電柱などに、「即日融資」とか「ブラックOK」などという文言とともに「090」や「080」時には「0120」などの電話番号が記載された張り紙が貼られているのを誰しも一度は目にしたことはあると思います。
これらは全て、闇金です。
また、自宅の郵便受けに「即日融資」とか「ブラックOK」などという文言とともに「090」や「080」時には「0120」などの電話番号が記載されたチラシが入っていた経験がある人も少なからずいるのではないかと思います。
これらも全て、闇金です。
闇金は出資法や利息制限法に定められた利率を大幅に上回る違法な金利で金銭を貸し付ける違法業者であり、本来は返す必要のないお金を暴力と脅迫で取り立てる卑劣な犯罪者集団です。
それにもかかわらす、このように闇金の広告があふれているのは何故なのでしょうか?
闇金という犯罪者集団が「犯罪行為をしてますよ」という広告を堂々と掲載または配布しているにもかかわらず、なぜ警察や行政は取り締まらないのでしょうか?
警察が放置していること
闇金がはびこる最も大きな原因は、犯罪行為が明らかであるにもかかわらず、警察が放置していることにあります。
そもそも「人にお金を貸す」という貸金を「業」として、つまり「業務」として行うためには、一つの都道府県で営業する場合にはその都道府県知事から、複数の都道府県にまたがって営業する場合にはその地域を管轄する地方財務局長から「貸金業の登録」を受けなければなりません(貸金業法第11条1項)。
そして、仮にこの「貸金業登録」をしないまま貸金業を営んだ場合には「10年以下の懲役」かもしくは「3千万円以下の罰金」に処せられることになりますから、都道府県知事や地方財務局長の「登録」を受けないで貸金業を営むこと自体が重大な犯罪になるといえます(貸金業法第47条)。
【貸金業法第11条】
1項 第3条第1項の登録を受けない者は、貸金業を営んではならない。
2項 第3条第1項の登録を受けない者は、次に掲げる行為をしてはならない。
一 貸金業を営む旨の表示又は広告をすること。
二 貸金業を営む目的をもって、貸付けの契約の締結について勧誘をすること。
3項(省略)【貸金業法第47条】
次の各号のいずれかに該当する者は、10年以下の懲役若しくは3千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 不正の手段によつて第3条第1項の登録を受けた者
二 第11条第1項の規定に違反した者
三 第12条の規定に違反した者
この点、闇金は当然、都道府県知事や地方財務局長の登録を受けていませんから「無登録」で貸金業を営んでいることになるわけです。
しかし、どういうわけか警察は取り締まりをしません。
「10年以下の懲役若しくは3千万円以下の罰金」といえば、窃盗罪(10年以下の懲役又は50万円以下の罰金※刑法第235条)や暴行罪(2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料※刑法208条)、死体遺棄罪(3年以下の懲役※刑法第190条)などよりも十分重罪といえるのに、なぜか警察は取り締まろうとしないのです。
また、無登録の貸金業者が電柱に広告を張り付けたり、チラシを郵便受けに投函する行為自体が「2年以下の懲役若しくは3百万円以下の罰金」として処罰されるのですが(貸金業法第47条の3第1項)、上記のように電信柱に闇金の広告が堂々と張り付けられていたり、毎日のように郵便受けに闇金のチラシが投函されていても、警察は見て見ぬふりを続けるだけです。
【貸金業法第47条の3第1項】
次の各号のいずれかに該当する者は、2年以下の懲役若しくは3百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。(中略)。
一 (省略)
二 第11条第2項又は第3項の規定に違反した者
三(省略)
酷いところでは、交番のすぐ横の電信柱に闇金の広告が張り付けられているにもかかわらず、交番の警察官は平然と業務をこなしているような状況です。
無登録業者が貸金の”広告”や”勧誘”をすること自体が「2年以下の懲役若しくは3百万円以下の罰金」という重罪になるのに警察は放置しているのです。
警察は「民事不介入だから闇金が暴行や脅迫を行わない限り動けない」と主張しますが、そんなものは単なる屁理屈に過ぎません。
「無登録」で貸金業を営むだけでなく、無登録業者が電柱の「広告」やチラシで「勧誘」すること自体が犯罪行為であるのは貸金業法で明確に定められているわけですから、その時点で「民事」ではなく「刑事事件」として立件可能なのは明らかです。
なのに、警察は何を根拠に「民事不介入」と言い訳をしているのでしょうか?
