自己破産の手続きで借金を処理した場合には、裁判所から免責を受けることによって借金全額の返済が免除されることになります。
しかしこれは、本来であれば返済しなければならない借金を返済せず、当初の契約を反故にして債権者に多大な経済的損失を与えるということに他なりませんから、自己破産を申し立てた債務者が一定の不利益を受けてしまうことは避けられません。
自己破産を申し立てた債務者が受ける不利益はいくつかありますが、その中でも特に大きいのが、信用情報機関に事故情報として登録されてしまう点です。
自己破産の手続きで裁判所から免責を受けた場合、消費者金融やクレジット会社からの借り入れについては5年間、銀行からの借り入れについては10年間、信用情報機関に事故情報として登録されることになり、その期間は新たな借り入れが制限されてしまうからです。
ところで、この信用情報機関に事故情報として登録されることに関連して、自己破産すると賃貸マンションや賃貸アパートの契約ができなくなってしまうのではないか、と不安になってしまう人が多くいるようです。
前述したように、自己破産すると信用情報機関に一定期間、事故情報として登録されることになりますから、賃貸マンションや賃貸アパートの入居審査の際に、個人としての信用がないと判断されて入居を断られてしまうのではないか、と考えられるためです。
では、実際問題として、自己破産すると賃貸マンションや賃貸アパートの契約ができなくなったりするものなのでしょうか?
自己破産しても賃貸マンションや賃貸アパートの契約自体はできるのが原則
結論からいうと、自己破産をしたとしても賃貸マンションや賃貸アパートの契約ができなくなることは原則としてありません。
なぜなら、前述したように自己破産の手続きによって5年から10年の期間、信用情報機関に事故情報として登録されることになりますが、その登録された信用情報は金融機関ではない賃貸物件の家主(大家さん)や不動産業者が確認することはできないからです。
自己破産した場合の事故情報は「JICC」「CIC」「全国銀行協会」の3つのうちのいずれかの信用情報機関に登録されることになりますが、この3つの信用情報機関に登録された情報を照会できるのは、その信用情報機関に加盟した金融機関に限られます。
この点、賃貸マンションや賃貸アパートの家主や不動産業者は金融機関ではありませんから、これらの信用情報機関に加盟することはできませんので、その事故情報についても照会をかけることができません。
したがって、仮に自己破産をしていたとしても、賃貸マンションや賃貸アパートの契約をしようとする際に、その賃貸物件の家主や不動産仲介業者が、過去の自己破産の事実を知ることはできませんから、賃貸物件の入居の際に過去の自己破産の事実が問題にされることはないことになります。
保証会社の保証を受ける場合は賃貸契約できない場合も
前述したように、賃貸マンションや賃貸アパートの家主や不動産仲介業者は金融機関ではないため、金融機関が加盟する信用情報機関に登録された事故情報を照会することはできませんから、たとえ過去に自己破産の申立を行い、信用情報機関に事故情報として登録されている場合であっても、その自己破産の事実が賃貸物件の家主や不動産業者に知られてしまうことはなく、賃貸物件の契約に影響を与えることはないといえます。
しかし、これには例外があります。
それは、賃貸物件の契約に保証会社が関与する場合です。
賃貸マンションや賃貸アパートの契約に際しては、連帯保証人を付けるよう求められるのが一般的ですが、仮に家主から連帯保証人を求められたにもかかわらず連帯保証人になってくれる人がないような場合には、家賃保証会社に保証委託料を支払ったうえで家賃保証会社に保証人になってもらう必要があります。
また、物件によってはリスク管理のために連帯保証人とは別に保証会社の保証も付けるよう要求される場合もありますので、そのような物件でも家賃保証会社に保証人として就任してもらう必要がある場合があります。
この、家賃保証会社の業態は様々ですが、家賃保証会社の中には、一般のクレジット会社などの金融機関が家賃保証の業務を取り扱っている場合もあります。
この点、仮に家主側が指定する家賃保証会社がクレジット会社など金融機関系の会社であった場合には、賃貸物件の契約の際に過去の自己破産の事実が問題になるケースがあります。
なぜなら、家主側が指定する家賃保証会社がクレジット会社などの金融機関であった場合には、前述した信用情報機関の「JICC」もしくは「CIC」に対して、賃貸契約を申出た人の過去の信用情報について照会を掛けることが可能だからです。
仮に5年以内に自己破産の手続きを行っている場合には、家賃保証会社が「JICC」か「CIC」に照会を掛けることで当然、過去の自己破産の事実が家賃保証会社に知られてしまうことになりますから、家賃保証会社は「過去に自己破産した人は家賃を踏み倒す可能性が高い」と判断して家賃保証の審査を却下することになるでしょう。
そうなると、賃貸契約で家主が要求する保証会社の保証が受けられないということになりますから、結果として賃貸物件の契約ができないというケースもあるということになるのです。
このように、家主側が指定する家賃保証会社がクレジット会社などの金融機関系の会社である場合には、過去の自己破産の事実が知られてしまうことになり、家賃保証会社の保証が受けられないことから、賃貸契約ができなくなるケースもありますので注意が必要です。
なお、これを防ぐには、信用情報機関の「JICC」や「CIC」の登録が解除される5年が経過してから契約を申し込むか、家賃保証会社の指定がない物件を探して賃貸契約するしかないと思われます。