処法だと思われます。
こうしておけば、依頼を受けた弁護士や司法書士も住宅ローンの返済があることを認識したうえで住宅ローンの返済に支障がない程度の返済額を念頭に住宅ローン以外の借金について任意整理の交渉ができますから、依頼人に最善の弁済計画を作ることができます。
住宅ローンの返済が厳しいということは、家計全体に何らかの問題を抱えているということですから、それ以外の借金についても放置せずに早めに弁護士や司法書士に相談することが必要なのです。