任意整理は弁護士や司法書士依頼し、債権者との間で債務の減額や利息のカット、分割弁済の和解協議を行う債務整理手続きの一種です。
自己破産や個人再生、特定調停など他の債務整理手続きと異なり、裁判所に申し立てする必要がないことから、比較的安価で柔軟な、かつ迅速な解決が望める点が任意整理の主な特徴といえます。
ところで、自己破産の場合には7年以内に再度申立をする場合には基本的に免責不許可事由となり、裁判官の特別な裁量がない限り自己破産による免責(借金の返済が免除されること)は受けられないのが原則的な取り扱いとなっていますが、任意整理の場合にはこのような期間制限や回数制限はあるのでしょうか?
任意整理で債権者との間で分割弁済の合意が整ったとしても、任意整理後の弁済期間中に支払いが滞ってしまうこともあるでしょうから、そのような場合に二回目、三回目の任意整理を行うことができるのか、という点が問題となります。
任意整理に回数制限や期間制限はない
結論からいうと、任意整理に「○回まで」といったような回数制限や「〇年間に〇回まで」といった期間制限などは存在しません。
なぜなら、そもそも任意整理の手続きは自己破産や個人再生、特定調停などのように特定の法律(破産法、民事再生法、特定調停法)で手続きが定められた法定のものではなく、債務者と債権者の間で残債務の返済方法について協議する示談交渉の場に過ぎないからです。
前述したように、自己破産が原則7年以内の申し立てを認めていないのは、そのような規定が自己破産の手続きを定めた破産法という法律に定められているからに他なりません。
この点、任意整理の手続きは法律上で認められた手続きではなく、債権者と債務者の間の「任意」な話し合いで解決方法を決定するだけに過ぎませんから、債権者側が二回目、三回目の協議に応じるのであればこれを禁止する必要性もありません。
ですから、債権者側が特に任意整理の交渉を拒否しない限り、理論的には1年以内に何回でも任意整理をやり直すことは可能なのです。
ただし、債権者が二回目の任意整理に応じるかは別の話
前述したように、任意整理に回数制限や期間制限はありませんから、いったん任意整理で債権者との間で合意した分割弁済の支払期間中に再度返済が滞ってしまった場合には、再度弁護士や司法書士に依頼して任意整理の手続きを取ってもらうことは可能です。
ただし、それはあくまでも債権者側が任意整理の交渉に応じてくれた場合の話に過ぎません。
前述したように任意整理の手続きは法律で定められた法定の手続きではありませんから、そもそも債権者側に任意整理の交渉に応じなければならない法律上の義務はありませんし、1回目の任意整理に応じているのであれば、仮に2回目の任意整理を拒否したとしても債務者の生活再建の機会を無下に損なったとまではいえませんから、債権者側に特段の非難されるべき事情はなくなるでしょう。
ですから、債権者側で「この債務者は任意整理に応じても分割弁済は無理だ」と判断したのであれば、2回目の任意整理を拒否されることもありますから、理論的には任意整理に回数制限や期間制限はないものの、事実上は2回目、3回目の任意整理の交渉は難しくなっていく可能性があります。
二回目の任意整理が必要な場合は自己破産を考えることも…
以上のように、任意整理の手続き自体に回数制限や期間制限はありませんから、債権者に打診して分割弁済計画の組み直しに同意してくれるというのであれば、2回目、3回目の任意整理も可能でしょう。
しかし、いったん任意整理をしたにもかかわらず、再度返済計画が破たんしてしまうという状況は、最初の任意整理の際によほどいい加減な弁護士や司法書士に依頼していい加減な弁済計画を作られれてしまったというような状況でもなければ、おそらくはそもそも任意整理の分割弁済で返済が可能な借金総額でなかったか、そもそも収入から毎月の家計を控除した余剰金で返済原資をねん出するだけの家計状況に無かったのどちらかだと推定されます。
ですから、いったん任意整理で分割弁済の和解を組んだにもかかわらずその途中で返済が行き詰まってしまった場合には、そもそも任意整理自体が無理なのかもしれませんから、弁護士や司法書士に収入や家計状況を正直に申告して根本的な問題がどこにあるのかを精査する必要があるでしょう。
そして、もし仮に任意整理が現実的に難しい状況にあるのであるならば、任意整理はあきらめて自己破産を検討する必要もあるのではないかと思います。