自己破産では何回ぐらい裁判所に行かなければならないか?

自己破産はネットを駆使して自分で申立書を作成し、裁判所に提出して手続きを進めることも可能ですが、法律の専門知識が必要な場面も多いため、通常は弁護士や司法書士に依頼して行うのが一般的なのだろうと思います。

このように、自己破産の手続きを弁護士や司法書士に依頼した場合には、弁護士や司法書士が代わりに申立書を作成し裁判所に提出してくれますから、自分自身が直接、裁判所と連絡などのやり取りをすることはまずありません。

しかし、弁護士の場合は「代理人」として、司法書士の場合は「書面作成者」として手続きを代行してくれるとはいっても、自己破産の手続きでは審問などの手続きも用意され、裁判官との面接が必要な場面もありますから、裁判所に一切行かなくてもよいかというと、そういうわけにもいきません。

では、実際問題として、自己破産の手続きを弁護士や司法書士に依頼した場合、何回程度裁判所に行かないといけなくなるのでしょうか?

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裁判所に行く回数は担当する裁判官によって異なる

前述したように、自己破産の手続きを弁護士や司法書士に依頼した場合に、何回ぐらい裁判所に行かなければならないかという点が問題となりますが、結論からいうと、その案件を担当する裁判官や、その申立をする裁判所の方針によって異なることになります。

自己破産の手続きにおいて申立人本人が裁判所に呼び出される場合としては、裁判官が「審問」を行うことに決定した場合と、裁判官が「破産管財人を選任」した場合と、管財手続きで「債権者集会」が行われる場合の3つの場合がありますが、いずれの場合においても本人の出廷を求めるか求めないかは裁判官の裁量となりますので、一概に「何回」ということはいえません。

もっとも、自己破産の手続きを「弁護士」に依頼する場合と「司法書士」に依頼する場合とで若干、裁判所に呼び出されるケースは異なりますので、以下、具体的にどのような場合に何回程度裁判所に呼び出されることがあるのか、検討してみることにします。

(1)審問が行われる場合

「審問」とは、自己破産の申立書を裁判所に提出した後に裁判所が裁判官の判断で実施する手続きで、裁判官が申立人を裁判所に呼び出して、申立書に記載された内容について聞き取りを行う面接のことをいいます。

「審問」を行うか行わないかは裁判官の判断次第となりますが、一般的にはほとんどの案件で「審問」は実施されているのが実情だと思いますが、申立人に免責不許可事由などが問題となる事実がなく、申立人が持病などを持っていたり(例えば申立人がうつ病である場合など)する場合には、裁判官が「審問」をしないですぐに免責を出して手続きを終了させることもあります。

なお、「審問」の手続きは特段の事情がない限り1日(1回)で終了するのが通常で、時間も15分程度で終わるのが一般的です。

① 弁護士に依頼する場合

自己破産の手続きを弁護士に依頼した場合において「審問」が行われる場合は、弁護士が代理人として出廷することになりますので、裁判官から特に「申し立て本人を連れてきてください」と求められない限り、申立人本人が裁判所に出廷する必要はありません。

しかし、裁判官が申立人本人から事情を聴取したい場合など「申立人本人を連れてきてください」と本人の出廷を求める場合は、必ず依頼した弁護士と一緒に裁判所に出廷しなければなりません。

したがって、自己破産の手続きを弁護士に依頼した場合に、裁判官が「審問」の手続きを実施することに決定し、かつ、裁判官から「本人を連れてきてください」という指示があった場合には、最低でも1回は裁判所に出廷しなければならないことになります。

② 司法書士に依頼する場合

自己破産の手続きを司法書士に依頼した場合において「審問」が行われる場合は、申立人本人が必ず裁判所に出廷しなければなりません。

なぜなら、司法書士は「簡易裁判所」では弁護士と同じように代理人として手続きを行うことができますが、自己破産の手続きは「地方裁判所」の管轄となり司法書士は代理人として手続きを行うことができないからです。

(※もっとも、ほとんどの裁判所で「審問」への司法書士の同席を認めていますから、実際には依頼した司法書士と一緒に「審問」の手続きに出頭することになります。)

したがって、自己破産の手続きを司法書士に依頼した場合に裁判官が「審問」の手続きを実施することに決定した場合には、最低でも1回は裁判所に出廷しなければならないことになります。

