自己破産の申立を行う場合、その所有する財産は自由財産として保有が認められる一部の財産(資産)を除いて、全て裁判所(破産管財人)に取り上げられて換価され、その換価されたお金が債権者に配当されるのが通常の取り扱いとなります。
この裁判所に取り上げられる財産(資産)としては、土地や建物などの不動産、自動車や貴金属といった有体物が代表的なものとして挙げられますが、勤務先の会社から支給される給料やボーナス(賞与)についても同様です。
給料やボーナス(賞与)も自由財産として認められるその受け取る金額の「4分の3」に相当する金額(ただしその金額が33万円を超える場合は33万円)を超える部分については全て裁判所に取り上げられるのが原則ですから、自己破産の手続きを行えば給料やボーナス(賞与)もその影響を受けてしまうことは避けられないのです。
▶ 自己破産の手続中に受け取るボーナスは裁判所に取り上げられる?
もっとも、このように給料やボーナス(賞与)の一部が自己破産の手続きで取り上げられるとは言っても、それはあくまでも自己破産の「開始決定」が裁判所から出されるまでの話にすぎません。
なぜなら、裁判所から自己破産の「開始決定」が出された「後」に受け取る給料やボーナス(賞与)については裁判所に取り上げられることは一切ないからです。
「開始決定後」に受け取る給料やボーナス(賞与)は取り上げられない
前述したように、自己破産の手続きにおいては勤務先の会社から支給される給料やボーナス(賞与)も原則として債権者の配当に充てるべき資産と判断されますので、自由財産に含まれる部分を除いてすべて裁判所に取り上げられて債権者に配当されるのが通常です。
しかし、この取り扱いは裁判所から自己破産の「開始決定」が出されるまでに支払われる給料やボーナス(賞与)に限られるのであって、「開始決定が出された後」に支払われる給料やボーナス(賞与)は裁判所に取り上げられることはありません。
なぜなら、自己破産の手続きは裁判所から自己破産の「開始決定が出されるまで」に債務者(自己破産の申立人)に発生した債務と資産(財産)を清算する手続きであって、「開始決定が出された後」に発生する債務と資産(財産)については、その自己破産の手続きとは全く関係ない別個の債務・資産として扱われるからです(破産法第34条1項)。
【破産法第34条1項】
破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)は、破産財団とする。
自己破産の手続きにおいて債権者への配当に回されるべき資産は法律上「破産財団」と呼ばれますが、その「破産財団」に属するのは「破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産」すなわち、裁判所が自己破産の「開始決定を出すまでに自己破産の申立人が取得した財産」に限られることになりますので、「開始決定が出された後」に自己破産の申立人が取得する給料やボーナス(賞与)は自己破産の手続きで一切取り上げられることはないのです。
※このように裁判所に取り上げられるか取り上げられないかの基準は「開始決定が出された時」であって、「申立書を裁判所に提出した時」ではありません。
自己破産の申立書を裁判所に提出してから開始決定が出されるまでは、ケースによって数日から数か月と期間に差が出る場合がありますから、申立てをした後であっても開始決定がされるまでの間に給料やボーナス(賞与)が支給された場合には、債権者の配当に充てるべき資産に該当し、自由財産に含まれる部分を超えた部分は裁判所に取り上げられてしまうことになります。
最後に
以上のように、裁判所から自己破産の「開始決定」が出された「後」に会社から支給される給料やボーナス(賞与)は自己破産の手続きにおいて債権者の配当に充てられるべき資産としては扱われませんから、基本的に自由に使用してかまいません。
もっとも、自己破産の申立をしなければならないほど債務が膨らんでしまった原因は、自分の給料やボーナス(賞与)の範囲内で余裕を持った生活ができていなかった点がそもそもの原因なのでしょうから、弁護士や司法書士とともに家計状況を今一度十分に精査し、無駄な出費を抑えるなどリストラを行って家計の見直しをすることが先決なのはいうまでもありません。
自由に使えるからといって従来通りの生活を続けていると、2度3度と自己破産を繰り返してしまう危険性もあることは十分に認識しておくべきでしょう。