自己破産するとパソコンも取り上げられてしまうのか?

自己破産をするとそれまで請求がされていた借金の返済が全て免除されることになります。

しかし、自己破産は「清算手続」の側面も有していますから、自己破産で借金の返済が免除される代わりに所有するすべての財産を失うのが原則です。

裁判所に自己破産の手続きを申立てた場合、金銭的な価値のある物(たとえば貴金属とか車とか)は全て裁判所が売却し、売却代金を返済が受けられなくなった債権者に分配(配当)するのが通常ですから、文字どおり裸一貫で再出発するのが自己破産の手続きということになります。

ところで、自己破産を考えている人の中には「自己破産をしたらパソコンも取り上げられてしまうのではないか」と心配になり、自己破産の手続きを躊躇して思い悩んでいる人も意外に多いようです。

では、自己破産をするとパソコンも取り上げられてしまうのでしょうか?

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自己破産をしてもパソコンは取り上げられない

結論からいうと、自己破産の手続きを行ってたとしてもパソコンを取り上げられてしまうことは、ほぼ100%ありえません。

なぜなら、個人が使っているようなパソコンには一般的に考えて資産価値がないと考えられるからです。

前述したように、自己破産の手続きは清算手続きの面も有していますから、所有している資産は全て裁判所(正確には破産管財人)に売却させられて、その売却代金が債権者に分配(配当)されるのが通常の取り扱いです。

しかし、個人が使用しているような一般的なパソコンは、中古販売店で売却してもさほど価値はなく、値段がついてもせいぜい数万円に過ぎません。

そのような価値の低い財産を取り上げて売却しても、その手続きと債権者への配当などの負担を考えれば事務作業が増えて手続きが煩雑になるだけですから、通常はパソコンなど資産価値の低いものは裁判所が取り上げる財産には含まれないと判断されるのです。

もちろん、パソコンを何十台も所有していたり、スーパーコンピューター並みの装備を有する大規模なパソコンでも有している場合には別ですが、1台とか2~3台のパソコンを所有していたとしても、それが資産価値として認められることはないといえます。

ですから、個人が使っているようなパソコンは自己破産の手続きを行っても取り上げられることはないと考えて差し支えないと思います。

なお、資産価値があるかないかの基準は、概ね20万円とされていますので、売却しても20万円に満たない商品は自己破産をしても裁判所に取り上げられて売却されることはないといえます(※ただし、この基準額は裁判所によっても若干違いがあります)。

ローンで購入している場合は引き揚げられる可能性も

前述したように、個人が使用しているようなパソコンは、仮に自己破産の申し立てをしても「資産価値がない」と判断されるのが通常ですから、自己破産の手続きで裁判所や破産管財人に取り上げられてしまうということはありません。

しかし、そのパソコンがローンで購入したものであり、自己破産する時点でローンの残額が残っている場合は話が異なります。

なぜなら、ローンで購入したものはローンが完済されるまでの間はその所有権が販売店やローン会社に留保されているのが通常ですから、ローンが完済される前に返済を中止することが確定する自己破産をしてしまうと、そのローンで購入した物の所有権を有している販売店やローン会社がその商品を引き揚げてしまうのが一般的だからです。

パソコンに限らず、分割払いのローンで購入した商品は「自分のもの」としてすぐに使用することができますが、契約上はそのパソコンの所有権は購入者にあるのではなく、その商品の販売店かもしくは代金を立て替え払いしているローン会社に残される(留保される)のが通常です。

これは、ローンの返済が滞った際にその商品を引き揚げて売却し、その売却代金を返済がされなくなったローンの残額に充当するためです。

販売した時点ですぐに商品の所有権が購入者に移転してしまうと、いざローンの返済が滞った際に引き揚げようとしても販売店やローン会社は既にその商品の所有権を喪失しており、その商品を引き揚げる法的な根拠がありませんから、引き揚げて売却しその売却代金をローンの残金に充当することができません。

しかし、ローンが完済されるまでその商品の所有権を販売店やローン会社に留保させておき、ローンが完済された時点で購入者に所有権が移転するという契約にしておけば、万が一ローンの返済が滞った際に販売店やローン会社が所有権に基づいて商品を引き揚げて売却することが可能となります。

ですから、ローンで販売する場合には、ローンが完済されるまでの間はその商品の所有権を販売店やローン会社に残して(留保して)おき、ローンが完済された時点で購入者に移転するという契約になっているのです。

このように、仮にパソコンをローンで購入していた場合には、その購入したパソコンの所有権は販売店かローン会社に残っている(留保されている)のが通常ですので、自己破産をすることに決まった場合には、販売店やローン会社が事前に引き揚げて売却し、売却代金がローンの残金に充当されるということもあり得るということになります。

(※ただし、売却しても値段が付かないようなパソコンの場合は仮に所有権が販売店やローン会社に留保されている場合であっても引き揚げられないこともあります)

もっとも、誤解してもらいたくないのは、これは自己破産の手続きとして裁判所に引き揚げられるのではなく、単に販売店やローン会社に引き揚げられるという点です。

ローンで購入した商品については、自己破産をしなくても返済が滞った段階で引き上げられるのが一般的ですので、自己破産を選択せずに例えば任意整理で処理しようとした場合でも引き上げられるのが通常です。