(2)破産管財人が選任された場合

前述した「審問」の手続きが終わると、裁判官がその事件を「同時廃止事件」として簡易な手続きですぐに免責を出して終わらせるか、「管財事件」として破産管財人に詳細な調査等を行わせるか、どちらかに事件を振り分けることになります。

この場合、仮に「管財事件」に振り分けられた場合には、裁判所から「破産管材人」が選任されることになりますが、破産管材人が選任されると、裁判所において裁判官と破産管財人と申立人の3者が同席する面談が行われるのが通常です。

① 弁護士に依頼する場合

この場合、自己破産の手続きを弁護士に依頼している場合は前述したように弁護士が代理人として出廷することになりますので、裁判官から特に「申し立て本人を連れてきてください」と求められない限り、申立人本人が裁判所に出廷する必要はありませんが、裁判官が「本人を連れてこい」と指定した場合は申立人本人が出廷する必要があります。

したがって、自己破産の手続きを弁護士に依頼した場合において、事件が管財事件に振り分けられ、かつ、裁判官が破産管材人との面談のため本人の出廷を求めた場合には、最低でも1回は裁判所に出廷しなければならないことになります。

② 司法書士に依頼する場合

自己破産の手続きを司法書士に依頼している場合は前述したように申立人本人が必ず裁判所に出廷しなければなりませんので、破産管財人が選任された際に裁判所から呼び出された場合も本人が出廷しなければならないことになります(※ただし司法書士の同席は認められます)。

したがって、自己破産の手続きを司法書士に依頼した場合において、事件が管財事件に振り分けられ、かつ、裁判官が破産管材人との面談のため出廷を求めた場合には、最低でも1回は裁判所に出廷しなければならないことになります。

(3)債権者集会が行われる場合

「債権者集会」とは、自己破産の手続きが「管財事件」として処理される場合に、裁判所から選任された破産管財人が、資産調査や配当の経過等を債権者に説明するために行われる手続のことをいい、裁判所の法定で行われるのが通常となっています。

申立人の資産がなく、申し立てに特段の問題点もない場合には「1回」で終わるケースもありますが、申立人の資産が多くあったり、申立時に未回収の資産があって破産管財人が裁判などを提起して回収する必要があるようなケースでは、半年から1年程度の期間に渡って毎月1回程度実施されるケースもあります。

① 弁護士に依頼する場合

自己破産の手続きを弁護士に依頼している場合に債権者集会が開かれる場合、通常は弁護士が代理人として代わりに出廷するため、本人が裁判所に行く必要はありません。

しかし、前述したように裁判官から特に「申し立て本人を連れてきてください」と求められた場合は申立人本人が債権者集会に出廷しなければならないことになります。

したがって、自己破産の手続きを弁護士に依頼した場合において、債権者集会が実施され、かつ、裁判官が本人の債権者集会への出席を求めた場合には、その債権者集会が開催される回数に応じて裁判所に出廷しなければならないことになります。

② 司法書士に依頼する場合

自己破産の手続きを司法書士に依頼している場合は前述したように申立人本人が必ず裁判所に出廷しなければなりませんので、債権者集会が開かれる場合についても申立人本人が必ず出席しなければならないことになります。

(※前述した「審問」とは異なり債権者集会への司法書士の「同席」は認められませんが、司法書士が傍聴席に座り、裁判官からの質問に対して司法書士が代わりに回答するなどの便宜が図られることはあります。)

したがって、自己破産の手続きを司法書士に依頼した場合において、債権者集会が開催される場合には、その開催される債権者集会の回数に応じて裁判所に出廷しなければならないことになります。

最後に

以上のように、自己破産の申立を行った場合において、裁判所に都合何回出廷しなければならないかという点については弁護士に依頼した場合と司法書士に依頼した場合とで若干の異なる結果となります。

もっとも、裁判所に出廷するということは、裁判所で裁判官や破産管財人と話をすることができるということであって、自分が自己破産に至った真の問題点などを指摘してもらえる場ということもできますから、裁判所に行くこと自体はとても有意義な経験になるはずです。

ですから、「裁判所に何回いかないといけないのか」などと否定的に考えるよりも、自分の生活再建に必要不可欠な経験であると積極的にとらえて自己破産の手続きに望む方が良いのではないか、と思います。