債務整理の手続きのうち「任意整理」とは、弁護士や司法書士に依頼して貸金業者などの債権者との間で分割返済の和解を取り付けてもらう手続きのことを言います。
自己破産や個人再生など裁判所に申立を行う手続きと異なり、任意整理はあくまでもお金を借りた「債務者」と相手方貸金業者などの「債権者」との間で分割返済の話し合いをするものであり、依頼を受ける弁護士や司法書士も債務者の代理人となって交渉するだけですから、任意整理をすることだけで第三者である家族にそのことがバレるということはないでしょう。
また、そもそも弁護士や司法書士は守秘義務を負っており、職務上知り得た情報を第三者に話すことを禁じられていますから、たとえ家族であっても弁護士や司法書士が任意整理を受任していることを話すことはできません。
ですから、その意味でも任意整理を弁護士や司法書士に依頼したことをもって家族にバレる、ということはないといえるでしょう。
ただし、後述するように、家族に内緒で任意整理をすることは借金問題の根本的な解決にならない場合があることから、弁護士や司法書士の事務所の方針によっては事前に家族に相談したうえで依頼をするように勧める事務所もあります。
絶対にバレないというわけではない
前述したように、弁護士や司法書士は守秘義務を負っていますし、家族は借金の第三者といえますから、弁護士や司法書士に任意整理を依頼したからといって直ちに家族に知れてしまうということはないと考えられます。
しかし、だからといって絶対に家族に内緒で任意整理できるか、というとそういうわけではありません。
次のような場合には、家族にバレる可能性があることも知っておく必要があるでしょう。
① 弁護士・司法書士事務所から電話や郵便物があった場合
弁護士や司法書士に任意整理を依頼した場合、任意整理の処理が終わるまでに弁護士や司法書士の事務所から連絡や照会などのために電話がかけられたり郵便物が届けられたりすることがあります。
このような電話に家族が出たり、事務所からの郵便物を家族が開封したりして任意整理を依頼していることがバレるということは往々にして有り得るでしょう。
通常の生活をしている状況では弁護士や司法書士の事務所から電話がなされたり郵便物が届けられるといったことはあまりありませんので、そのような電話や郵便物が来るだけで家族から怪しまれて問い詰められることもあるかもしれません。
そのため、仮に弁護士や司法書士に内緒で処理するよう依頼したとしても電話や郵便物でばれてしまうということはあり得るので注意が必要です。
これを防ぐには依頼する弁護士や司法書士とよく相談して郵便物を手渡しにしてもらうとか電話を携帯だけにしてもらったりメールにしてもらうなど特別な配慮をしてもらうしかないと思われます。
② 家族が保証人になっている場合
家族が借金の保証人になっている場合にも任意整理をしていることがバレることがあるので注意が必要です。
任意整理を行うと、債務不履行(契約通りに返済をしないこと)ということになり、その借金の保証人になっている人に対して「債務者が返済をストップしたから保証人であるあなたが返済しなさい」と一括請求がなされることになりますので、弁護士や司法書士に任意整理を依頼した借金に保証人が付いていて、その保証人が自分の家族であった場合には、その保証人になっている家族に自分が任意整理をしていることがバレてしまうでしょう。
③ カードやローンを組むとき
任意整理をした後に、新しくクレジットカードを申し込んだり、ローンを組んだりする際にバレることもあります。
任意整理をすると信用情報機関に「事故情報」として記録され一定期間(5年程度)保存されますので、その事故情報が保存されている期間は新しくクレジットカードを申し込んだりローンを組んだりした場合、審査で落とされるのが通常です。
そのため、審査が通らなかった際に「なんで審査に通らないの?」「あなたブラックリストに載っているんじゃないの?」と問い詰められて任意整理したことがバレることになるかもしれません。
また、子供の奨学金などの保証人になるときなどの際に審査に通らないことも考えられますので、そのような予定のある人は事前によく弁護士や司法書士と相談する方が良いと思います。
④ 携帯電話の機種変更をするとき
携帯電話の機種変更をする際にもバレる可能性があります。
携帯電話(スマホ等)は通常価格で3~5万円ほどするかと思いますが、携帯会社で機種変更する際は、それを一括で支払うのではなく、月々の通話料に合算して、もしくは月々の通話料を割り引く形にして実質的にゼロ円で販売する手法がとられています。
しかし、この機種変更に係る機種の機器代金は契約上は分割払いになっていて、毎月の通話料の支払い分に機種のローン代金の返済金額が含まれる形になりますので、携帯の機種の変更といっても、その実質は携帯の機種をローンで購入したのと同じになります。
そのため、携帯の機種変更をする際にはその代金を一括で全額支払わない限り信用情報機関に照会がなされることになりますので、任意整理を弁護士や司法書士に依頼している場合には審査で落とされることになります。
そうなると、携帯の機種変更時に機種の変更ができないことになり家族から「なんで機種変更できないの?」という話になっていろいろと詮索されることになるでしょう。
だからといって任意整理していることがすぐに家族にバレることにはならないかもしれませんが、ネットでググればそのような情報は多く流れていますので、携帯の機種変更ができないことによって任意整理していることが家族に知れてしまう可能性はあるといえます。
なお、この機種変更については任意整理をしている自分だけの機種変更だけでなく、例えば子供の契約の際にも影響してきますので注意が必要です。
子供の携帯を契約しようとする場合には親の名義で契約することになりますので、親が任意整理をして信用情報機関に事故情報として登録されている場合には、子供の携帯の契約(携帯の機種の変更や購入)は携帯キャリアの代理店から契約できないといわれる可能性が高いと思います。
ちなみに、これを避けるには中古のスマホなどを購入しそれを持参して子供の携帯の契約をするなどするしかないと思います。
なお、上記はあくまでも一例です。これ以外にも家族にバレる可能性のある事柄はあると思いますので依頼する弁護士や司法書士とよく相談することをお勧めします。
家族に内緒で任意整理しても根本的な解決に繋がらない可能性もある
以上のように、任意整理を依頼する弁護士や司法書士が受けてくれるのであれば、家族に内緒で任意整理を行うこともできるということになります。
ただし、家族に内緒で任意整理をして借金を整理できたとしても、根本的な解決にならないことも多いということは認識しておいた方が良いかもしれません。
なぜなら、借金の返済が滞ってしまうという問題は、家計に何らかの問題があることが多いからです。
毎月の収入から支出を差し引いた残額で余裕をもって生活できていればそもそも借金などしないでしょうし、仮に借金があったとしても滞ることなく返済ができているはずです。
その返済が滞ってしまったということは、家計状況に何らかの問題があるはずであって、その家計を管理している、またはその家計で生活している家族に内緒で任意整理できたとしても、後々また返済が滞って行き詰ってしまうことは容易に推測できるでしょう。
ですから、そもそも弁護士や司法書士に任意整理を依頼しようと思った時点で家計が破たんもしくは何らかの問題を抱えていることは明らかですから、その時点で家族に相談し、家計の支出を見直して家計の改善を図るべきなのです。
それをせずに内緒で任意整理したとしても根本的な解決にはならないのが通常ですから、華族に内緒で任意整理をしたいと思っている人は、その辺のところをよく考えてみる必要があるのではないかと思います。