自己破産の依頼後にエアコンなど大型家電を購入しても大丈夫?

自己破産の手続きを弁護士や司法書士に依頼した後は、無駄遣いをしないように気を付けなければなりません。

なぜなら、自己破産の申立を行う場合には、申立人の所有する資産はその全てが債権者への配当に回されるべき「債権者の財産」として扱われるのが原則だからです。

自己破産の目的は申立人の借金の返済を免除させる点にありますが、その借金が無条件で免除されるのではなく、まずその申立人の資産を全て債権者への弁済に充てることが前提となりますから、申立人に資産がある場合には、その資産は全て「債権者への配当に充てられる資産」として裁判所が管理することになります。

ですから、自己破産の手続きを決意したあとに無駄遣いをして自分の「現金」や「預金」などの資産を減少させてしまうと、自己破産の申立をした後で裁判所(裁判官や破産管財人)から「債権者の配当に充てるべき財産を無駄に減少させた」として問題にされる危険性があるのです。

ところで、ここで問題となるのが、弁護士や司法書士に自己破産の手続きを依頼した後に大きな買い物が必要になったような場合です。

自己破産の手続きを依頼した後であっても、例えばエアコンや冷蔵庫が故障することもあるでしょうから、そのような場合にはエアコンや冷蔵庫を購入する必要性が生じる場面もあるかもしれません。

しかし、エアコンや冷蔵庫は比較的価格が高額になるのが一般的ですから、安易に購入してしまうと「そんな大きな買い物を勝手に購入して債権者に配当される資産を目減りさせるのはけしからん」と問題にされるのではないかという疑問が生じるからです。

では、自己破産の手続きを弁護士や司法書士に依頼した後に、エアコンや冷蔵庫など高額な家電製品等を購入した場合、自己破産の手続きで「債権者の配当に充てるべき資産を目減りさせた」などと問題にされることはあるのでしょうか?

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エアコンや冷蔵庫の購入は問題にならないのが原則

結論からいうと、自己破産の依頼をした後にエアコンや冷蔵庫の購入したとしても、それが後で問題になることは基本的にないものと考えられます。

なぜなら、確かにエアコンや冷蔵庫は価格が高額になる場合が多いですが、夏場にエアコンがないとなると熱中症で生命の危険さえありますし、現在の社会で冷蔵庫無しで生活していくのは相当な困難が伴いますから、エアコンや冷蔵庫は生活をしていくうえで必要不可欠なものといえるからです。

憲法では「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」が生存権として保障されているのですから(日本国憲法第25条1項)、このような生活するうえで必要不可欠なエアコンや冷蔵庫を購入したことが問題にされるとなると、その憲法で認められた生存権を裁判所が脅かすことになって適当ではありません。

したがって、仮にエアコンや冷蔵庫が故障したような場合には、自己破産の手続きを弁護士や司法書士に依頼した後であっても、新しいものを購入して差し支えないものと考えられます。

ただし、なるべく平均的な価額ものを購入する方が安全

前述したように、常識的に考えてエアコンや冷蔵庫は日常生活に必要不可欠と考えられますから、自己破産の申し立てが決まった後に購入の必要性が生じた場合には、それを購入したとしても「債権者の配当に充てるべき資産を目減りさせた」として問題にされることは基本的にありません。

しかし、たとえば仮にエアコンや冷蔵庫が日常生活に必要不可欠であるとはいっても、購入する必要性が特にないにもかかわらず購入したような場合には、自己破産の手続きにおいて「債権者の配当に充てるべき資産を目減りさせた」として問題にされる可能性はあるかもしれません。

たとえば、エアコンが故障したわけでもないのに最新式のエアコンに買い替えたとか、一人暮らしで小型冷蔵庫で十分であるにもかかわらず、大型の高性能の冷蔵庫を購入したとかいうような場合には、その購入が問題にされるケースも否定できないでしょう。

ですから、仮に自己破産の手続きを弁護士や司法書士に依頼した後にエアコンや冷蔵庫など生活に必要な家電製品等が必要になった場合には、出来るだけ平均的な価格帯の商品を購入するのが安全かもしれません。

あまり安い商品を購入してすぐに壊れてしまっては逆に「債権者の配当に充てるべき資産を目減りさせ」る可能性もありますし、あまりにも高額な商品を購入すると当然問題となりますから、出来るだけ平均的な価格帯の商品を選んでおけば、裁判官や破産管財人もあまり問題にはしないのではないかと思います。

仮に、無駄に高い製品や必要性の無いものを購入した場合は自己破産の手続きで問題になる可能性もある

前述したように、仮にエアコンや冷蔵庫など生活に必要不可欠といえるような商品であっても、必要性が無いのに買い替えたり、無駄に高い価格のものを購入してしまった場合には「債権者の配当に充てるべき資産を目減りさせた」として問題にされる可能性が生じることになります。

なお、仮に自己破産の手続きにおいて裁判官や破産管財人から「債権者の配当に充てるべき資産を目減りさせた」として問題にされた場合には、破産管財人が「否認権」を行使してその契約を否認することになるのが通常です(破産法第160条1項)。

【破産法第160条1項】

次に掲げる行為(中略)は、破産手続開始後、破産財団のために否認することができる。

  1. 破産者が破産債権者を害することを知ってした行為。ただし、これによって利益を受けた者が、その行為の当時、破産債権者を害する事実を知らなかったときは、この限りでない。
  2. 破産者が支払の停止又は破産手続開始の申立て(中略)があった後にした破産債権者を害する行為。ただし、これによって利益を受けた者が、その行為の当時、支払の停止等があったこと及び破産債権者を害する事実を知らなかったときは、この限りでない。

具体的には、たとえば必要のないエアコンを購入したような場合には、破産管財人がそのエアコンの購入の契約を解約して支払った代金を返してもらうことになるのが通常ですが、相手方の業者の保護も考えなければなりませんので、解約はせずにその代金相当額を自己破産の申立人に積み立てさせて、その積み立てたお金を破産管財人が債権者に配当することになるケースが多いのではないかと思います。

このように、自己破産を弁護士や司法書士に依頼した後に無駄な買い物をしたり、分不相応な買い物をした場合には、その代金を積み立てさせられることを命じられ、その積立が終わるまで自己破産の免責(※借金の返済が免除されること)が出されなくなることもありますので注意が必要でしょう。

購入するときは依頼した弁護士や司法書士に相談すること

以上のように、エアコンや冷蔵庫など生活に必要不可欠な家電製品等の購入は、自己破産を弁護士や司法書士に依頼した後であっても基本的に問題にならないのが通常ですが、場合によっては自己破産の手続きで問題にされるケースもあるので慎重に検討することが必要となります。

ですから、仮に弁護士や司法書士に依頼した後に家電製品が故障して買い替えが必要になった場合には、速やかに自己破産を依頼している弁護士や司法書士に連絡し、その商品を買い替えても差し支えないかという点を相談することが必要になるといえるでしょう。