このような状態では、闇金が巷にあふれるのも当然といえます。
監督官庁の都道府県と地方財務局が放置していること
闇金がのさばるのは、貸金業の監督官庁である都道府県や地方財務局にも責任があります。
前述したように、貸金業の登録権限は貸金業法で「都道府県知事」と「地方財務局長」に委任されているわけですから、無登録業者の取り締まりも本来は「都道府県」や「地方財務局」が積極的に行わなければなりません。
しかし、現実には都道府県や地方財務局が無登録業者(闇金)を取り締まることは一切ないのが実情です。
私も昔、司法書士をしていた時代に積極的に闇金事件の依頼を受けていた時期があり、その際何度か都府県庁や地方財務局に電話を入れて行政の方から検察に告発するよう求めたことがありますが、全く相手にされませんでした。
チラシやダイレクトメールで顧客の勧誘を行う闇金業者は、その広告やチラシに嘘の登録番号を記載してさも登録業者のように装うことが多いのですが、その場合「東京都知事(1)第〇〇〇〇〇号」とか「九州財務局長(1)第〇〇〇〇号」などと適当な都道府県知事や地方財務局長の名をかたって番号を表示するのが一般的です。
このような場合、「東京都知事」の登録番号を偽って表示されている業者については東京都が、「九州財務局長」の登録番号を騙っている業者については九州財務局がその監督権限を行使すべきなのですが、東京都庁や九州財務局の担当部署に直接電話を入れて警察や検察に告発をするよう要請しても、「前例がない」という理由で一切応じてもらえませんでした。
覚えているだけでも、東京都、関東財務局、福岡県庁、九州財務局の全てで「前例がない」と全く相手にしてもらえませんでした。
酷い担当者になると、「そんなに告発したいんならあなたが自分で告発状を提出すればよいでしょう」という始末です。
このように、監督官庁であるはずの都道府県や地方財務局は、闇金業者を監督しようとする意志はかけらもないのです。
闇金は、携帯電話だけで顧客とやり取りする「090金融」や「080金融」がほとんどですが、チラシや電柱の広告などで勧誘する業者の中には「0120」のフリーダイヤルを利用している業者もいますから、そのような業者は「090金融」などよりも居所の特定が容易で、警察にその気があればすぐにでも逮捕できるはずです。
行政が主体的に監督権限を行使し積極的に闇金業者の告発を行えば、警察や検察も無視はできないはずですから、監督官庁である都道府県や地方財務局がその気になれば大部分の闇金は社会から排除することができるのですが、それをやる気はないようです。
なぜ闇金がなくならないのか?
以上のように、警察は人の生命や身体に影響を及ぼすような暴行や脅迫などの「事件」に発展しない限り、闇金に対してはまったく捜査しませんし、監督官庁である都道府県や地方財務局も「前例がない」ので一切監督権限を行使しようとしないのが現実です。
ですから、いつまで経っても闇金はのさばり続けるのです。
ではなぜ、警察や行政は闇金に何も対処しないのでしょう?
あくまでも個人的な意見ですが、闇金がなくなってしまうと損をする人が少なからずこの国の支配階層に存在しているからです。
闇金が居なくなってしまうと、闇金の存在によって利益を受けているその支配階層の人達がその利益を失うことになってしまうから、闇金に何の対処もされないのです。
結局、その人たちの意識が変わらない限り、この世から闇金はなくならないのでしょう。