お金がない人が自己破産するには?(法テラスの民事法律扶助)

借金の返済が困難になった場合には、裁判所に自己破産の申し立てをすることによってその全ての債務の支払いを免除してもらうことが可能です。

このように、自己破産は借金に苦しむ人にとって最終的なセーフティーネットとなるわけですが、問題はその手続きを行うために多額の費用が必要になるという点です。

自己破産の手続き自体はそれほど難しいものではありませんので、ネットなどの情報を参考に申立書を作成し裁判所に提出することも可能ですが、全くの法律の素人がそれを行うのはハードルが高いため通常は弁護士や司法書士に依頼して手続きを進めるのが現実的です。

しかし、弁護士や司法書士に依頼すれば当然、その弁護士や司法書士に支払う報酬が発生しますから、その費用が工面できない人にとっては自己破産の手続きに入ること自体がかなりの障害になってしまうのです。

では、まったくお金がない人が自己破産するためには具体的にどのような方法をとればよいのでしょうか?

まったくお金がない人が自己破産を希望する場合、ネットなどを駆使して自分で申立書を作成するしか方法がないのでしょうか?

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法テラスの民事法律扶助を利用する

お金がない人が自己破産をする場合には、法テラス(日本司法支援センター)が取り扱う「民事法律扶助」の制度を利用するのが適当です。

「民事法律扶助」とは、所得がなかったり所得が低い人でも法律サービスを安心して利用できるようにするため、法テラス(日本司法支援センター)という国の設立した機関が弁護士や司法書士の報酬を立て替える制度をいいます。

立替えられた弁護士や司法書士報酬は、自己破産の手続きが終了した後に法テラス(日本司法支援センター)に分割で償還(返済)することが必要になりますが、自己破産を依頼する時点では一切費用が必要ありませんので、お金がない人であっても法テラス(日本司法支援センター)の民事法律扶助を利用することによって自己破産の手続きを弁護士や司法書士に依頼することは可能なのです。

民事法律扶助を利用する場合は弁護士や司法書士事務所の報酬基準ではなく法テラスの基準額となる

誤解している人が多くいますが、法テラスの民事法律扶助を利用した場合に立替えられる弁護士・司法書士費用は、その弁護士や司法書士事務所が通常設定している費用の金額ではなく、法テラスが設定している費用の金額になります。

【法テラスの民事法律扶助を利用した場合の自己破産の費用】

≪弁護士に依頼する場合≫

  • 債権者の数が1社~10社の場合……129,600円
  • 債権者の数が11社~20社の場合……151,200円
  • 債権者の数が20社以上の場合……183,600円
  • ※破産管財人が選任された場合は最高で216,000円まで上昇します。

※上記の報酬以外に実費として23,000円が別途必要となります。
※破産管財人が選任された場合は上記の他に最低20万円以上の管財費用(破産管財人に支払う報酬)を裁判所に納める必要があります。

 

≪司法書士に依頼する場合≫

  • 債権者の数が20社まで……86,400円
  • 債権者の数が21社以上……97,200円
  • ※破産管財人が選任されても金額は変わりません。

※上記の報酬以外に実費として17,000円が別途必要となります。
※破産管財人が選任された場合は上記の他に最低20万円以上の管財費用(破産管財人に支払う報酬)を裁判所に納める必要があります。

上記のように、法テラスの民事法律扶助を利用した場合の弁護士や司法書士が受け取る報酬は法テラスが設定した金額で全国一律に定められていますから、法テラスの民事法律扶助を利用した場合には、その依頼を受ける弁護士や司法書士は上記の金額以上の報酬や費用を依頼者から受け取ることができなくなります。

したがって、仮に弁護士や司法書士事務所の自己破産の報酬が高額であったとしても、法テラスの民事法律扶助を利用する場合には、法テラスが設定する上記の安い報酬金額を法テラスに償還すれば、費用の支払は終わることになるのです。

たとえば、債権者10社から借り入れをしている債務者が自己破産の手続きを弁護士に依頼する場合において、その依頼する弁護士の事務所における自己破産の手続き報酬が50万円と設定されている場合には50万円の報酬をその弁護士に支払わなければ自己破産の処理をしてもらえませんが、法テラスの民事法律扶助を利用してその同じ弁護士に依頼する場合には129,600円の弁護士報酬分と23,000円の実費分の合計152,600円を法テラスに支払えば、その同じ弁護士に自己破産の処理をしてもらえることになります。

法テラスへの償還は毎月3,000円からでもOK

以上のように、法テラスの民事法律扶助を利用した場合には、法テラスの設定する報酬基準額を償還すれば済むため、民事法律扶助を利用しない場合に比較して圧倒的に安い費用で自己破産を処理してもらうことが可能です。

なお、法テラスの民事法律扶助はあくまでも「立替え」ですので、法テラスによって立替えられる弁護士や司法書士の報酬額は自己破産の手続きが終わった後(※正確には自己破産の手続き中から)に法テラスに償還しなければなりません。

その償還額は通常は毎月1万円が基準となりますが、本人の希望によって5,000円まで減額することが可能ですし、毎月の収入が少ないなどの事情がある場合には毎月3,000円までその支払い額(償還額)を減額してもらうことも可能です。

このように、法テラスの民事法律扶助を利用した場合には、毎月3,000円~5,000円という極めて少額の償還金で自己破産の処理をしてもらえますので、仮に初期費用がゼロ円であっても安心して自己破産の処理を依頼をすることができることになります。

生活保護受給者の場合は法テラスへの償還が全額免除される

なお、生活保護を受給しているが民事法律扶助を利用した場合には、その償還金の全額が免除される取り扱いになっています。

そのため、生活保護受給者が法テラスの民事法律扶助を利用して自己破産の手続きを弁護士や司法書士に依頼する場合には、法テラスに償還しなければならない上記の弁護士・司法書士報酬が全額免除されることになりますので、実質的に「0円」で弁護士や司法書士に自己破産の処理をしてもらうことができることになります。

法テラスの民事法律扶助は法テラスに行かなくても利用することができる

この点も誤解している人が多くいるようですが、上記でご紹介した法テラスの民事法律扶助制度は、何も法テラスに出向いたり、法テラスの主催する無料相談会に行かなくても利用することが可能です。

法テラスの民事法律扶助制度を利用できるのは、法テラスと民事扶助契約を結んでいる弁護士と司法書士に限られますが、その法テラスと民事扶助契約を結んでいる弁護士と司法書士は、法テラスで行われる無料相談会で相談を受けた案件だけでなく、自分の事務所で相談を受けた案件であっても法テラスの民事法律扶助の申請をすることができるのです。

ですから、無理に法テラスの無料相談会に予約を入れなくても、自分が依頼したいと思う弁護士や司法書士の事務所に相談に行った際に「法テラスの民事法律扶助を利用したいです」と申告すれば、上記に挙げた法テラスの報酬基準で処理してもらうことは可能です。

▶ 民事法律扶助業務 法テラス|法律を知る 相談窓口を知る 道しるべ

もちろん、自分が相談する弁護士や司法書士が法テラスと民事扶助契約を結んでいることが前提となりますが、法テラスのサイトによると全国で弁護士については18,000人以上、司法書士では6,000人以上余が法テラスと契約を結んでいるようなので、弁護士や司法書士に直接相談した場合であっても民事法律扶助の利用が可能な事務所は少なくないと思います。

ですから、どうしてもお金の余裕がない場合には、相談する弁護士や司法書士に法テラスと民事法律扶助の契約をしていないか確認してみるのも良いのではないかと思います。