任意整理は債権者と個別に交渉し、利息のカットや債務額の減額、分割弁済の和解を取り付ける債務整理の手続きの一種です。
自己破産や個人再生など他の債務整理の手続きと異なり、裁判所に申し立てをしないですむことから簡易迅速な処理が望めるのがこの任意整理手続きの大きな特徴といえます。
もっとも、任意整理が簡易迅速な手続きであるとはいっても、任意整理を適切に終わらせるためには専門的な法律の知識が必要となりますので、通常は弁護士や司法書士に依頼して弁護士や司法書士に代理人となって債権者と交渉をしてもらうことになります。
ところで、任意整理を弁護士や司法書士に依頼する際に気になるのが、債権者からお金を借りる際に作成した契約書(金銭消費貸借契約)を紛失していても依頼を受けてもらえるのか、という点です。
貸金業者やクレジット会社からお金を借りる際には契約書を取り交わしその控えを受け取っているはずですが、借り入れから長い年月が経過してしまうと契約書を紛失していたり、既に捨ててしまっているようなケースも少なくはありません。
では、そのように貸金業者やクレジット会社との間で取り交わした契約書の控えがない場合であっても、弁護士や司法書士に任意整理を依頼することは可能なのでしょうか?
契約書が無くても任意整理には全く問題ない
結論からいうと、貸金業者やクレジット会社との間で契約を結んだ際に交付を受けた契約書を破棄していようが紛失していようが、弁護士や司法書士に任意整理を依頼する際には全く支障ありません。
なぜなら、お金を借りた際の契約書がなくても弁護士や司法書士が債権者に照会を掛ければ、その債権者からお金を借りた経緯があるかないかはすぐに判明するからです。
通常、弁護士や司法書士が依頼人から債務整理の依頼を受けると、すぐに対象となる債権者に対して「受任通知」という「〇〇という人から債務整理の依頼を受けましたよ」という通知書を送付することになります。
この受任通知には、依頼人である債務者の「氏名」と「住所」と「生年月日」が記載されていますので、債権者の側ではその「氏名」「住所」「生年月日」を元に過去の顧客のデータに照会を掛けて該当者を洗い出すことになります。
ですから、契約書などなくても「氏名」と「住所」と「生年月日」さえ分かれば特に問題ありませんので、契約書がなくても弁護士や司法書士に任意整理を依頼することはできるということになります。
ただし、契約書は保管しておく方が良い
前述したように、「氏名」と「住所」と「生年月日」さえ通知すれば債権者の方でも紹介を掛けることができますから、契約書がなくても弁護士や司法書士に任意整理を依頼することは可能です。
もっとも、だからと言って契約書なんて捨ててしまって構わないということではありません。
債権者との間で裁判になるような場合には契約当初に作成した契約書を証拠として提出する必要性がありますし、最終的に自己破産の申し立てをする際にも契約書の添付が必要な場合もありますから、可能な限り契約書は大切に保管しておくべきでしょう。
※もっとも、仮に裁判になった場合でも、債権者の側で保存されている契約書の控えを提出するように求めることは可能です。