課金ゲームにはまってしまう人の中には、レアアイテム取得のためガチャを引きまくって借金を重ねてしまったという人も少なからずいるのではないでしょうか。
このようにスマホゲームのガチャが理由で借金の返済が滞ってしまった場合には、最終的には裁判所に自己破産の申し立てを行って負債を整理する必要がありますが、このようなケースにおける自己破産では少し厄介な問題も生じます。
なぜなら、自己破産のルールを定めている破産法という法律では「浪費」が免責不許可事由として挙げられていることから、スマホゲームのガチャも「浪費」と判断されて免責(借金の返済義務が免除されること)が受けられなくなってしまう可能性があるからです。
裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
1号~3号(省略)
4号 浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。
では、実際にスマホゲーム等のガチャをするために借金を重ねてしまった場合であったり、ガチャをするために借りたわけではなくてもガチャの利用が多い状況のなかで支払いが滞っているような場合には、自己破産の免責は認められないものなのでしょうか?
ガチャの課金の程度が少ない場合は免責に問題ない
結論から言うと、多少のガチャの利用があったとしても、免責が不許可になることはありません。
なぜなら、先ほど挙げた条文をみてもわかるように、免責が不許可になるためには「浪費」があったことだけではなく、その浪費によって「著しく財産を減少させ」たことが必要とされているからです。
条文上は「浪費」をしたことに加えて、その浪費によって債務者の財産を「著しく減少」させた場合に初めて免責が不許可の問題を生じさせることになるのですから、その浪費の程度が「著しい財産の減少」を招かない状況にあるのであれば、この破産法第252条1項4号の免責不許可事由の問題を生じさせることはないのです。
多額の課金を伴うガチャ利用は免責不許可事由の問題を生じさせる
このように、条文上は「著しい財産の減少」を招くような浪費があれば免責不許可事由になると規定されていますので、ガチャを利用した金額が相当程度大きいような場合には、その自己破産の手続きでは免責は認められなくなるだろうと思われます。
なぜこのように「著しい財産の減少」があった場合に免責不許可事由にされているかというと、自己破産の手続きは債務の支払いを免除する手続きであるとともに、債務者の負債と資産を清算する手続きでもあるため、債権者の配当に充てるための資産の減少を最小限に抑えなければならないからです。
自己破産の手続きが清算手続きであることを考えると、自己破産の手続きでは債務者の保有する資産(財産)を裁判所が取り上げて債権者への配当に充てる作業を行わなければなりませんが、債務者が「著しい財産の減少」を招くような浪費を行って資産(財産)を目減りさせてしまった場合は債権者への配当に充てられるべき資産が減少してしまい、債権者が不測の不利益を被ってしまいます。
そのため、「著しい財産の減少」が生じるような「浪費」を免責不許可事由として規定することで債務者が著しく財産が目減りしてしまうような浪費をすることを制限しているわけです。
裁量免責で免責が認められる場合もある
もっとも、仮にそのように「著しい財産の減少」を招くようなガチャの利用があったことを理由として免責不許可事由に該当する場合であっても、確定的に免責が受けられなくなるというわけではありません。
なぜなら、自己破産の手続きでは免責不許可事由に該当する事実があった場合であっても、裁判官が裁量で特別に免責を与える「裁量免責」の制度が設けられているからです。
前項の規定にかかわらず、同項各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。
もちろん、裁量免責はあくまでも例外的な手続きとなりますので、すべてのケースで裁判官が裁量免責を認めてくれるわけではありませんが、裁判官としても免責を拒否できない債務者を社会に放り出すことは憚られるのが通常ですので、厳しい調査や指導がなされる可能性はあるにしても最終的には裁量免責が認められると考えて差し支えないものと思われます。
ですから、もし仮にスマホゲーム等を利用した事実があり、看過できないほど高額なガチャの実態が見られる事情がある場合であっても、その高額なガチャの利用に至った事情であったりその点の反省すべき点を反省している姿勢を示した上申書を作成するなどして裁判官の理解を求められれば免責が受けられることもありますので、高額なガチャの利用があったことだけをもって免責が受けられないと悲観してしまう必要はないといえます。
最後に
以上のように、自己破産の手続きを申し立てる場合に、スマホゲーム等のガチャの利用があった場合であっても、それ自体を理由に免責が不許可になるわけではなく、あくまでも「著しい財産の減少」を招くような多額のガチャを利用している場合に限って免責不許可事由の問題が生じてくるだけにすぎません。
また、仮にスマホゲーム等のガチャの利用が多額に上り、免責不許可事由として問題にされるケースであっても裁判官から裁量免責を受けることができるケースもありますので、ガチャの利用があるからと言って自己破産の申し立てをあきらめなければならない理由にはならないでしょう。
もちろん、先ほども述べたように「ガチャ」を利用すること自体が「浪費」と判断されることを考えれば借金を抱えている状態で「ガチャ」を利用することは控えるべきですが、「ガチャ」の利用があっても自己破産の免責が認められないわけではありませんので、早めに弁護士や司法書士に相談し、適切な対処をとって処理することを心掛けてもらいたいと思います。