離婚する場合、結婚期間中に作った借金はどうなるの?

何らかの事情で夫婦が離婚する場合、その離婚の話し合いをする段階で、結婚期間中に作った借金が問題になるケースがあります。

たとえば、「妻」が買い物に使用するために車が必要になり「妻」のために軽自動車をローンで購入することになったものの、その車のローンを「夫」の名義で契約しているような場合です。

このような場合、借金自体は「夫」の名義になっていますが、その借金の原因は「妻」の側にありますので、その借金を離婚する際にどのように扱うか、という点が夫と妻の間で議論の焦点になるのです。

では、実際に離婚する場合には、結婚期間中に作った借金はどのように扱われるのでしょうか?

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「夫」が作った借金は「夫」が、「妻」が作った借金は「妻」が返済するのが原則

結婚期間中に作った借金が、夫婦の一方が債務者となって借りている状態にある場合には、離婚した後はその債務者となっている一方がその債務を負担することになります。

たとえば、冒頭の「妻」が買い物に使用するために車が必要になり「妻」のために軽自動車をローンで購入することになったものの、その車のローンを「夫」の名義で契約しているような場合には、たとえその車の所有者が「妻」の名義になっていたとしても、ローンを組んでいるのが「夫」になりますので、「夫」個人の借金となりますから、離婚後も「夫」がそのローンの返済をしていかなければなりません。

なぜなら、債権者側からして見れば、その借金の理由が夫婦どちらにあろうと、貸し付けた債務者個人に対してしか請求することができないからです。

「夫」が「夫」の名前でキャッシングやローンを組んだ場合には、債権者は「夫」としか契約関係がなく「妻」には請求できませんし、その逆に「妻」が「妻」の名前でキャッシングやローンを組んだ場合には、債権者は「妻」としか契約関係がなく「夫」には請求できません。

そして、この債権者との契約関係は離婚後も変更することはありませんから、「夫」が「夫」の名前で借りた借金は「夫」が、「妻」が「妻」の名前で借りた借金は「妻」が、それぞれ離婚後も返済していかなければならないということになるのです。

連帯債務者の場合は離婚しても双方が債務者となる

借金をする際に夫婦の双方が「連帯債務者」として借り入れの契約をしている場合には、離婚しても夫婦の双方がその借金を負担することになりますので、離婚した後も(元)夫婦の双方がそれぞれ債権者に対して借金を返済していかなければならないことになります。

借金で連帯債務者が必要になるケースとしては住宅ローンなど高額な借金の場合がほとんどですが、「連帯債務者」というのはその債務者が「連帯」して債務を返済するということを約束する契約になりますので、離婚しようが何しようが、借金の全額が完済されるまで債務者としての地位から逃れることはできません。

仮に住宅ローンの連帯債務者として「夫」と「妻」が契約書にサインしている場合には、離婚した後も「夫」と「妻」がそれぞれ住宅ローンの全額を負担し続けることになりますから、「夫」と「妻」の双方が離婚後もそれぞれ住宅ローンを返済しなければならないのです。

もっとも、連帯債務者になっている借金については、離婚する際の協議で夫婦の一方が返済するというように取り決めることが多いと思います。

例えば、「住宅ローンは夫(または妻)が支払う」というように、夫婦の一方がそのローンを支払い他方は一切その返済を負担しないというような取り決めをするのが通常でしょう。

しかし、このような取り決めは夫婦の間では効力がありますが、債権者にとっては何の効力も及ぼしません。

たとえば、「住宅ローンは夫が支払う」と取り決めて離婚した場合は毎月の住宅ローンは「夫」が支払わなければなりませんが、仮に途中で夫が住宅ローンの返済ができなくなってしまった場合には、当然、債権者は「妻」に対して「住宅ローンを支払え」と請求してきますし、「妻」はその請求から逃れることはできません。

「住宅ローンは夫が支払う」という取り決めは夫婦間では有効であっても、債権者にとっては何ら効力を及ぼさないからです。

このように、夫婦の双方が借金の「連帯債務者」になっている場合には、たとえ離婚してもその連帯債務者としての地位から逃れることはできませんので注意が必要です。

連帯保証人になっている場合は離婚後も連帯保証人のまま

夫婦の一方が(または夫婦の双方が)「連帯保証人」や「保証人」になっている債務については、離婚した後もその夫婦の一方(または夫婦の双方)が「連帯保証人」または「保証人」のままその保証債務を負担することになります。

たとえば、結婚期間中に「夫」の借金について「妻」が保証人(または連帯保証人)になっている場合には、離婚した後も「妻」は「元夫」の借金の保証人(または連帯保証人)として保証債務をふたんしなければなりませんから、仮に離婚後に「夫」が返済を滞らせた場合には「元妻」にその借金全額の請求がなされますし、「元妻」はその請求を拒否できません。

借金の保証人や連帯保証人になるという契約は、その保証人(または連帯保証人)になる人と債権者である金融機関との間で結ばれることになり、その契約は夫婦が離婚しても消滅するものではありませんから、たとえ離婚しても保証人(または連帯保証人)から逃れることはできないのです。

どうしても負担したくない場合は債権者との協議が必要

以上のように、借金の債務者や保証人としての地位は離婚によっても影響を受けませんから、仮に離婚する際に夫婦間で借金の返済について一方が返済することを取り決めていたとしても、他方が債務者や保証人から逃れられるわけではありません。

この点、離婚した後にどうしても債務者や保証人の地位から逃れたいというのであれば、代わりの債務者や保証人を用意して債権者と協議を行うほかありません。

たとえば、前述したように夫婦の双方が「連帯債務者」になってお金を借りている場合には、たとえ離婚する際にその債務を「元夫」が返済していくと夫婦間で取り決めておいたとしても「元妻」が連帯債務者から離脱することはできませんが、たとえば「元夫の親」を「元妻」の代わりに連帯債務者にするという条件付きで債権者と交渉することによって債権者が一方の連帯債務者の交換に応じる場合もあります。

また、前述したように「夫」の借金に「妻」が「保証人」や「連帯保証人」になっている場合には離婚しても「妻」は保証人や連帯保証人としての責任から逃れることはできませんが、たとえば離婚後は「夫の親」が「妻」の代わりに保証人や連帯保証人になるというような交渉をすることによって債権者が保証人や連帯保証人の交換に応じる場合もあるでしょう。

このように、どうしても離婚後に債務者や保証人としての責任を負いたくない場合には、自分の代わりに債務者や保証人になる人を用意したうえで債権者と交渉するしかないので注意が必要でしょう。