自己破産の手続きで「犯罪」にあたる行為には何がある?

(※画像はイメージです。本文の内容とは一切関係ありません。)

自己破産の手続きは、債務者が負担している債務(借金)の返済義務を裁判所において法的に免除(免責)させる手続きですが、債権者の立場に立てば本来であれば債務者に対して請求できるはずのお金を請求できなくなることを意味しますので、その手続きは裁判所の監視のもとに厳しくチェックされることが必要です。

そのため、破産法という法律では、破産の手続きに関して債務者(自己破産の申立人)に何らかの「不正な行為」が見られる場合に「一定の刑罰」を与えることにして、債務者(自己破産の申立人)が不正な行為によって免責を受けることがないように手続きの公正性を担保しています。

「一定の刑罰」が与えられるということは、すなわちその対象となる不正な行為は「犯罪行為」となりますので、債務者(自己破産の申立人)が不正な行為を行うこと自体を「犯罪行為」として処罰することによって、債務者(自己破産の申立人)が資産の隠匿(資産隠し)や債権者に対する妨害行為などを行わないように、制限をかけているわけです。

では、実際に自己破産の申し立てを行う場合には、具体的にどのような行為をした場合に「犯罪行為」に該当し、「懲役」や「罰金」など刑事上の刑罰を受ける対象となるのでしょうか?

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「10年以下の懲役」もしくは「1000万円以下の罰金」に処せられる(又は併科)犯罪

前述したように、自己破産の手続きでは一定の不正な行為をした債務者(自己破産の申立人)に対して刑罰をもって処罰することが定められていますが、その中でも最も重い刑罰が「10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金(又は併科)」となります(破産法265条1項)。

【破産法265条1項】

破産手続開始の前後を問わず、債権者を害する目的で、次の各号のいずれかに該当する行為をした者は、債務者(中略)について破産手続開始の決定が確定したときは、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。情を知って、第四号に掲げる行為の相手方となった者も、破産手続開始の決定が確定したときは、同様とする。
一 債務者の財産(中略)を隠匿し、又は損壊する行為
二 債務者の財産の譲渡又は債務の負担を仮装する行為
三 債務者の財産の現状を改変して、その価格を減損する行為
四 債務者の財産を債権者の不利益に処分し、又は債権者に不利益な債務を債務者が負担する行為

この破産法265条2項に規定された「10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金(又は併科)」に処せられる行為は一般に「詐欺破産罪」と呼ばれますが、大きく分けて次の(1)~(5)の5つの種類に分けられます。

(1)財産を隠匿または損壊する行為

①「隠匿」の例

財産を「隠匿」する行為としては、債務者(自己破産の申立人)が本来所有している資産があるにもかかわらず、自己破産申立書の財産目録に記載しなかったり、裁判官や破産管財人からの聴取に対して「資産はない」などと嘘の申告をしたような場合をいいます。

財産をたとえば、A銀行、B銀行、C銀行にそれぞれ預金残高があるにもかかわらず、C銀行の預金を裁判所に取り上げられたくないと考えてA銀行とB銀行だけを申立書に記載してC銀行の預金を申告しなかったり、解約返戻金が発生する生命保険があるにもかかわらず、その解約返戻金が債権者への配当に充てられることを防ぐためにその生命保険の存在を隠して自己破産の申し立てを行う場合などが代表的でしょう。

②「損壊」の例

財産を「損壊」する行為としては、例えば買取価格が20万円を超える自動車を所有している場合に、裁判所(破産管財人)に取り上げられて売却され売却代金が債権者への配当に充てられることになるのを防ぐために、事前に自分でその自動車に傷をつけ、買取価格が20万円にならないような状態にするような場合が代表的です。

このような「損壊」行為は、本来であれば債権者が受けられるはずの配当金を減少させるだけでなく、資産価値を減少させることで自己が保有できる資産の範囲を拡大させる行為として資産隠しと同様の結果となることから、債権者の利益を害して不当に裁判所から免責を受ける行為として刑罰をもって禁止しているのです。

(2)財産の譲渡または債務の負担を仮装する行為

①「財産の譲渡を仮想」する行為の例

「財産の譲渡を仮想」する行為とは、所有している財産を裁判所に取り上げられて債権者への配当に充てられてしまうことを防ぐため、「本当は譲渡していない」にもかかわらずあらかじめ「他人に譲渡」した「体」を「装って」、「譲渡したように見せかける」ような行為をいいます。

たとえば、配偶者のある男性が自己破産する場合に、自分名義の自動車が取り上げられてしまうのを防ぐために自己破産の申し立て前に自動車の所有者名義を「妻」名義に変更してしまうようなケースが代表的です。

②「債務の負担を仮想」する行為の例

「債務の負担を仮想する」行為とは、本来は債務を負担していないにもかかわらず、自己破産の申し立て前に、「他人から債務を負担した」ような「体」を「装って」、その債務を負担した相手に「負債があるように見せかける」ような行為をいいます。

