自己破産するとテレビなどの家財道具も取り上げられるのか?

自己破産の申立てをする場合に意外と気にする人が多いのが、テレビや冷蔵庫、洗濯機などの家電製品、タンスやソファー、テーブルなどの家財道具も全て一切合切取り上げられてしまうのではないかという点です。

確かに、自己破産の手続きは借金の返済を免除するのと同時に申立人の資産(財産)を債権者に配当する清算手続きの性質を有していますから、自由財産として保有が認められる一部の資産を除いて全て裁判所に取り上げられて換価されてしまうのが原則です。

しかし、生活に必要な家電製品や家財道具まで取り上げられてしまうと、その日の生活もままならなくなり生活の再建に支障が生じてしまう恐れもあり不都合です。

では、実際に自己破産する場合、テレビなどの家電製品やたんすなどの家財道具も全て裁判所に取り上げられてしまうのでしょうか?

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自己破産の手続で家電製品や家財道具が取り上げられるかは、その商品のローンが残っているかいないかによって結論が異なる

前述したように、自己破産する場合にはテレビなどの家電製品やタンスなどの家財道具も取り上げられてしまうのか、といった点が問題となりますが、このような家電や家財が取り上げられるか否かは、その家電や家財を購入した際の代金の支払いが終わっているか、つまりローンで購入した場合にはそのローンを完済しているかいないかによって異なりますので、それぞれのケースに分けて考えてみることにします。

(※一括払いで購入した物や他人から譲り受けた物については「ローンが残っていない」ものと同様に考えてください)

(1)ローンが残っていない場合

テレビなどの家電製品やタンスなどの家財道具を購入した際のローンをすでに完済している場合には、自己破産の手続きで裁判所に取り上げられることは基本的にありません。

なぜなら、テレビなどの家電製品やタンスなどの家財道具は生活に欠くことのできない動産として差し押えが禁止されていますが(民事執行法第131条1号)、そのような差し押さえ禁止動産は自己破産の手続きでも債権者への配当に充てるべき資産(破産財団)には含まれないという扱いにされているからです(破産法第34条)。

【破産法第34条】

第1項 破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産(省略)は、破産財団とする。
第2項(省略)
第3項 第1項の規定にかかわらず、次に掲げる財産は、破産財団に属しない
第1号(省略)
第2号 差し押さえることができない財産(省略)
(以下、省略)

【民事執行法第131条】

次に掲げる動産は、差し押さえてはならない

第1号 債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具
第2号(以下省略)

テレビなどの家電製品やタンスなどの家財道具をローンで購入し完済している場合には、その家電や家財はその持ち主の資産ということで裁判所に取り上げられて売却され、その売却代金が債権者に配当されるのが通常ですが、このように破産法という法律では「生活に欠くことのできない家具等」については差し押さえ禁止動産として債権者への配当に充てる資産から除外されていますので、破産の手続きで裁判所に取り上げられることは基本的にないのです。

もちろん、人によっては「テレビは無くても生活できるんだからテレビは『生活に欠くことができない』ものには当たらないだろう?」と疑問に思う人もいるかもしれません。

しかし、現代の一般社会ではテレビを所有することは世間一般の娯楽としては決して贅沢ではありませんし、「健康で文化的な最低限度の生活(憲法第25条1項)」をおくるためにはテレビを見ることも最低限必要といえるでしょうから、テレビが贅沢品だという理由で裁判所が取り上げてしまうことは生存権を保証した憲法第25条1項に違反してしまいます。

【日本国憲法第25条1項】

すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

したがって、テレビであっても、生活に欠くことのできない家具に含まれると考えられますので、自己破産の手続きで裁判所に取り上げられることは基本的にないといえることができるのです。

(2)ローンが残っている場合

(1)で説明したように、テレビなどの家電製品やタンスなどの家財道具のローンが終わっている場合(一括で購入したり他人から譲ってもらった場合も含む)には、その家電や家財はその所有者の生活に欠くことのできない動産ということができますので、自己破産の手続きにおいても裁判所に取り上げられることはありません。

しかし、「テレビなどの家電製品やタンスなどの家財道具」であっても、そのローンが残っている場合には話が異なります。

なぜなら、それら家電や家具のローンが残っている場合には、その家電や家具を販売した販売店やローン会社の方に「所有権が留保」されているのが通常であり、自己破産の前に返済が滞った時点でその販売店やローン会社が「所有権」に基づいてその家電や家具を引き揚げてしまうことになるからです。

ローンで販売している商品は通常、ローンが完済されるまではその商品の販売会社やその商品代金を立て替えるローン会社(クレジット会社)に所有権が「留保」されており、ローンが完済された時点で購入者に所有権が移転することになるという条件で契約されるのが通常です。

このようにしておかないと、いざローンの返済が不能になった場合に、債権者である販売会社やローン会社がローンの支払いを受けられないだけでなくその商品も取り戻すことができなくなてしまうからです。

ですから、ローンで購入した商品のローンを完済する前に自己破産の手続きに入る場合には、それより前にローン会社や販売店が「ローンを支払わないんなら商品を引き揚げるよ。ローンが完済されるまでは所有権がこっちにあるんだから引き揚げても文句言われる筋合いないんだからね」といってその商品を引き揚げてしまい、中古市場で売却してその売却代金をローンの残金に充当してしまうことになるのは避けられません。

この点、前述した「健康で文化的な最低限度の生活(憲法第25条1項)」との兼ね合いが問題になりますが、このように販売店やローン会社が所有権に基づいて引き揚げる場合には差押えや破産手続きによって引き揚げるわけではなく、あくまでも「自分の物」を引き揚げるだけなので憲法の規定は全く問題になりません。

ですから、このように「テレビなどの家電製品やタンスなどの家財道具」であっても、ローンの支払いが残っている場合には、裁判所に取り上げられることはありませんが、債権者である販売店やローン会社によって引き揚げられることになるので注意が必要といえるでしょう。

最後に

以上のように、自己破産の手続きでは「テレビなどの家電製品やタンスなどの家財道具」は基本的に裁判所に取り上げられることはありませんが、ローンが残っている場合には自己破産の手続きとは別に、債権者に引き揚げられてしまうことはあるといえます。

ですから、もし仮に取り上げられたくない家電製品や家財道具がある場合には、早めに弁護士や司法書士に相談し、その家電や家具は引き揚げられることになるのか、また引き揚げられた場合にはどのように代替品を確保して生活してゆくのかなどを十分に協議しておくことも必要になるといえるでしょう。