自己破産すると保証人や連帯保証人にどんな影響が生じるか?

借金の返済が困難になった場合であっても最終的には自己破産という手続きを使って処理することが可能ですから、多重債務の問題は100%解決することができるトラブルの一種であるということができます。

もっとも、だからといって借金トラブルが簡単に解決できる問題だということでもありません。

自己破産するにしても、その手続きにおいては様々な影響が多方面に生じますから、その影響の範囲や程度によっては自分だけでなく自分の借金や資産に関係する様々な人に多大な不利益を及ぼしてしまう危険性が存在しています。

中でも、最も負の影響を与えるのが借金に保証人や連帯保証人が付けられている場合です。

保証人や連帯保証人は債権者との間で「主たる債務者が返済しないときは代わりに返済します」ということを約束しているわけですから、自己破産する自分の借金に保証人や連帯保証人が付けられている場合には、その保証人や連帯保証人になってくれた人に一定の不利益が生じてしまうことは覚悟しなければなりません。

では、そのような場合、具体的にどのような不利益が保証人や連帯保証人に及ぼされてしまうのでしょうか?

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保証人・連帯保証人に一括請求がなされる

保証人や連帯保証人が付けられている借金を自己破産の対象として手続きする場合に一番考えなければならないのは、その自己破産の対象となる借金の残額について、保証人や連帯保証人に対して一括請求がなされるという点です。

この点、自己破産する人が滞納した弁済額だけが保証人や連帯保証人に請求されると勘違いしている人も多いようですが、そうではありません。実際には借金の債務残高の全額が保証人や連帯保証人に一括請求されることになります。

たとえば、Aさんが金融機関のX社から借りた100万円の借金についてBさんが保証人(又は連帯保証人)になっていた場合において、Aさんが毎月3万円ずつ返済する約定があったにもかかわらず10か月間返済した後3か月間弁済を滞納し自己破産してしまったようなケースでは、滞納額は9万円にすぎませんが、保証人(又は連帯保証人)のBさんに対してはX社から借金残額の70万円が一括して請求されることになります。

なぜこのように一括請求がなされてしまうかというと、主たる債務者が弁護士や司法書士に債務整理を依頼したり自己破産などの申し立てをすること自体が「返済を停止」したものと扱われ、その時点で分割払いという「期限の利益」が喪失されてしまうからです。

借りたお金は本来、返済期限までに一括で返済することが求められますが、それでは返済が困難になってしまうので「分割で弁済してもいいですよ」と債権者に認めてもらうのが「分割払い」の約定となります。

これは「分割で返済する」という「返済期限の猶予」を債務者側が受けられることを意味しますので「期限の利益」と呼ばれますが、その「期限の利益」の合意がなされるのはあくまでも「主たる債務者」と「債権者」の間だけにすぎません。

保証人や連帯保証人は単に「主たる債務者が返済をしない場合にはその借金を肩代わりしますよ」ということを債権者との間で合意するだけで、「その借金を分割で支払っても構いませんよ」というような「期限の利益」を債権者から与えられているわけではないのです。

ですから、いったん「主たる債務者」が弁護士や司法書士に債務整理を依頼したり自己破産の申し立てを行って「借金の返済を停止」してしまえば、主たる債務者が受けている「期限の利益」自体が消滅してしまい、保証人や連帯保証人に対して「残りの借金の全額を一括して支払え!」という一括請求がなされることになるのです。

保証人や連帯保証人が一括弁済できない場合は、保証人や連帯保証人も信用情報機関に事故情報として登録される

前述したように、「分割払い」という「期限の利益」を享受できるのは主たる債務者自身だけですから、その主たる債務者が弁護士や司法書士に債務整理を依頼したり自己破産の申し立てを行って「支払の停止」が確定してしまった場合には、その借金の保証人や連帯保証人となってくれている人のところに「残りの借金全額」の一括請求がなされることになります。

もちろん、その場合に保証人や連帯保証人になってくれている人が債権者と交渉し、債権者側が「分割で支払ってもいいですよ」と合意してくれるのであれば、保証人や連帯保証人になってくれている人が分割弁済で残りの借金残額を分割で支払うことも可能でしょう。

しかし、それは保証人や連帯保証人になってくれている人が債権者との間で「任意整理」を行うということを意味しますから、その保証人や連帯保証人になってくれている人は信用情報機関に事故情報として登録されることは避けられません。