自己破産の手続きでは債務者(自己破産の申立人)が債務を負担している相手は債権者の財産から配当を受ける権利を有していますので、自己破産の手続きで「債務の負担を仮想」させた人間がある場合は、その「債務の負担を仮想」している人間に対しても配当を与えることができますから、その「債務の負担を仮想」している人間に対して配当される財産の価格の分だけ債務者(自己破産の申立人)の資産が裁判所に取り上げられて債権者への配当に回されることを防ぐことが可能です。

例えば資産が300万円ある状態で自己破産する債務者(自己破産の申立人)の債権者がA(Aに対する借金は1000万円)とB(Bに対する借金は500万円)の2人であった場合はAは200万円、Bは100万円の配当を受けることになるのが通常ですが、仮にこの場合に債務者(自己破産の申立人)が申し立て前にCに対して1500万円の借金があることを「仮想」したとすると、Cも配当に参加することになるためCが150万円の配当を受ける一方で、Aは100万円、Bは50万円の配当しか受けることができなくなってしまいます。

そうなると、「仮想された債権者(この例のC)」に配当される部分の資産をあとでCから譲り受けることで資産の流出を防ぐことができる反面、本来はより多くの配当を受けるはずであったAやBがが損失を受けることになるのですから、その債務者(自己破産の申立人)は本来であれば取り上げられるはずの資産の一部分を隠匿(資産隠し)できることになってしまうでしょう。

このような不正行為を防ぐ必要があるため「債務の負担を仮想」する行為についても重い刑罰をもって制限がかけられているのです。

(3)財産の現状を改変してその価格を減損する行為

「財産の現状を改変してその価格を減損する行為」とは、自分が保有する資産が裁判所に取り上げられて債権者への配当に充てられることを防ぐために、あえてその資産の現状に元に戻せないような変更を加えて、その資産そのものの価値を減少させるような行為を言います。

具体例を挙げるのは少し難しいですが、たとえば所有している資産価値のあるクラシックカーを裁判所に取り上げるのを防ぐため、車体の塗装を塗り替えることによって買取価格を減少させ、資産価値を故意に落とすことによって裁判所に資産価値がないと判断させるようなケースが妥当するのではないかと思います。

(4)財産を債権者の不利益に処分する行為

「財産を債権者の不利益に処分する行為」とは、所有している資産価値のあるものを「裁判所に取り上げられて換価されれば得られたであろう価格」よりも低い値段で売却してしまうようなケースを言います。

たとえば、リサイクル店に持ち込めば50万円で買い取ってもらえるようなダイヤのネックレスを所有しているにもかかわらず、自己破産の申し立て前に友人に10万円で売却してしまうようなケースが代表的です。

(5)債権者に不利益となる債務を債務者が負担する行為

「債権者に不利益となる債務を債務者が負担する行為」とは、たとえば「夫」が自己破産する場合に、申し立ての直前に「夫の友人」が「夫の妻」から借り入れている借金の保証人になるような場合が代表的な例として挙げられるかと思います。

このようなケースだと、自己破産する「夫」の「妻」が「夫が保証人となっている借金」の保証人となって「夫」の自己破産手続きに「債権者」として参加して配当を受けることができるようになりますので、その「妻」に配当がなされる分、自己破産する「夫」の資産が減少し、本来であれば配当を受けられるはずであった債権者が損失を受けることになってしまいます。

このような行為は「債権者に不利益となる債務を債務者が負担」することによってその負担した分の資産を隠匿(資産隠し)することにつながることから重い刑罰を科すことで制限を加えているのです。

「5年以下の懲役」もしくは「500万円以下の罰金」に処せられる(又は併科)犯罪

「担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって債務者の義務に属せず又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないもの」をする行為

「5年以下の懲役」もしくは「500万円以下の罰金」に処せられる(又は併科)行為としては「特定の債権者に対する担保の供与等の罪」が破産法266条に規定されています。

【破産法266条】

債務者(中略)が、破産手続開始の前後を問わず、特定の債権者に対する債務について、他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって債務者の義務に属せず又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをし、破産手続開始の決定が確定したときは、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

他の債権者を害する目的で「担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって債務者の義務に属せず又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないもの」をする場合の例としては、たとえば土地を所有している状況で自己破産をしようとしている「夫」が、申し立て前に「夫の妻」が「夫」に貸し付ける貸付金の担保として「夫の所有する土地」を差し出して物上保証するような場合(夫の土地に妻を債権者とする抵当権を設定するようなケース)が代表的な例として挙げられます。

このような「担保の供与」を認めてしまうと、自己破産の手続きとは別に「夫の土地」が担保権の実行として競売にかけられ他の債権者が配当を受けられない一方で夫の妻がその「夫の土地」の資産価値分の資産を受け取ることになりますから、夫としては資産の流出を防ぐことができ事実上の資産の隠匿(資産隠し)ができることになってしまうことから刑罰をもって禁止されることになっています。

