自己破産すると取締役や監査役など会社の役員になれなくなる?

スポンサーリンク

借金の返済が困難になり、利息の再計算を行っても残存債務を3年以内で分割弁済できないような場合には、最終的に自己破産の申立を行うしかありません。

裁判所から自己破産による「免責」の決定が出されれば、どれだけ多額の借金が残っていたとしても、債権者はその免責を受けた債務者に対する債権を法律的に行使することができなくなるため、債務者は全ての借金から事実上逃れることができ、生活の再建が図れるようになるからです。

しかし、自己破産は清算手続きの性質を有していますから、自己破産の手続きで借金の返済が免除される一方で、一定の不利益を受けてしまうことは避けられません。

たとえば、自己破産の手続きではその所有する資産(たとえば土地や建物、車、20万円を超える貴金属や銀行預金、生命保険の解約返戻金など)は原則として裁判所(破産管財人)に取り上げられてが換価され債権者に案分(配当)されるのが原則ですし、自己破産の手続き中は警備員や保険の募集人(保険の販売員)など一定の職種に就くことができなることはよく知られています。

ところで、この自己破産の手続きで生じる不利益に関して、過去に自己破産をした人は取締役や監査役など会社の役員になることができなくなるのではないか、という問題があります。

取締役など会社の役員は、会社という法人の大切な資金や資産を管理しているうえ、その会社に勤務する労働者に給料を支払うべき義務を有していますが、自分自身の家計の管理も出来ず自己破産してしまうような人間が、そのような重要な地位に就くことは是認されるべきではないと考えられるからです。

では、過去に自己破産した経験がある人は、将来的に会社の取締役や監査役といった役員に主任することはできなくなってしまうのでしょうか?

自営業者など個人事業主の人は将来的に自分が役員に就任したうえで法人化する予定の人もいるでしょうし、サラリーマンでも出世して最終的には取締役になることを目標にしているひともいるでしょうから、そのような人にとっては自己破産によって会社の役員に制限が掛かることは極めて重要な関心毎となるため問題となります。

スポンサーリンク

自己破産の「手続き中」は会社の役員(取締役)になれない

結論からいうと、「自己破産の手続き中」は取締役や監査役など会社の役員に就任することはできなくなります。

「自己破産の手続き中」とは、「裁判所に自己破産の申立を行い、裁判所から免責許可決定が出され、その免責の許可決定が確定するまで」の間のことを言います。

自己破産の申立を裁判所に行った場合、まず裁判所がその申立書をチェックして問題がなければ「開始決定」が出されますが、その後裁判所でその自己破産の申立の審理を行い、資産がある場合には売却し債権者に配当を行ったうえで問題がなければ裁判所から「免責許可決定」が出されます。

「免責許可決定」は「確定」しなければ効力が生じませんが、「確定」するまでは官報公告などの手続きに1か月程度の日数を要するため、「免責許可決定」が出されてから約1か月程度経過してから「免責許可決定」が「確定」し自己破産の手続きが終了するのが通常です。

このように、裁判所から自己破産の「開始決定」が出されてから「免責許可決定」が「確定」するまでの間、つまり「自己破産の手続き中」は、自己破産を申し立てた申立人はいわゆる「破産者」ということになります。

ところで、会社の取締役や監査役などに就任する資格については、会社法という法律に規定がありますが(取締役については会社法331条1項、監査役については335条1項)、そこでは「破産者」は欠格事由として明記されていませんので、会社法上は仮に「自己破産の手続き中」にある「破産者」であっても取締役や監査役などに就任することは何ら差し支えありません。

しかし、取締役や監査役など会社の役員に就任するためには、株式会社であれば株主総会で行われる取締役または監査役の選任決議を経る必要がありますから、取締役や監査役など会社の役員たる地位は、会社の株主から「委任」を受けた委任契約に基づく必要があることになります。

この点、「委任」については民法にその規定がありますが、民法では委任契約の受任者が「破産手続開始の決定を受けたこと」が当然に委任契約が終了する事由として明記されています(民法第653条第2号)。

【民法第653条】

委任は、次に掲げる事由によって終了する。
第1号 委任者又は受任者の死亡
第2号 委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと
第3号 受任者が後見開始の審判を受けたこと。

このように「破産手続開始の決定を受けた」状態にある人、言い換えれば「破産手続開始の決定を受けて、その破産手続きがいまだ終了していない状態にある人」、つまり「自己破産の手続き中」にある人(破産者)は、株主から取締役や監査役として「委任」されるための「委任契約」を結ぶこと自体ができなくなってしまいますから、株主総会で取締役や監査役などに選任されることができないということになります。

以上のように、裁判所から自己破産の「開始決定」が出されてから「免責許可決定」が「確定」するまでの間、つまり「自己破産の手続き中」は、株主から株主総会で「委任」を受けること自体ができませんので、「自己破産の手続き中」は会社の取締役や監査役などの役員に就任することはできないということになります。

「免責許可決定」が「確定」したあとは役員に就任することができる

もっとも、取締役や監査役など会社の役員になれないのは、「自己破産の手続き中」に限られますので、「自己破産の手続きが終了した後」は問題なく取締役や監査役などの役員に就任することは可能です。

前述したように、自己破産の手続きは「免責許可決定」が「確定」することによって終了し、「復権」して「一般の普通の人」に戻ることになりますから、「免責許可決定」が「確定」した後は、前述した民法第653条第2号にいう「破産手続開始の決定を受けた」状態はすでに消滅してしまっていることになります。

したがって、「免責許可決定」が「確定」した後は、株主から株主総会で取締役や監査役などの役員になることを「委任」されることに差し支えはありませんから、「免責許可決定」が「確定」した後は何ら問題なく会社の取締役や監査役など役員に就任することは可能になるといえます。

最後に

このように、自己破産の手続き中は委任契約ができないことから取締役や監査役など会社の役員になることはできませんが、自己破産の申立を行って裁判所から出された「免責許可決定」が「確定」した場合には、その後に取締役や監査役など会社の役員に就任することは何ら問題ありません。

ですから、仮に将来的に会社の役員になる予定があったり役員になろうとしている場合には、早めに弁護士や司法書士に相談し、自己破産も手続きを滞りなく終わらせてなるべく早く「免責許可決定」が「確定」するよう手続きを進める必要があるといえるでしょう。