自己破産前にメルカリ等のフリマアプリに出品してはダメな理由

借金の返済が困難になるほど経済的に行き詰ってしまうと当然、生活費の確保もままならなくなってしまうのが自然の摂理というものです。

そうなれば、借金の返済原資や生活費を確保するために何とかしてお金をかき集めようとするのが人の世の常というものですから、最終的には自分が所有している物品等を中古品市場で売却し、生活費や借金の返済原資を捻出しようと考える人が出てくるのも当然といえば当然でしょう。

この点、インターネットの普及した現在では、メルカリなどの不用品買取サイトなども豊富に存在し、それらのシステムを使えば自分が所有する不用品を処分することは簡単ですから、比較的容易に保有する資産を現金に変えることが可能です。

メルカリなどのフリマサイト(フリマアプリ)では、買取希望者が存在する限りより高く、より迅速に自分の持ち物を売却することが可能ですので、生活費や返済原資を確保するための有効な手段となるのは間違いないでしょう。

もっとも、だからといって借金の返済に窮している場合にメルカリなどのサイトを利用することが積極的に推奨できるわけではありません。

なぜなら、自己破産をしなければならないほど返済が困難になってしまった場合にメルカリなどのフリマサイト(フリマアプリ)を利用してしまうと、場合によっては自己破産の免責が受けられなくなったり、最悪の場合には詐欺破産罪として刑事責任を問われる危険性も生じてしまうことになるからです。

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メルカリ等のフリマアプリに出品することが免責不許可事由にあたる理由

自己破産をしなければならないほど返済に窮している状態でメルカリ等のフリマアプリに自分の所有物を出品することでなぜ、自己破産の免責(借金の返済義務が免除されること)を受けられなくなってしまう危険性があるかというと、それは、自己破産の手続きを定めた破産法という法律において債権者への配当に充てられるべき資産(法律上このような財産のことは「破産財団」と呼ばれます)を、自己破産の申し立て前に「債権者の不利益に処分」したり「価値を不当に減少」させたり、「ローンで購入したものを著しく低い値段で処分」するような行為が免責不許可事由として明確に規定されているからです。

【破産法第252条1項】

裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする
一 債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。
二 破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと。
三(以下省略)

メルカリ等のフリマアプリサイトに自分の持ち物を出品して売却する行為が免責不許可事由にあたるとすれば当然、自己破産の手続きを進めても裁判所から免責を受けることはできなくなりますから、抱えている負債(借金)の返済義務が免除されなくなることが確定し、自己破産後もその負債をすべて働いて返済しなければならなくなってしまいます。

ではなぜ、メルカリ等に自分の持ち物を出品して売却することが「債権者の不利益に処分」したり「価値を不当に減少」させたり、「ローンで購入したものを著しく低い値段で処分」するような行為にあたることになってしまうかというと、自己破産の申し立てをしようとしている資産は、そのすべてが債権者への配当に充てられる配当原資になると認識されてしまうからです。

自己破産の手続きは債務者の返済義務を免除(免責)するのと同時に、債務者の所有する資産(財産)を清算する手続きでもありますから、自己破産の申し立てを行う債務者に一定の資産(財産)がある場合には、自由財産として保有が認められるものを除いてすべて裁判所に取り上げられて換価され、その換価代金が債権者への配当に充てられるのが原則的な取り扱いとされています。

この場合、自己破産の申し立てを行う債務者が所有する資産(財産)は、自己破産の手続きが始まれば基本的に裁判所に取り上げられてしまうとが予想されるわけですから、自己破産の申し立てを行う債務者が所有する資産(財産)は「債務者の所有物」であるとはいっても、それはもうすでに「債権者の所有物」ということもできるでしょう。

そうすると、自己破産の申し立てを行う債務者が、その申し立てをする前に「債権者の所有物」といっても過言ではない「債務者の所有物」である自分の持ち物を勝手に処分することは「債務者の所有物」でもある資産(財産)を目減りさせてしまうことになりますから、そのような処分行為を禁止する必要が生じます。

そのため、破産法では自己破産の申立人がその所有する資産(財産)を申し立て前に「債権者の不利益に処分」したり「価値を不当に減少」させたり、「ローンで購入したものを著しく低い値段で処分」するような行為が禁止されているわけです。

この点、メルカリ等のフリマアプリに自分の所有物を出品して売却してしまう行為も、それまで所有していた資産(財産)を失うことになるわけですから、「債権者の不利益に処分」したり「価値を不当に減少」させたり、「ローンで購入したものを著しく低い値段で処分」するような行為にあたるものとして問題にされることは避けられません。

もちろん、その資産(財産)について適正価格を上回る価格で売却できるケースでは「債権者に不利益に処分した」とか「価値を不当に減少させた」ということにはなりませんが、フリマアプリで売却し「お金」に代えた時点で、その手にしたお金は生活費や返済に費消されてしまうわけですから、仮に適正価格以上の価格で売却できたとしても、「債権者の不利益に処分」したり「価値を不当に減少」させたり「ローンで購入したものを著しく低い値段で処分」するような行為にあたるという点では同じでしょう。