「3年以下の懲役」もしくは「300万円以下の罰金」に処せられる(又は併科)犯罪

(1)「破産管財人の説明を拒み又は虚偽の説明をする」行為

「3年以下の懲役」もしくは「300万円以下」の罰金に処せられる(又は併科)行為の一つ目は、「説明及び検査の拒絶等の罪」として破産法の268条に規定されています。

 【破産法268条】

第四十条第一項(中略)の規定に違反して、説明を拒み、又は虚偽の説明をした者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。(以下省略)

ここでは、自己破産の申立人が破産管財人から聴取を受けた事項に説明することを拒否したり、虚偽の説明をしたり、破産管財人の検査を拒否したりした場合を処罰の対象とすることが定められていますので、「管財事件」として自己破産の手続きが処理される場合において裁判所から選任される破産管財人の調査を拒んだり、虚偽の説明を行ったりした場合には、「3年以下の懲役」もしくは「300万円以下」の罰金という刑事責任を問われる可能性もあると考えたほうがよいでしょう。

(2)「財産目録の提出を拒否」または「虚偽の財産目録を提出」する行為

「3年以下の懲役」もしくは「300万円以下」の罰金に処せられる(又は併科)行為の二つ目は、「重要財産開示拒絶等の罪」として破産法の269条に規定されています。

【第269条】

破産者(中略)が第四十一条(中略)の規定による書面の提出を拒み、又は虚偽の書面を裁判所に提出したときは、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

自己破産の手続きでは申立てに際して自分が所有する資産価値のあるものをすべて「財産目録(裁判所によっては資産説明書)」に記載して裁判所に提出しなければなりませんが、その際に財産目録の提出を拒んだり、虚偽の財産目録を退出したり、記載すべき資産を記載しないまま作成した財産目録を提出したような場合には、この刑事罰の対象となるので注意が必要でしょう。

(3)「業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅、偽造、変造」する行為

自己破産の申立人が「業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅、偽造、変造」する行為も「3年以下の懲役」もしくは「300万円以下」の罰金に処せられる(又は併科)行為として厳しく罰せられます。

【破産法270条】

破産手続開始の前後を問わず、債権者を害する目的で、債務者の業務及び財産(中略)の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造した者は、債務者(中略)について破産手続開始の決定が確定したときは、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。(以下省略)。

(4)裁判官の審尋において「説明を拒み」または「虚偽の説明」をする行為

自己破産の申立人が、裁判所で行われる裁判官の「審尋」の手続きにおいて、裁判官から聴取される事項について説明を拒んだり、事実とは異なる説明を行った場合には「審尋における説明拒絶等の罪」として処罰されることになります。

【破産法271条】

債務者が、破産手続開始の申立て(中略)又は免責許可の申立てについての審尋において、裁判所が説明を求めた事項について説明を拒み、又は虚偽の説明をしたときは、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

自己破産の申立書を裁判所に提出すると、裁判所に呼び出されて裁判官と面接する「審尋」が行われるのが通常ですが、その「審尋」の際に嘘をついてしまうと刑事罰の対象とされてしまう可能性もあるため注意が必要です。

(5)「破産管財人の職務を妨害」する行為

「偽計」又は「威力」を用いて破産管財人の職務を妨害した場合も、上記と同じように「3年以下の懲役」もしくは「300万円以下」の罰金に処せられる(又は併科)ことになります。

(破産管財人等に対する職務妨害の罪)
第二百七十二条 偽計又は威力を用いて、破産管財人、保全管理人、破産管財人代理又は保全管理人代理の職務を妨害した者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

「偽計」又は「威力」を用いて、というのは一般に言う「威力業務妨害罪」とか「偽計業務妨害罪」と同じと考えて差し支えないと思います。

ですから、例えば裁判所から選任された破産管財人(※通常は裁判所に備え置かれている管財人名簿に記載された弁護士が選任されます)の調査を妨害するために、その破産管財人が所属する弁護士事務所に無言電話をかけまくったり、破産管財人の聴取のために破産管財人の事務所に出向いた際に激高して職務に支障をきたすような行為を行った場合には、「3年以下の懲役」もしくは「300万円以下」の罰金という刑事罰によって罰せられる可能性もありますので注意が必要です。

最後に

以上のように、自己破産の手続きにおいては一定の不正な行為があれば、「10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金」または「5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金」もしくは「3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金」に処せられることになります。

これはもちろん「刑事罰」となりますので、警察に逮捕されて有罪判決を受ければ収監されるウこともあるということです。

もちろん、ほとんどの人が資産隠しなど不正行為をせずに粛々と手続きを進めていくものと思われますが、中には弁護士や司法書士に申告しなけりゃバレないだろうと考えて資産を隠したりする人もごくまれにいるようですので、そのようなことの無いように誠実に手続きを進めていくことが必要と言えるでしょう。

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