個人事業主がリース契約を任意整理で処理することは可能か?

個人事業主の中には、仕事で必要な機械や事務機器をリース契約で購入し使用している人も多いのではないかと思います。

リース契約を利用するメリットは、価格が高額な物品でも毎月数千円からのリース料で使用できる点にありますが、多重債務に陥っている個人事業主にとってはこのわずか数千円のリース料だけでも負担を感じる場合もあるかもしれません。

そんな場合、多くの個人事業主は任意整理で借金の整理をしようと考えるのではないかと思いますが、ここで疑問が生じるのがリース物件のリース料についても任意整理で処理することはできないか、という点です。

リース契約で使用している機器のリース料については毎月の支払いが一定期間義務付けられるのが通常で、毎月の返済が強制される貸金業者やローン会社からの借金と実質的には変わりありませんから、リース契約で生じるリース料も任意整理をして処理したいと思う個人事業者の人は少なからず存在するはずです。

では、リース契約で生じるリース料については任意整理で処理することが可能なのでしょうか?

広告

リース契約で生じるリース料を任意整理で処理すること自体は可能

任意整理とは、弁護士や司法書士に依頼し、債権者との間で利息のカットや債務の減額、分割弁済の和解を交渉してもらう民事上の手続きをいいます。

任意整理は通常、貸金業者やクレジット会社からの債務について行われるのがほとんどですが、リース契約によって負担している債務についても、そのリース業者が任意整理に応じるのであればもちろんリース契約によって生じる債務を任意整理で処理することは可能です。

任意整理は法律で定められた法定の手続きではなく、債務者と債権者との間で債務の支払いに関する示談交渉をするだけの手続きですから、債権者であるリース会社が任意整理に応じる場合には、これを否定する必要がないからです。

リース契約を任意整理した場合は発生する違約金を分割返済することになる

前述したようにリース契約で請求されるリース料の債務を任意整理で処理することは可能ですが、リース契約で発生する債務を任意整理する場合には、その毎月請求されているリース料そのものを分割弁済の対象とするのではなく、リース会社から請求されることになる違約金を分割弁済の対象とすることになるのが通常です。

なぜなら、リース契約を任意整理の対象とする場合には、リース契約を契約途中で解約することが前提となりますが、本来は高額なリース物件をリースで使用するリース契約は通常、複数年契約が義務付けられており、契約途中で解約する場合には違約金が発生する契約になっているからです。

リース契約は、リース物件を「販売」し「保守点検」業務を担う”サプライヤー”と、リース物件を「購入」し契約者に「貸与」する”リース会社”と、リース会社からリース物件を「リース」する”契約者”との間の3者間で契約が結ばれるのが通常です(※このような契約はファイナンスリース契約とよばれています)。

そして、このリース契約の下になる3者間契約では、リース物件の商品を「購入」するのはあくまでも”リース会社”であり、リース会社は毎月支払われるリース料で購入した商品代金の償還を行い、それとあわせてリース契約による利益を確保することになるのですから、それが確保できない時点で途中解約されてしまうと大きな損失を受けてしまいます。

そのため、リース契約では契約者に長期間の契約を義務付けて途中解約の場合は違約金を請求することにしているのです。

ですから、リースの対象となる商品の価格が高いほど、また、リース契約の残存期間が長ければ長いほど途中解約による違約金も高額になることが予想されますので、リース契約を任意整理で処理する場合には、そのリース物件の価格が高くリース契約の残存期間が長いほど、任意整理で請求される残債務額は高額になりますし、分割弁済期間も長くなることになるのが一般的です。

リース物件は会社に引き揚げられるのが原則

上記で解説したように、リース契約で負担しているリース料の債務を任意整理で処理することも可能ですが、その場合にはリース契約の解約という処理になりリース会社から違約金の請求がなされることになりますので、その請求された違約金を任意整理の交渉で分割弁済の協議を行っていくことになります。

なおこの場合、リース契約で使用しているリース物件はリース会社に引き揚げられることになるので注意が必要です。

前述したようにリース契約の下になる3者間契約では、リース物件の商品を「購入」しその商品の「所有者」となるのはあくまでも”リース会社”であり”契約者”ではありませんから、契約者がリース料の支払いを停止して任意整理をすることに伴いリース契約が解約処理される場合には、リース会社はその所有しているリース物件をタダで契約者に使用させる必要性もないのでそのリース物件を引き揚げることになります。

リース物件を引き揚げたリース会社は、そのリース物件を倉庫に保管しておいても費用がかかるだけなので、通常はそのリース物件をリサイクル市場で売却してお金に換価し、その売却代金は契約者に請求する違約金と相殺することになります。

そして、それでも足らない分の違約金を、任意整理を開始した契約者に請求することになるのです。

このように、リース契約の途中でリース契約で負担する債務を任意整理する場合には、リース会社からリース物件を引き揚げられてしまうことになりますので、リース物件が事業に不可欠なものである場合には、任意整理の手続きを始める前に、そのリース物件が使用できなくなった場合の代替手段をあらかじめ考えておく必要があります。

もっとも、リース契約がすでに長期間経過して対象となるリース物件の機器等が古くなっていたり、リース会社が引き揚げても換価価値がないと判断されるものについては、リース契約を任意整理する場合であってもリース会社が引き揚げないケースもあるようです。