親が自己破産しても教育ローンが利用できる2つの方法

子供を持つ親が自己破産する場合に気になるのが、親が自己破産してしまうと子供の教育ローンが利用できなくなるのではないか、という点です。

借金の返済に苦しむ人は経済的に瀕していることが予想されるため、その「子」が高等教育を受けようと考えている場合には、金融機関が提供する教育ローンを利用しようと考えるのが通常でしょう。

しかし、「親」が自己破産してしまうと「自己破産した」という事故情報が「JICC」や「CIC」「全国銀行協会」といった信用情報機関に5年から10年の間登録されてしまうのは避けられませんから、その事故情報が登録されている期間はその「親」が「子」の教育ローンの保証人や連帯保証人になることが制限されることになります。

▶ 自己破産した場合のデメリットとは?

そうなると当然、「子」が教育ローンを借りる際に必要となる保証人や連帯保証人が付けられなくなってしまいますから、「自己破産した親の子供」が教育ローンを借りることができなくなるという問題が生じてしまうわけです。

もっとも、このような問題が生じるとはいっても、「親」が自己破産した場合にその「子」が教育ローンを一切利用できなくなるというわけでもありません。

なぜなら、以下に記すように「親」が自己破産することで信用情報機関に事故情報が登録された場合であっても、その「子」が教育ローンを利用する方法が最低でも2つは用意されていると考えられるからです。

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「親」以外の親族等に保証人(連帯保証人)になってもらうことで解決する

先ほども述べたように、「親」が自己破産した場合には「その親が自己破産した」という事故情報が「JICC」や「CIC」「全国銀行協会」といった信用情報機関に5年から10年の期間登録されることになるため、その事故情報が登録されている期間は、その「自己破産した親」は新たな借り入れを行うだけでなく、他人の保証人や連帯保証人になることも制限されることは避けられません。

「過去に自己破産の免責によって借金の返済をせず返済義務を法的に逃れた前歴がある人」が保証人や連帯保証人に就任するような契約に融資をすることは、融資した債権が回収できなくなることが容易に予想されるため融資を行う金融機関や貸金業者等が審査の段階で撥ねてしまうからです。

この点、教育ローンの場合には「銀行」が融資を行うものの他にも「学校」が独自に融資を行うものや「日本政策金融公庫」が取り扱う国の教育ローンも存在しますが、いずれの場合も同じです。

「銀行」が取り扱う教育ローンでは、融資を受ける学生の保証人について、先ほども述べた「全国銀行協会」に信用情報の照会を行うことになりますので、その教育ローンの融資を受ける保証人(連帯保証人)になる「親」が自己破産している場合には、審査の段階で「保証人(連帯保証人)として不適格」と判断されることになり、その「子」の教育ローンの審査は通らないことになるのが通常です。

また、「学校」が独自に取り扱っている教育ローンもオリコ(オリエントコーポレーション)等の信販会社が提供する教育ローンと提携するものが一般的で、「学校独自」の教育ローンを利用する場合も、その審査の段階で「JICC」や「CIC」といった信用情報機関に保証人(連帯保証人)の信用情報が照会されるのが通常ですから、「親」が自己破産していればその「子」の教育ローンの審査は「保証人(連帯保証人)が不適格」と判断されて却下されてしまうのが容易に想定できるでしょう。

日本政策金融公庫の取り扱う教育ローンについては日本政策金融公庫が「全国銀行協会」や「JICC」や「CIC」といった信用情報機関に加盟しているのかという点が不明確なので断言はできませんが(※注1)、仮にそれらの信用情報機関に加盟していないとしても独自の判断で信用情報を収集している可能性も否定できないので「親」が自己破産した場合に「子」の日本政策金融公庫の教育ローンの審査が「保証人(連帯保証人)が不適格」と判断されて却下されてしまう可能性は否定できないものと考えられるでしょう。

【※注1】
日本政策金融公庫は教育ローンなど貸金業等を営む団体ではありますが、「JICC」や「CIC」のウェブサイトで確認した限りいずれの信用情報機関にも加盟していないようです。
▶ 加盟会員一覧(な行)|CIC
加盟会員検索(二)|JICC
また、日本政策金融公庫は銀行業は行っていないと考えられるため「全国銀行協会」にも加盟していないのではないかと推測できますが、正確なところは不明です。

このように、「親」が自己破産した場合に「その子」が教育ローンを利用しようとする場合には、その「親」がその教育ローンの保証人(連帯保証人)になることができなくなってしまうため「その子」が教育ローンの審査で落とされてしまうという問題が生じるわけです。

もっとも、この点の問題については容易に解決が可能です。

なぜなら、自己破産した親の子が教育ローンの審査に通らないのは、これまで述べたようにその「自己破産した親」が「子」の教育ローンの「保証人(連帯保証人)になろうとするから」であって、「自己破産した親」以外の人に保証人(連帯保証人)になってもらえば、「親」の自己破産の事故情報は「子」の教育ローンの審査に一切影響を及ぼすことがないため、「親以外の人」に保証人(連帯保証人)になってもらうことができればその問題は容易に解決することができるからです。

