自己破産における郵便物の転送期間はいつからいつまで?

自己破産の手続きでは、申立人である債務者の自宅あてに届けられる全ての郵便物が破産管財人の事務所(※注1)に転送される「郵便物の転送」が行われる場合があります。

▶ 自己破産で郵便物が管財人に転送されるのはどんな場合?

※注1:破産管財人は通常、裁判所に備え置かれている管財人名簿に掲載された弁護士から指名されるため、管財人に指名された弁護士が所属する法律事務所に転送されることになります。

この「郵便物の転送」が行われる案件では、その債務者宛ての郵便物はすべて破産管財人の事務所で受け取ることになりますので、破産管財人が必要と判断した郵便物についてはすべて管財人に開封され、中身を確認されることは避けられません。

また、債務者は自分あての郵便物を直接受領することができなくなりますから、自分あての郵便物を受け取りたい場合は逐一、破産管財人の事務所を訪れて管財人の許可をもらう必要があるため、その受ける負担は相当なものがあるといえます。

このように、「郵便物の転送」が行われる場合は債務者にとって相当なストレスになるわけですが、では、この「郵便物の転送」は具体的に「いつからいつまで」行われることになるのでしょうか?

「郵便物の転送」は債務者が事実上大きな負担を受けてしまうことから、その行われる期間がどの程度の長さになるのか、問題となります。

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郵便物の転送期間は、破産管財人が「転送すると決めた日」から「転送を止めると決めた日」までの間

端的にいえば、郵便物の転送期間は、破産管財人が「転送すると決めた日」から「転送を止めると決めた日」まで、ということになります。

郵便物の転送を行うか否かの判断は破産管財人が行いますので、その転送期間をいつからいつまでにするかという判断も管財人が行うことになります。

なので、破産管財人が「〇月〇日頃から転送の手続きを取ります」と言われたら、その日の前後から転送されることになり、「〇月〇日ごろで転送を終了します」と言われたら、その日以降は転送が終了し、従来通り自宅に郵便物が届くようになります。

具体的には破産管財人との面接が行われた日から免責許可決定が確定する前後の日までの間

このように、端的にいえば、自己破産の手続きにおける郵便物の転送期間は破産管財人が「転送すると決めた日」から「転送を止めると決めた日」まで、ということになるわけですが、それではあまりにも説明が不親切すぎるので、もう少し具体的に説明しましょう。

(1)転送が開始されるのは「破産管財人との面接が行われた日」の数日後から

先ほども述べたように、自己破産の手続きでは債務者宛ての郵便物が破産管財人の事務所に転送される「郵便物の転送」が行われることがありますが、これは必ず行われるわけではなく、裁判所から選任された破産管財人が特に必要と認めた場合に限って行われるにすぎません。

ですから、そもそも破産管財人が選任されない「同時廃止」で処理される案件では「郵便物の転送」は行われませんし、破産管財人が選任される「管財事件」として処理される場合であっても、破産管財人が「転送は必要ない」と考えるケースでは「郵便物の転送」は行われないことになります。

ちなみに、「郵便物の転送」は債権者への配当に充てられるようなめぼしい資産(財産)があったり、未回収の資産があったり、資産隠しや負債隠しが疑われるような案件で破産管財人による調査の必要性から命じられることがほとんどですので、そのようなケースでもない限り「郵便物の転送」が行われることは基本的にないと考えて差し支えありません。

ところで、破産管財人は裁判所によって行われる裁判官の「審尋」の手続きで裁判官の判断によって選任されることになりますが、そこで選任された破産管財人が手続きに参加するのは「審尋」の後に裁判所で開かれる裁判官と破産管財人、債務者(およびその代理人弁護士または書面作成司法書士)の3者間による面談の席からとなるのが通常です。

そして、その裁判所における面談の際に破産管財人が「郵便物の転送」を行うか行わないかを決定するのが一般的ですから、「郵便物の転送」の転送が開始されるのも、その裁判所における破産管財人との面談の数日後から、ということになります。

(※裁判所における面談の際に破産管財人が「郵便物の転送をします」と決めた場合はそれから数日以内にその管財人の事務所の事務員が郵便局で転送の手続きを行いますので、実際には管財人が転送を開始すると決定した2~3日後から転送が開始されることになります)

(2)転送が続けられるのは「免責許可決定が確定する前後の日」まで

「郵便物の転送」が開始されると、その転送がいつまで続くのか、という点が気になると思いますが、先ほども述べたように「郵便物の転送」が行われる趣旨は、破産管財人が資産の調査や免責不許可事由に該当するような資産隠しの有無を判断するところにありますので、その調査等の必要性がなくなった時点で「郵便物の転送」も終了することになります。

具体的には、自己破産の手続きは裁判所から出される「免責許可決定」が「確定」した日に終了することになり、その時点で破産管財人の仕事も終了することになりますので、その「免責許可決定が確定する日」までは「郵便物の転送」が行われる可能性があるということになります。

もっとも、実際の破産管財人の調査は免責許可決定が出されるまでで終了するのが通常ですので、実際には裁判所から「免責許可決定が出される日」の前後で「郵便物の転送」も終了することになるでしょう。

(※資産の処理や資産隠し等に事実がないことが早くに判断できるようなケースではそれよりも早く転送が終了することもあるかもしれません。とにかく破産管財人がどのように判断するかによることになります。)

「郵便物の転送」が行われる期間は半年から1年前後

なお、自己破産の手続きが破産管財人の選任される「管財事件」として処理される案件では、申立書を裁判所に提出してから1か月程度で破産管財人が選任され、その後半年から1年程度の期間で調査や配当手続きが実施され、その後1~2か月程度してから免責許可決定が出されるのが通常です。

ですから、実際に「郵便物の転送」が実際に行われる期間も半年から1年程度の期間になることが多いのではないかと思います。

※ただし、簡単な案件では2~3か月間で転送が終わることもありますし、事件が複雑で債務者に不正行為が見られる案件では1年以上の転送がなされることもありますので一概には言えません。
とにかく「破産管財人が必要」と判断する限り「郵便物の転送」は継続されますので、案件ごとに個別に判断するしかないでしょう。
▶ 自己破産で郵便物が管財人に転送されるのはどんな場合?

最後に

以上のように、破産管財人が「転送すると決めた日」から「転送を止めると決めた日」までの期間、「郵便物の転送」が行われることがありますが、その転送期間は結局、破産管財人の判断によって決められることになりますので、できるだけその期間を短縮したいと思うのであれば、裁判所や破産管財人の調査や指導に積極的に従って手続きを早く終わらせるよう努力するしかないのが現実です。

ですから、「郵便物の転送」に煩わしさを感じているのであれば、事件が複雑にならないように早めに弁護士や司法書士に相談し、適切な申し立てを行って裁判所や破産管財人の負担を軽減できるよう手続きを進めていくことは必要といえます。