すなわち、借金の保証人や連帯保証人になっている人は、主たる債務者が自己破産等の債務整理を行って「支払の停止」をした時点で債権者に対して借金の残額を一括して弁済しない限り、いわゆる「ブラックリストに載る」ことが確定してしまうわけです。

保証人や連帯保証人においても自己破産を検討しなければならなくなる

このように、保証人や連帯保証人になってくれている人のところに一括請求がなされることは避けられないわけですが、もしそのように一括請求をうけた保障にや連帯保証人がその借金を分割によっても返済できないような場合には、その保証人や連帯保証人になってくれている人においても自己破産を検討しなければならなくなります。

先ほども述べたように、保証人や連帯保証人は主たる債務者が自己破産などで返済を停止した場合には一括でその残債務を返済することが求められますが、債権者側が保証人や連帯保証人からの分割弁済の協議に合意し分割弁済を認めてくれるのであれば、保証人や連帯保証人と債権者の間で任意整理の和解が整ったとものとして分割弁済で返済することが認められます。

しかし、保証人や連帯保証人になってくれている人に分割弁済していくような経済的余裕がない場合には、保証人や連帯保証人になってくれている人においても自己破産をして、その保証債務から逃れるしか方法はありません。

このように、自己破産の対象となる借金に保証人や連帯保証人が付けられている場合には、その保証人や連帯保証人になってくれている人においても自己破産してしまう可能性があることは、事前に十分認識しておく必要があるでしょう。

保証人や連帯保証人になってくれている人の保証人や連帯保証人になっている人についても同様の問題が連鎖してしまう

以上のように、借金に保証人や連帯保証人が付けられている場合には、その保証人や連帯保証人になってくれている人においても自己破産のリスクが生じることになりますので、自分が自己破産する場合には、保証人や連帯保証人が付けられている借金がないかよく確認し、保証人や連帯保証人が付けられているものがある場合には事前によく事情を説明して、保証人や連帯保証人においても自己破産してしまわないように十分な対処を取ってもらうことが必要になります。

また、このような自己破産のリスクは、その保証人や連帯保証人になってくれている人の保証人や連帯保証人になっている人についてもさらに生じることになりますので、保証人や連帯保証人の間で自己破産の連鎖が広がらないように、事前によく事情を説明しておくことも求められます。

たとえばAさんが自己破産する場合に、Aさんの借金にBさんとCさんが保証人(連帯保証人)になっている場合にはBさんとCさんにも自己破産のリスクが生じますが、仮にそのCさんが借りている借金にDさんとEさんが、Cさんが借りている借金にFさんとGさんが保証人や連帯保証人になっているような場合には、Aさんが自己破産したばかりにBさんとCさんだけでなく、DさんEさんFさんGさんにも自己破産のリスクが生じる結果となってしまうでしょう。

このように、自己破産する場合の借金に保証人や連帯保証人が付けられている場合には、その保証人や連帯保証人になってくれている人との間で自己破産のリスクが連鎖していく危険性もありますので、そのような事態に陥らないように、保証人や連帯保証人になってくれている人に対してなるべく早めに事情を説明し、影響が最小限に抑えられるように対処を取ってもらう必要があるといえます。

最後に

以上のように、保証人や連帯保証人が付いている借金を自己破産で処理する場合には、その保証人や連帯保証人になってくれている人についても信用情報機関に事故情報として登録されたり、最悪の場合には自己破産のリスクを生じさせることがあります。

このようなリスクを最小限に抑えるには、返済が困難になった時点で早めに保証人や連帯保証人になってくれている人に事情を説明し、保証人や連帯保証人になってくれている人においても自己破産に至らないような対策を余裕をもって取ってもらう他ありません。

ですから、保証人や連帯保証人が付いた借金を抱えている状態で返済が困難になった場合には、無理を重ねて返済を継続するのではなく、速やかに弁護士や司法書士に相談し適切な対処を取ってもらうことが必要となります。

場合によっては、自分だけでなく保証人や連帯保証人も一緒に自己破産の手続きを進めたほうがよいケースもありますので、できる限り早く弁護士や司法書士に相談し、保証人や連帯保証人になってくれている人に被害が広がらないように十分な対策を取ることが必要と言えます。