たとえば、「親」が自己破産した場合であっても「おじ・おば」や「祖父・祖母」などが保証人や連帯保証人になってくれるのであれば、その「おじ・おば」や「祖父・祖母」などが自己破産など債務整理をしていない限り信用情報の事故情報が問題になることはないわけですから「子」の教育ローンの審査は問題なく合格するでしょう。

この点、教育ローンを取り扱っている金融機関では保証人や連帯保証人の資格を「4親等以内の親族」まで認めているところが一般的で(※注2)「おじ・おば」や「祖父・祖母」だけでなく、たとえば「いとこ」などでも保証人(連帯保証人)になれるわけですから、よほど親戚の少ない家庭でない限り、保証人(連帯保証人)になってくれる人を見つけるのにそれほど支障はないものと考えられます。

このように、たとえ「親」が自己破産したことによって「親」が教育ローンの保証人や連帯保証人として不適格と判断される場合であっても、「4親等内の親族」であれば教育ローンの保証人や連帯保証人になることは差し支えない実情があるわけですから、「自己破産した親の子」であっても教育ローンを借りることはできるということになります。

日本政策金融公庫の教育ローンを利用する場合は「教育資金融資保証基金」の保証を受けることで解決する

このように、「親」が自己破産して教育ローンの保証人や連帯保証人になれない場合であっても、その「自己破産した親」以外の「4親等内の親族」に保証人(連帯保証人)になってもらえれば教育ローンの契約は可能といえますから、「親」が自己破産したからといって必ずしも金融機関の提供する教育ローンが利用できなくなるわけではありません。

もっとも「4親等内の親族」がいなかったり、「4親等内の親族」がいても疎遠で教育ローンの保証人や連帯保証人になってくれるよう頼むのに差し支えがある場合もある人もいるかもしれませんので、そのようなケースでは「親」が自己破産してしまうと教育ローンの契約が事実上困難になってしまう可能性もあるでしょう。

しかし、そのような場合であっても日本政策金融公庫の教育ローンを利用することは可能です。

なぜなら、日本政策金融公庫の提供している国の教育ローンでは、「4親等内の親族」による保証(連帯保証)が受けられない場合であっても、「公益財団法人教育資金融資保証基金」と保証委託契約を結ぶことで保証(連帯保証)を受けることが可能だからです。

先ほども述べたように日本政策金融公庫の教育ローンを借りる場合は「4親等内の親族」を保証人(連帯保証人)に付けることが求められるため、「親が自己破産した」うえに「4親等内の親族も保証人(連帯保証人)になってくれない」ようなケースでは、教育ローンの契約ができないことになります。

しかし、その場合であっても「教育資金融資保証基金」に保証料を支払うことで「教育資金融資保証基金」に保証人(連帯保証人)になってもらうことが認められていますから、「親が自己破産した」うえに「4親等内の親族も保証人(連帯保証人)になってくれない」ようなケースであっても、教育ローンの契約は可能といえます。

(詳細は→国の教育ローン(教育一般貸付)の概要|日本政策金融公庫

もちろん、「教育資金融資保証基金」に保証人(連帯保証人)になってもらう場合には「教育資金融資保証基金」に対して一定の保証料を支払わなければなりませんが(※教育資金融資保証基金による保証を利用する場合は教育ローンで借り入れる融資額や返済期間に応じた保証料が教育ローンで融資を受ける金額から一括して天引きされるようです)、そういった不利益はあるにしても教育ローン自体が受けられなくなることはないのです。

以上のように、日本政策金融公庫の教育ローンを利用する場合は「教育資金融資保証基金」の保証を受けることで「親が自己破産して教育ローンの保証人(連帯保証人)になれない」という問題は解決しますから、「親が自己破産した」からといって教育ローンの利用ができなくなってしまう心配はないといえます。

最後に

以上で説明したように、確かに「親」が自己破産してしまうと信用情報機関に事故情報として5年から10年の間登録されされてしまうことによってその「自己破産した親」は保証人(連帯保証人)になることができないため、その「自己破産した親の子」が教育ローンを利用することが事実上制限されることになりますが、その「自己破産した親」以外の「4親等内の親族」に保証人(連帯保証人)になってもらえば解決する問題ですし、日本政策金融公庫の教育ローンを利用する場合は教育資金融資保証基金の保証を受けることが可能ですから、「自己破産した親の子」が教育ローンを利用することは現実的に考えて十分に可能といえます。

このような実情を考えれば「自分が自己破産すると子供が大学に行けない」などと悩むこと自体が意味のないことといえますので、返済が困難になっているのであれば早めに弁護士や司法書士に相談し、早急に経済的再生を図って子の将来に備えるよう努力することが肝要といえるでしょう。