このような理由から、メルカリ等のフリマアプリに自分の所有する資産(財産)を出品し売却してしまうことは免責不許可事由にあたる危険性がある行為といえるのです。

※なお、この点についてはこちらのページでも詳しく説明しています→自己破産前のヤフオクなどネットオークション利用がダメな理由

メルカリ等のフリマアプリに出品することが詐欺破産罪にあたる理由

このように、自己破産前にメルカリ等のフリマアプリに自分が所有するものを出品し売却する行為は免責不許可事由に該当し免責が受けられなくなってしまう問題を引き起こすわけですが、それだけにとどまらず、詐欺破産罪(破産法265条1項)に該当し刑事責任を問われる危険性があることも十分に認識しておく必要があります。

【破産法265条1項】

破産手続開始の前後を問わず、債権者を害する目的で、次の各号のいずれかに該当する行為をした者は、債務者(中略)について破産手続開始の決定が確定したときは、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。(中略)。
一 債務者の財産(省略)を隠匿し、又は損壊する行為
二 債務者の財産の譲渡又は債務の負担を仮装する行為
三 債務者の財産の現状を改変して、その価格を減損する行為
四 債務者の財産を債権者の不利益に処分し、又は債権者に不利益な債務を債務者が負担する行為

(1)「債務者の財産を隠匿または損壊する行為」にあたる可能性

上に挙げたように、破産法の265条1項では一定の行為を詐欺破産罪として禁止しているわけですが、メルカリ等のフリマアプリに自分の所有物を出品する行為は、その1号にあげられている「債務者の財産を隠匿または損壊する行為」に該当する可能性があります。

なぜこのように「債務者の財産を隠匿または損壊する行為」が詐欺破産罪として禁止されているかというと、先ほども述べたように自己破産の申し立てを行う債務者の所有する資産(財産)は自己破産の手続きが始まれば裁判所に取り上げられて債権者への配当に充てられることが決まっていることを考えれば債務者の資産(財産)があったとしてもそれはもはや「債権者の資産(財産)」であって債務者の資産(財産)ではないといえるので、その資産(財産)が失われてしまうことを防ぐ必要があるからです。

この点、先ほども述べたようにメルカリ等のフリマアプリに自分の所有物を出品して売却してしまえば、たとえ適正価格以上の価格で売却できたとしても、その売却されまたは売却して受け取った代金を費消してしまった分だけ、もともとあった資産(財産)が「隠匿」または「損壊」されてしまうことにつながってしまうでしょう。

このような理由から、自己破産の申し立て前にメルカリ等のフリマアプリに出品する行為が詐欺破産罪として処罰の対象にされる危険性があるといえるのです。

(2)「債務者の財産の現状を改変して価格を減損する行為」にあたる可能性

また、メルカリ等のフリマアプリに自分の所有物を出品する行為は、この破産法265条1項3号の「債務者の財産の現状を改変して価格を減損する行為」に該当する危険性があることも認識しておく必要があります。

なぜなら、先ほども述べたようにメルカリ等のフリマアプリに自分の所有物を出品し売却してしまうと、その出品した商品が「お金」という貨幣紙幣(金銭)に変換されてしまうことになるわけですから、それは「財産の現状を改変」してしまうことにつながりますし、仮に売却価格が他の中古品買取店の買取価格よりも低い価格になってしまったようなケースでは、その出品した商品の価格が「減損」してしまうことになるからです。

ですから、フリマアプリに出品し売却すること自体がこの破産法265条1項3号に挙げられている「債務者の財産の現状を改変して価格を減損する行為」に該当する危険性があることを考えれば、そもそもフリマアプリに出品などすることは控えるべきということが言えるのです。

(3)「債務者の財産を債権者の不利益に処分」したことになる可能性

さらに、メルカリ等のフリマアプリに自分の所有物を出品する行為が破産法265条1項4号に挙げられた「債務者の財産を債権者の不利益に処分」することにつながる可能性がある点も問題です。

先ほども述べたようにメルカリ等のフリマアプリに自分の所有物を出品すると、その出品した商品が適正価格よりも低い値段で買い取られることもありうるわけですから、仮にそうなった場合は「自己破産の手続きで債権者への配当に充てられるべきであった資産(財産)を本来よりも安い値段で売却した」と判断されて「債権者の不利益に処分した」ものとしてこの「債務者の財産を債権者の不利益に処分」したということで問題にされてしまう危険性が生じます。

ですから、その意味でも詐欺破産罪として責任が問われる可能性があるといえるので、自己破産の申し立ての前にメルカリ等のフリマアプリに自分の所有物を出品することは慎まなければならないといえるのです。

最後に

以上で説明したように、自己破産の申し立てが避けられないほど返済に窮している状態にあるにもかかわらずメルカリ等のフリマアプリに自分の所有物を出品してしまうと、後の自己破産の手続きにおいて免責不許可事由の問題を生じさせたり、詐欺破産罪の責任が問われる事態が生じることもあり、取り返しのつかないことにならないとも限りません。

ですから、仮に返済が困難になったというような場合には、無理な返済や生活を続けるために自分の所有物をフリマアプリ等に出品して売却したりするのではなく、早めに弁護士や司法書士に相談し、適切な助言を受けて借金を整理することが必要になるといえるのです。